まえに学校で『全ての子供は、望まれて生まれて来なければならない』、ということをならった。 …もし、望まれずに生まれた子供が在たとしたら…? 現にそれは否めず。
あたしの両親には担当がある。 母親は妹担当。 父親はあたし担当。 あたしが母の家に居た時だって、父はあたしの食費、諸々を母に払っていた。 当然の様に、母はそのお金を消費する。 あたしは滅多に御飯を食べなかったし、食べたとしても雑炊くらいだった。 そしてお金が足りないと、母は父をあたしに電話で呼ばせ、喧嘩。 それが、嫌だった。 それを拒否しようものなら母は狂った。 狂人。 大嫌い。 精神異常者、誰が。 『出で行け』 それを云われるたびに、あたしは居場所を失う。 もう、慣れたこと。
何度目か、今度は本当に母が家を出て行く日、母と祖母は妹を、その腕が引き千切れるほど取り合った。 両方の腕を引き合って、千切れてしまえばいいのに、と、その光景を見ながら静かに思ってた。 妹は顔がぐちゃぐちゃになるまで泣いて結局、母の車に乗り込んだ。 そして、あたしは残されて。 漠然と、『在なくていいんだ』とか思った。 冷静だったし、安心もした。 去り際の母親に『あなたは母親の居ない子供になるんだよ』って云われた。 未だ彼女はあたしの母親で、あたしに居ろだの消えろだの云う。
あたしは望まれて生まれた子供じゃない。 授業中そう思うと、あたしは無様でならなかった。 そうしてまたひとつ、何かに失望する。 狂いたかった、壊れてしまったかも知れない。 でもあたしは彼女の子供で、母親が恋しかった。 いつもあたしを置いて行った。 あたしをひとりにする。 醜いあたしを産んだ時、彼女はあたしに絶望したんだ。 血塗れのあたしを見て、どんなに深くあたしを責めたろう。
手さえつないでもらえなかった、幼い日。 ざらざらとした感触だけが、必死にあたしの存在を振り解いてた。
いつもいつもいつも。
広い世界で孤立してゆく。 生きる無意味さに流されてしまいそう。
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