新世紀余話
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2003年06月05日(木) ドイツと組まなければ災いは避けられた?

 不思議でたまらないのは、「四十年代に、日本はドイツと組まなければ災いは避けられた」と大真面目で主張する御仁のいることだ。
 それらの人々は、問題の核心をまるで見誤っているとしか言いようがない。
 日本が災禍を被ったのは、ドイツと結んだからではなく、ドイツと同じように国民一丸となりファシズムの道を驀進した報いだったはずである。

 実は、災いは一人のアメリカ人を敵にすることによって招き寄せられた。
 フランクリン・ルーズベルト。
 今日、右翼が「日本を開戦に追いやった張本人」とこき下ろす、当時の合衆国大統領。
 タイム誌によって「二十世紀を代表する偉人」に選ばれたこの人物は、わが国が露骨な侵略国家だから目の仇にしたのであり、ヒトラーの相棒になろうがなるまいが、日本が軍国主義からみずからを解き放たないかぎり、同じ扱いを受けた(すなわち敵対者として扱われた)のはまるで疑う余地がないところだ。

 アメリカが日本を追い込んだ最大の理由は、英米両国が覇者としての将来的な適性を備える世界の中で、日本が自国の進む道を、まさにドイツやイタリアと同じかたちで踏み外していたことにある。
 国家も国民もはるかに未成熟だった頃の英語圏諸国によって新時代の正義が遂行されたあの戦争で、イギリスもアメリカも、まったく紳士的で人道的に戦争を進めたわけでなかったのは自明の理だろう。
 にもかかわらず英米両国民は、理想を具現化する場合に発揮される能力というか、実際状況への適応性においてドイツ人や日本人よりもはるかに恵まれており、そうした資質の差の国家的集積が勝敗を分け、歴史をつくったのだった。

 彼らは、勝つべくして勝者となったことを銘記したい。
 「勝てば官軍」だと言い訳する人は、この巨視的事実を見ようとしないだけなのだ。

 ドイツと組もうが組むまいが、日本が武力で周辺地域を従わせようとする国策を捨てないかぎり、すなわち帝国であることを放棄しないかぎり、結局は、前途で災いが待ち受けていたことは確実だろう。

 大ニッポンが存立できる時代は終わりつつあったのだから。


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