セクサロイドは眠らない
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2001年07月14日(土) |
私は人形だから、痛さも寒さも感じないもの |
幼い頃、父が人形を買って来てくれた。私はその人形に「サクラ」と名付けて可愛がった。とても美しい日本人形だった。
友達が少ない私は、サクラちゃんとおしゃべりするのが楽しかった。自分の気持ちを口に出すのが苦手な私は、普段、ほとんどしゃべらない子だったが、サクラちゃんとならいくらでもしゃべることができるのだ。
母はそんな私のことが好きではなかったのだろう。時折、些細な事で激しくぶたれたり、寒い冬でも家の外に出されたりした。
その日も、私は、ブラウス一枚で外に出されて震えていた。そんな私のところにサクラちゃんが来て、「かわってあげる」と言った。「私は人形だから、痛さも寒さも感じないもの。」と。それで私たちの心は入れ替わった。
そうやって、イヤなことがあるたびに、サクラちゃんは私と入れ替わってくれた。
中学生の時、父が死んだ。そして、私が高校生になったある日、新しい父親がやって来た。新しい父親は、母がいない隙に、酔って殴ったり、そのうち、私の部屋にやって来て性の慰み者にするようになった。そんな10代も、サクラちゃんのお陰で乗りきることができた。
そうして、私は結婚した。サクラちゃんは、随分みすぼらしくなってしまったが、新しい着物を作ってやり私と一緒に嫁いだ。
夫は、次第に暴力を振るうようになった。口下手な私は、周囲の心をとても苛立たせるようだ。殴られそうになると、サクラちゃんが入れ替わってくれた。
ある日、私がサクラちゃんとおしゃべりしていると、夫がいきなり私の髪を掴んで来た。 「人形相手にしかしゃべることができないのか。この馬鹿女」
サクラちゃんは、すぐさま私と入れ替わってくれた。
いきなり夫がサクラちゃんを取り上げた。「この目が気持ち悪いんだよ。この人形のせいでお前がおかしくなったんだろう。」と、夫はバットでサクラちゃんを殴り付けた。
やめて!
サクラちゃんは壊れてしまった。サクラちゃんの中の私の心は、閉じ込められたまま、サクラちゃんから出られなくなった。
白い部屋、白いベッド。私はそこにいるのだが、人形のままなので、口も聞けず、体も動かせずに横たわっている。誰かが話しかけても、ガラスの目で見つめ返すことしかできない。
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