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ラヂオスターの悲劇
トマーシ
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2005年09月08日(木)
ボレロが流れている。

今は飛行機の中
そのクラシックの音楽プログラムに悠々迫らざるこのラヴェルの名作は組み込まれていて、およそ一時間ごとに繰り返されることになる。ちょうど二回目のボレロ。
飛行機は空の上。
さらに雲の上に出たところ。
射し込んできた鮮やかな光に弾みがつく。
雲はどこまでも連なって互いに紡ぎ合っていて
まるで巨大な中華鍋みたいで
そこに光が射すとギラギラと油がひかれているみたい。
雲が何層にも何層にも積み重なっていることが分かり
上から見た雲は鍾乳洞に垂れる石灰石みたいに奔放にあちこちで突起していた。
もちろん綿飴みたいでもあり、繊毛の厚い絨毯のようでもあり
ツヤツヤと生気を帯びて白い。

ラヴェルのボレロは次第次第に盛り上がっていく。
僕の見ているもの全て
その艶やかさは更に色めきたつように見えた。
太陽を覗くとそれは射すような光で地上から見上げるより
ずっとしっかりと導いてくれるふうに見えるのだった。