セクサロイドは眠らない

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2001年06月30日(土) 言い訳男のネクタイをほどき、ワイシャツを剥ぎ取る

ササヤマ嬢が入院してしまった。食欲が制御できなくなって。

朝、起きると、何か食べる物を買いに行き、たくさん買い込んだものを食べ続け、食べるだけ食べたら、吐く。これを一日中続けるために、仕事に行くことすらできなくなったのだ。

電話を受けて、病院に足を運んだ。彼女は内科病棟に入院していた。取り敢えず、病院の食事を3食ちゃんと取ることで、体のリズムを取り戻しましょう、というわけだ。

病室のササヤマ嬢は、思ったより元気そうだった。当たり前だ。彼女は、こうやって保護され、監視されることで落ち着く。一人になるのが駄目なのだから、病院にいれば、彼女の病状は落ち着くというわけだ。

どうしちゃったのよ?
「えへへ。心配掛けてごめん」
ササヤマ嬢は、照れたようにニコニコと笑った。
「ご飯もちゃんと一日3回食べられるようになったんだよ。」

この病院にいる限りは、ちゃんとできるんだよね。

仕事、大丈夫なの?
「うん。どっちみち、結婚しようと思って、有給休暇を消化せずに貯めてたからさあ。」

うん。良かったじゃない。ゆっくりしてったら。
「そうだよね。それに、今は、結婚なんてどうでもいいんだ。」

それから、ササヤマ嬢は声をひそめて、言った。
「私、ここの先生と寝てるのよ。」

あらまあ。だから、入院生活が楽しいわけね。

ササヤマ嬢は、クスクスと笑う。

あまり、大っぴらにイチャつかないのよ、と微笑み返して、病室を出た。

廊下で、気難しそうな顔をした、背の高い中年の医師とすれ違った。多分、あれが、彼女が寝てるっていう医者ね。面倒なことにならなきゃいいけど。あの手の医者は、事が面倒になると、何もかも彼女の妄想って事で片付けるタイプだ。

--

夜、遅く、誰かがやってくる。若い男。ササヤマ嬢の恋人だ。

「すみません。こんなに遅く」

いいのよ、と、ブランデーの入ったグラスを渡す。
男は、疲れたような表情でグラスを受け取る。

「彼女、どうでした?」
元気そうだったわよ。
「そうですか。そうでしょうね。」
知ってるのね?
「ええ。彼女から聞きました。あの医者と寝てるって。」
何でもしゃべっちゃうのね。馬鹿な子ねえ。
「正直言って、僕、もう、彼女と結婚する気はなくなりました。だけど、今、入院している彼女を放り出すのはまずいと思うんで、退院してから正直に言おうと思うんです。病気のことだって、ずっと僕に隠してたわけだし。」
そういうこと、彼女にちゃんと話した?
「いえ。まだ。彼女が退院したら言おうと思って。だって、婚約破棄なんて、彼女多分、絶対に受け入れないですよ。そもそも付き合い始めだって、最初は、僕が何の気なしに寝ただけなんだけど、彼女がその気になって、どんどん僕を巻き込んで行ったんだ。」

お代わり、要る?
「ああ。ください」

男はどんどん、グラスを空にする。

あの医者も、多分、言い訳のように言う。彼女から誘って来たんだよ。って。

私は、目の前で言い訳するのを止めようとしない男のネクタイをほどき、ワイシャツを剥ぎ取る。男は、一瞬、ボンヤリとしたように動きを止め、それから私に覆い被さって来た。

これで、ササヤマ嬢とおあいこになったじゃない?

そして、また、相手に誘われて、なんて、言い訳するのかしら?

--

翌日から、ササヤマ嬢の恋人からの電話が何度も鳴るようになったが、私は、決して取らない。寝物語に言い訳を聞くのは、趣味じゃない。


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