「静かな大地」を遠く離れて
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2001年10月12日(金) 未来圏からの風を継ぐ者

題:120話 札幌官園農業現術生徒30 
画:蝋燭
話:万事は自然の掟の中にある。これに従えば栄え、背けば廃る。

♪暮れなずむ町の光と影の中、去りゆくあなたへ贈る言葉〜というわけで、
明治十年に十五歳の三郎君に後世の花巻のある教師からの言葉を勝手に(笑)

 諸君はこの颯爽たる
 諸君の未来圏から吹いて来る
 透明な清潔な風を感じないのか

以上、『未来圏からの風』からの孫引きコーナーでございましたぁー♪
このあいだの「成層圏の宮澤賢治」で“オトナのための宮澤賢治への導入”
というリストを挙げましたが、別段の反応は今のところありません。
好きな人は好き、苦手な人は苦手、というだけの孤独な惑星なのですね、
宮澤賢治って。でも、そういう問題ではない、と言いたかったわけです。
多面体というか万華鏡みたいな人だから、好き組も苦手組もそれぞれに
人々はケンジという現象に映し出された「自己」を見ているのではないか、
と仮説すると妙に納得が行く気がする。そりゃ好きと苦手に両極化するわ(^^;
このあいだのリストは、その解毒剤、憑き物落としとして作られています。

『未来圏からの風』(PARCO出版)という僕がとても好きな本に導かれて、
ボストンへの飛行機に乗り、紅葉&黄葉のニューイングランドを旅したのは
ちょうど一年前。最近その旅行のことについて、しきりに思い出します。
街の家並みは、今年もハロウィンの飾りつけでいっぱいなのでしょうか?
今日は、去年の旅の最後の日から一年目に当たります。

アラスカでもネパールでもバリ島でもなく、ニューイングランドへ行って、
リン・マーギュリス博士の講義を受ける気分で、著書の邦訳を読んだのは
とても楽しい体験でした。それもアメリカで育まれた対自然観の舞台である
ウォールデンポンド(ソロー『森の生活』)やナンタケット島(メルヴィル
『白鯨』)を巡りながら。そして究極の人工都市・ワシントンDCの滞在。
リン・マーギュリス博士の所説を読みながら、昨日触れた巽孝之氏の仕事
の知見を適用すれば、21世紀的世界観へのヒントさえ得られそうです。

「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」として
一体どんな世界が構想できるだろう?「共生」という言葉を道徳的価値観
とか美意識から解き放って、一旦ニュートラルな科学の言葉に戻してみる、
そして考えてみること。十九世紀の後半よりも事はややこしくなっている。
でも悪くはなっていない、取り返しの着かないことにはなっていない、と
ひとまず考えてみること。

若いアメリカから吹いて来る清新な風、ジョン万次郎も感じただろう未来圏
からの風、それを三郎は今、その身いっぱいに受けて全力疾走しています。

“来年”十六歳になるという彼の誕生日は…、八月八日。


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