「静かな大地」を遠く離れて
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題:255話 栄える遠別15 画:鑿 話:恩が巡り巡ってやがて仇になったりする
≪あらすじ≫明治初期、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎 は弟志郎や信頼するアイヌと協力しながら牧場を開く。三郎はアイヌ に育てられた雪乃と、志郎は函館から連れてきた弥生と、それぞれ 結婚。牧場の経営も順調だった。鮭の孵化場も試みるが、周囲の理解 を得られず閉鎖した。
題:256話 栄える遠別16 画:ねじ釘 話:だから三郎さんもお米を作っているのね
題:257話 栄える遠別17 画:巻き貝 話:なにもわざわざ北海道で米を、というわけさ
題:258話 栄える遠別18 画:レコード針 話:ならば榎本卿なしでやりましょう
もしかしたら僕がもっとも春を感じるF1開幕。新しいカラーリングのマシン、 去年までとは違うチームのユニフォームに身を包んだドライバーたちの顔ぶれ。 もう10年以上見ていると、全員のデビュー時からの軌跡を知っているわけだ。 今年はジャン・アレジが不在。それでも観るのは佐藤琢磨のデビューが大きい。
雨中を疾駆する佐藤琢麿の黄色いマシンに、かつての中島悟の最高位4位を想起。 あれも豪州だった。琢磨はイチローやナカタを思わせる、否それ以上に世界標準 なタイプの日本人だという印象を振りまいている。合理的な行動様式から喋り方 に至るまで、なんとなくこの三人は似ている。幸い日本のプレスがF1の琢磨を 追い回す心配はないだろうから、彼がマスコミ嫌いになることはないだろうけど。
F1の本質は時間に在る、と思う。サーキットでの1000分の1秒単位の争い をしているからだけではない。テクノロジーの最前線がジリジリと漸進するのを 目に見えるデザインで見せてくれるからだ。未来と過去との狭間に在る時の断面。 数年前に地上最速を表象していたはずの流線型のデザインが、レトロな印象さえ 抱かせるほどに、エアロダイナミクスは進歩を続ける。どこへ行き着くともなく。
ドイツのニュルブルクリンクで実際にグランプリを観たことがある。まず圧倒的 なエンジン音に驚く。そして驚くべき加速、あれはテレビに映らない。ロックの コンサートを観ているような身体的興奮に包まれる。コースは目眩く色彩の乱舞。
観戦の前夜の宿泊地は、カール大帝が建てたフランク王国の古都アーヘンだった。 ゲルマンの土俗を覗かせる古い石の聖堂のアルカイックな佇まいとF1との距離。 しかし、なぜか、F1は音楽で言えばロックよりもクラシックのイメージなのだ。 きっとF1がとことん“ポリフォニック”なモータースポーツであることの至福。 自動車には、20世紀の欧州の未来派的な欲望のカタチが、脈々と息づいている。
広義のテクノロジーに夢をかけること、それが人の歓びであることに違いはない。 そのことを忘れずに時の断面を何度でも見つめ返して、世界の軌跡を見定めよう。
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