赤坂見附で降りた女性(ひと) - 2006年12月23日(土) 地下鉄で隣り合わせた女性(ひと)。 シャネルのバッグを膝に抱え、 メイク直しに忙しげ。 鏡をのぞく程度なら、と思いきや、 ファンデーション、アイシャドウ、マスカラと なかなか終わりそうにない。 そこで私は、持っていたノートの端をやぶり、 静かにメモを書きつけた。 『電車内でのメイクは、あまり気分の良いものではありません。 事情があるかと思いますが...』 二つに折った、その紙片を、 口の開いたシャネルの上にふわり。 すると彼女は意表をつかれ、 私を遠慮がちに一瞥するやいなや、 コンパクトをすぐにひっこめた。 それから、二駅、三駅。。。 私は車内から、何か風通しのよいムードを感じていました。 そして、赤坂見附。 彼女は静かに立ち上がり、 私に会釈をしながら降車しました。 その端正な美しい顔には、 奥ゆかしい笑みさえ浮かんでいました。 私はじんわりと胸が温まるのを味わいながら、 軽く会釈を返して見送りました。 ----- こんなさりげない日常の一コマに、 ささやかな安らぎを感じました。 周りの人の迷惑な言動に、 ただ眉をひそめるだけではダメなんだ。 それでは何も解決しないどころか、 押し殺された不愉快な感情が、 知らず知らず心に募ってしまうから。 声を荒だてなくてもいい。 その人を、辱めなくてもいい。 ただ、さりげなく、 ただ、そっと、 やわらかな言の葉を これからもそっと送ろうと思う。 -
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