「静かな大地」を遠く離れて
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2002年01月27日(日) 恋のドリームランド

題:221話 函館から来た娘11
画:折り鶴
話:窮鳥懐に入れば、と世間で申しますな

題:222話 函館から来た娘12
画:碁石
話:実は私も何か違うと思ったのですよ、と若い方が言った

題:223話 函館から来た娘13
画:輪ゴム
話:百の兵法逃げるに如かず

由良さんと都志姉さんによる、父母の馴れ初めの聞き書きルポが続いています。
今日までのところでは「恋」が誕生する瞬間まで、あと少し…といったところ。

御大の過去作で恋が誕生する瞬間を描いたシーンといえば↓これでしょう。

■池Z夏樹『タマリンドの木』(文春文庫)
(引用)
 「盛岡のどの辺ですか?」
  さすがに相手は不審な顔をする。
 「市内です。肴町というところ」
 「じゃ、中学校は下橋中ですか?」
 「ええ、どうしてわかるんです?」
 「ぼくもそうだから。ぼくのうちは大沢川原。営林署の近く」と彼は言って、ちょっと
 だけ目をつぶり、ゆっくりと深く呼吸した。目を開くと、相手の顔が急に、まるで夕方
 の雲の間から赤い日が射したように、明るくなっていた。
 「盛岡なんですか。驚いた」
(引用おわり)

下橋中というのは古都・盛岡の歴史を背負った学校のようで金田一京助と石川啄木と
いうビッグ・ネーム卒業生を出してたり。どちらも北海道に深い縁のある人ですね。
西東始先生の論文↓など読みつつ、近代史における<地方>の位相に思いをめぐらせる。
http://www03.u-page.so-net.ne.jp/jd5/hspstcl/works/okakura.htm
と来れば、強烈な毒を含有する、あの本↓が文庫化されたので改めて手に取る好機かも。

■吉田司『宮澤賢治殺人事件』(文春文庫)
(引用 文庫版あとがきより)
 …言い過ぎを承知でいえば、大東亜戦争をおっ始めたのも終わらせたのも岩手の輩が
 やったのである。
 いま私は、この文庫版『宮澤賢治殺人事件』の出版に勇気づけられて、もう一度その
 聖なる岩手に旅立とうと思っている。岩手を回って、山形に入るのだ。なぜなら、山形
 は、板垣征四郎と共に満州建国、「王道楽土」の夢(=軍事的ドリームランド)を築いた
 関東軍参謀・石原莞爾が生まれ、骨を埋めた故郷だからだ。
(引用おわり)

うーん、考えることが一緒だったり(^^; なんにせよ、とてもエキサイティングな本です。
ある意味ここで『静かな大地』の詳注をつける作業は『宮澤賢治殺人事件』的かもね(^^;

で、演劇集団キャラメルボックスの「ブリザード・ミュージック」の勢いもあってか、
年末に盛岡&花巻を訪れた。駅に着くなり「小岩井リグレ」で昼食。美味しかった〜♪
雪印@北海道がダメなら小岩井@岩手があるサ(^^)

この流れで盛岡&花巻訪問の顛末を書こう…なんてすると眠れないので止めます(^^;

■『秘密の喫茶店 小熊英二さんに伺う』(編集・発行イーハトーボ)
…という下北沢の喫茶イーハトーボで頒けていただいたブックレットを読んでたら遅く
なってしまったので。『本とコンピュータ』で小熊先生がかいてらしたやつですね。
小熊ファン必読の興味深い内容です。最近出た網野善彦先生の対談集でもご登場してて
「人類史的転換点における歴史学と日本」というタイトルでお話しされています。

あ、そうそう、名著『ジオラマ論』(ちくま学芸文庫)の続編ともいうべき新書が出たよ!

■伊藤俊治『バリ島芸術をつくった男 ヴァルター・シュピースの魔術的人生』(平凡社新書)
(引用、見返し惹句)
 バリを訪れた人々を惹きつけるバリ絵画、ケチャ・ダンス、
 バロンとランダの闘争を中心とした呪術劇チャロナラン…。
 これらはロシア生まれのドイツ人がバリ人と共につくったものだった。
 彼は自ら絵を描き、写真を撮り、チャーリー・チャップリン、
 コバルビアス、ミード、ベイトソンらの案内役をも務めている。
 そして、日本軍の爆撃により四十七歳で不思議な生涯を閉じた。

 最良のものをバリに捧げた男の人生をたどり、
 “美と祝祭の島”“陶酔の島”の秘密に迫る。
(引用おわり ちなみに最後2行は大きい赤字)

これは期待の新刊。パラパラ見てると冒頭近くいきなりアムステルダムが出てくるようだ。
「静かな大地」で北海道をしばらくやったら、日本vsインドネシアvsオランダという三者の
グー・チョキ・パーのような関係(?)をメインに近世以降の世界史を眺めるというテーマ
で本を読んでみたいと思っている。この本は、そのパズルの重要なピースになりそう。

あと、今年はまず2001年屈指の収穫『ヌナブト』↓を広く知らしめようと画策中。

■磯貝日月『ヌナブト イヌイットの国その日その日』(清水弘文堂書房)
http://homepage2.nifty.com/shimizukobundo/nunavut.html
 公式ウェブサイトから買うこともできるようですね。
 この若きフィールドワーカー、メッセージが先に立たない足腰の強さに信頼感が持てます。

…とかなんとかいいながら今週末も食べることばかり熱心でちっとも本なんか読まなかった(^^;
「妄想の地理学」が肥大化するのみ。


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