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ラヂオスターの悲劇
トマーシ
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2004年11月16日(火)
夜を朝へ運ぶ

井の頭通りを一路下北沢へ、永福町の駅を越えた高台からは西新宿の高層ビル郡が見える。自転車のハンドルを握る手に力が漲るのを感じた。ついさっきまでヤマネみたいに眠っていたからだろう。ヘリポートのネオンが鮮やかだ。あの眺めは一度みてみるといい。都庁まわりの高層ビル郡はどこから眺めたってため息が出てしまう。東京タワーと同じ。あらがうことの出来ない引力が僕らを此処に釘づけにする。此処が何処なのかわからなくなった僕らにまやかしみたいに手招きする。バベルの塔。あのなかに何が詰まっているのか?なにもありはしない。スカスカのスポンジケーキ。千里の向こうから人を呼び寄せるための機械。ただほっとさせるためだけにそのガラクタは冷たく強い光を発し続けているのか?未来永劫。と、僕はまたまたため息が出てしまう。時々思うのはみんなはあれを見て何を思うのか?ただのため息ばかりがあれを成り立たせているわけではない。夜を朝へ運ぶ象徴。よく注意すれば、僕にもあのビルの足元に拡がる深い闇を見通せるようになれるかもしれない。ただただ緊密に闇があり、それがまたどこまで続くかわからぬ寒々とした11月の空に向けて唯一無二に刃する西新宿のバベルの塔に集約されて、放たれる。ドライブインのカレーライスみたいに冷たい月。キャラバンは何処までも続く。