「静かな大地」を遠く離れて
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2001年09月06日(木) 陰陽道、アムステルダム、札幌の店

題:85話 鮭が来る川25
画:カブトムシ 雌
話:いろいろなからくりが縺れたおかしな夏だった

「歴史というやつ」が、今日の話題といっていい。
文字による記録も歴史も、すべての共同体に必要なのではない。
無文字文化に高い精神性が備わっていることは、むしろ当たり前で
成文法や、税収の記録、そして書かれた歴史が“必要”な社会は
共同体が折り重なった「支配ー被支配」関係で構成されている、
世知辛い世の中なのだ。

かといって、共同体の成員の共有する物語と、生理と、自然界の
リズムがリンクした、“幸福な”世の中なんてものも現代には
望み難い。っていうか、僕なんかは、そういう共同体のタブーの
体系に、まかり間違って一瞬あこがれたりしたとしても、すぐに
息苦しくなるに違いない。それはもう、生理的レベルの問題だ。

この辺が「先住民族の精神世界」みたいな話題になると裸足で逃げる
理由だろう。個人としては、言語的に割り切れない領域の世界を、
生理的な気分に預けることを良しとし、案外トラディショナルな意匠
を偏愛しながら身体を処したりするのが好きなのにもかかわらず…。

具体的に言うと、僕はジャパニーズ・シントーイストかどうかは
わからないけれど、やたらと神社に行く人間だ。多くの日本在住者が
“初詣で”を一年間の最初で最後の神社訪問の機会としているであろう
のと大きく隔たっている。たとえば今年になってからだって、100回
は行ってないかもしれないけれど、きっと50回は行っているだろう。

80年代から鎌田東二氏の著作や、中沢新一氏の著作を読み、あるいは
荒俣宏御大の『帝都物語』を、かなり入れ込んで読んでいたくらいだ。
90年代の若い世代は、いきなり京極夏彦から入るから情報量が多い
ようでいて、過不足なくエンターテインされることに充足してしまって
結構“憑き物”は憑かないのではないかと思う、一般的傾向としては。
むしろ『帝都物語』の、あのスカスカ加減のほうが“祝詞”としての
効果は強力だったのではないかと、個人的体験からは、思ったりする。
あ、っていうか、その前にすでに小松和彦氏とか読んでたからかな。
しかし80年代の前半から「陰陽道」とか知ってちゃダメです(^^;
…というわけで、ぜんぶ悪いのは栗本慎一郎師です(?笑)

余談だが、『ファンシィダンス』は読んでたのに『陰陽師』は未読の
岡野玲子さん、そろそろ読んでみようかな、などと思いつつ。
平安時代もさることながら、陰陽道が隆盛をみたのは、戦国乱世のこと
なのだそうです。“軍師”と呼ばれた人たちは、すなわち陰陽師だった
とか…。そういう中から出てきた信長って、特異だったみたいです。
昨日の話と絡めると、信長ってなんか地球儀が似合うイメージだし。
日本の中世から近世の立ち上がりにも「異貌」の歴史がありそう。
最近どちらかというと幕末ばかり関心持ってたけど、あのへんの時代の
イジり方も、角度を出したいところ。中沢新一『悪党的思考』参照。

戻ろう(^^;
言いたかったのは、オカルトも「個人」の責任の範囲で嗜むぶんには、
飲酒とか“なんとか健康法”とかと大差ない、“Tips”に過ぎない。
そしてトコトン「個」で生を引き受けてゆくスタイルは、
昨日の文脈だと“アムステルダム”的で、悪くないと思う。
ドラッグも安楽死もゲイも「許容」する、聖書的世界観から見れば
“悪徳の都”なアムステルダムの風情を、なかなかに愛しく感じる。

昨日は、シカツメラシく、難しい歴史のことばかり考えながら休暇を
過ごしていたかのように書いたかもしれないが、実際は実にダラダラと
“悪徳の都”を楽しんでいたのだ。ま、ドラッグとかとは無関係に(^^;
ゴッホもお腹いっぱい見たし。ゴッホはベンチャーズではなかった、
すなわち日本人だけに殊にウケているのではないことが確認できた、
っていうかゴッホ美術館、混みすぎ(^^;
フェルメールは僕は結構あちこちで見ていて、ワシントンDCの
ナショナル・ギャラリーでも見てるし、もちろんオルセーも行ってるし
去年大阪に来た展覧会も出張のついでに見た。なので今回はその補完、
デルフトの街にも行って来ました(^^)
あとはなんといっても行きたかったライデンの街と国立民族学博物館。

…って書くと、やっぱり精力的にお勉強して歩いてる感じがするけど
基本的には散歩してカフェでダラダラしてゴハン食べて…の繰り返し。
以前のダブリンの時のビューリーズ・オリエンタル・カフェみたいな
場所は、今回で言えばライツェ広場のホテル・アメリカンの中にある
アール・ヌーヴォーの内装のカフェ・アメリカン。名前だけ聞くと
想像できないくらいにイイ感じ、かつ観光客にも敷居低いカフェ(^^)
私はここで雨の日に『武揚伝』のクライマックスの五稜郭防衛戦の
くだりを読んで涙しました。シブイねー♪(笑)

毎度ヨーロッパの街で(去年はアメリカでも)恒例の“中華料理店の
国籍不明の東洋人ごっこ”という持ちネタ、今回はやらなかった。
っていうか、あまりにもコスモポリタンで、中華屋なんて東京並み
は大げさにしても、やたらに沢山あるんだもの、アムステルダム。
で、代わりに不届きコロニアルな嗜好を満たしてくれたのは、
旧蘭印すなわちインドネシア料理店で食べるライス・ターフェル。
10数種の料理がちょっとずつ皿で出てきて、自分でライスと
混ぜて食べるというスタイル。言わば「卓上のセルフ混ぜご飯」と
考えていいですね(<往年の古館伊知郎風)
これがなんとなく、むやみに日照時間が長くて困る一人旅の夕べに
そこはかとなくコロニアルな気分をそそって悪くないのだ。

あと驚嘆したのが、ある日、我がアムステルダムの街を占領した緑の
服を着た人々。アイルランドのクラブチームの遠征にくっついて来た
いわゆるフーリガンさんたち。これが、いかにもケルトの民な感じの
イカツイ兄さんたちばっかりで、徒党をなしてハイネケンを鯨飲し、
街角で大小の旗を拡げて気勢を上げ、歌い出す始末。
そもそもが張り巡らされた運河のおかげで迷路のようなアムスの街で
曲がる角、出会う広場、すべてを占拠する、腕っ節の強そうな集団の
酔っぱらい@含むスキンヘッド、サッカー場で使う鳴り物付き(笑)
彼らが一人歩きの東洋人に悪意を持ったとしたら…どうしよう?
真剣に身の危険を感じましたわ。だってダム広場なんか、革命でも
起こったのか、と思うような騒ぎだったもの。
実際オランダの機動隊みたいなのが装甲車両並べて待機してたし(^^;
「こ…これが、フーリガン…、これが、ヨーロッパ…」って、
アムロ・レイ風(声・古谷徹さん)に呟いて絶句してしまいました。

彼らの応援するチームは、勢いを駆ってか、アヤックスを撃破した。
戻ってホテルのテレビで見たところによると。
で、因縁深いことに(?)先日W杯予選でオレンジ軍団がダブリン
でアイルランド・ナショナルチームに負けて本戦出場絶望になった。
ふむ。オランダがいないW杯、どこを応援すればいいんだろ?

そんなこんなで『武揚伝』を読むためのオランダ・ツアーだったけど
航空チケットの有効活用で、懐かしのアテネにも2泊3日で出かけた。
これがアムステルダムとは、札幌と那覇くらいの気候の差。
灼熱のアテネだったけど、2年前の記憶を頼りに地図なしで過ごせた。
やはり2年前に服を買った店のマダムが、僕のことを覚えていて、
今回も何着か買ったので、「また来る」って言っちゃったり(笑)

サントリーニ島までは足を伸ばさなかったけど、アテネの店で買った
サントリーニ産の赤ワインをリュックに入れて札幌まで持ち帰って
馴染みの店・ティパサで開けて飲んだ。北海道の知人の皆さまには
不義理をしましたが、急であやふやで短い滞在だったのでお伝えも
せず失礼いたしました。またそのうち行きますので(^^;
ちなみにティパサというのは、↓こんなお店です。
http://www.lares.dti.ne.jp/~fuente/tipasa/entree.html

なんか今日の話の展開、普段にも増してアチコチ跳んでるなぁ(^^;
いつも素面なんだけど、きょうは酩酊してるような感じ。
「いろいろなからくりが縺れたおかしな夏だった」のは、
僕の夏休みか(笑)


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