セクサロイドは眠らない

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2001年07月16日(月) 会って、肌を合わせて、ひととき恋人同士のように振舞う

私は「所有者」の腕の中で、私の空洞の体を通り抜けて行くたくさんの物語を語り続ける。

「疲れたか?」
いいえ。疲れませんわ。私はドールですもの。でも、辛いです。体内を通り過ぎるたくさんの心達が泣いています。物語はいつも同じです。終わらない哀しみや繰り返される殺戮や行き場のない欲望ばかりです。
「そんなことはない。物語は一つ一つが全て違うから。行って、聞いてきなさい。生まれて来て、語られるのを待っている物語を。使い古された言葉が無限の物語を生むから。ありふれた言葉が、心の鍵をあけるから。たくさんの物語を集めて、私に語っておくれ。」

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男と女は、言葉のない関係を続けている。ただ、逢って、体を重ねるだけだ。

女は悲しい。決して二人の関係は、これ以上どこにも行くことがないから。お互いに、恋人同士になれないことは分かっているのだ。男と女は一卵性双生児のようにそっくりだから。誰だって自分とは恋に落ちないから。

会って、肌を合わせて、ひととき恋人同士のように振舞う。欲望の声を漏らし、唇を何度も重ね、相手の快感を引き出す。すがりつき、顔をうずめる。肌に手を滑らせ、髪をなでる。手の平を合わせれば、それでもあたたかいものが通い合うのに、それは名前すら付けられずに、宙に漂う。

せめて、恋などという分かり易い言葉に寄りかかることができれば、束の間の未来を夢想することができるのに。

別れ際、「またね」と言い合って、振り帰らずに歩き出す。


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