⊂イヤ。⊃
2001年06月14日(木)

父親が、嫌い。
そんな事を云ったら、申し訳ないんだけど。
嫌い…というより、こわい。
声がこわい、存在が。
一緒の部屋にいるだけで身体が緊張して、唾も上手く飲み込めなくなる。

学校に行けなかった頃。
冷たく、固い雑誌で、たくさんたくさん殴られた。
以前から妹よりあたしの方がそういうの、対象だったから。
そして、冷たく見下ろしながら、
『お前は、病気だ』
そう、いった。
あたしが、ビョウキ?
何の病気?
無意識にガラスの箱を投げつけてた。
腕を切ってそこから、青い血がたくさん流れた。
あんなやつ、人間だなんて思いたくなかったから。

病院にも行った事が有る。
精神科の。
結局、診察は受けずに帰ってきたのだけれど。
昼間の総合病院は混んでいて、受付にひとがたくさんいた。
人がたくさんいて、知らないひと、イヤで、恐くて、明るくて、壁際にずっといて。
そして順番が待てなくて、母親に『帰りたい』って云った。
その頃あたしは、母親と一緒の家にいた。
めったに誰も見なかったけれど。
母親に、病院へ連れて行かれたことが、あたしにとってショックなことで。
また、手を切った。
あたしは病気なんかじゃないよ。
たくさんたくさん、青い血が流れた。
あいつと同じ。
指の間を伝って、滑り落ちる。
それは気持ちが悪いほど生暖かく、ましてあいつと同じものが身体の中を流れているかと思うと、吐き気さえした。
これだけじゃない、この髪も、爪も、皮膚も、細胞のひとつひとつまで。
自分が嫌い。
部屋を暴れて、白いドアに血を塗り付けた。

母親は、陰であたしの悪口を言っていた。
祖母も、会うたびに全てをあたしの所為にした。
親戚も、世間の目を気にして、学校へ行かないあたしを責めた。
笑うことも、泣くことも、怒ることも、風邪を引くことも、存在すら、赦してはくれなかった。
自転車に乗れば、轢かれる蛇を思った。

死ぬ事しか考えられなかった日々。
今も、あたしの中に残ってる。



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由弥 [御手紙]