「静かな大地」を遠く離れて
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2002年06月12日(水) 人生の必修科目

題:355話 馬を放つ25
画:ギョリュウバイ
話:険しい山道を歩く者が、谷の深さにいきなり気づいたようなのです

題:356話 馬を放つ26
画:フジバカマ
話:万一のこととして考えてみよう

これから年齢を重ねていくというのは、近しい人、大事な人と死別する機会が
増えていくことと同義なのかもしれない。理屈ではわかっていても、だんだん
とそれを思い知らされる出来事が、頻繁になってくるということなのだろう。

ナンシー関さんが昨夜亡くなった。39歳の急逝。ずいぶん彼女の文章に力を
もらってきたし、物事の見方の師匠としての「学恩」めいたものさえ感じている。
国歩艱難たる日本で、ほとんどただ一人、常に信頼に足る見識を示してくれる
批評家であったと真剣に思う。M繁氏より先に逝くなんて…というような稚拙
なツッコミを手向けにしようにも、どうにも行き場のない喪失感だけが残る。

偶然身近なところでも、今日、若くして人生の伴侶を病気で亡くした方がいる。
死は近いところにある。死を無いことにして忘れ去ることより、死とつきあう
スキルを高めることのほうが大事なのだろう。そしてそれは慣れることの出来
ようはずもない他者の死を考えることではなく、自分の死を考えることでしか
高めることのできない覚悟、なのだろう。それは自分の生を想うことでもある。


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