ナナとワタシ
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2007年05月13日(日) |
ストーカー入門・後編 |
前回の続きです。
ナナのアパート(と思われる建物)から100メートルくらい離れた砂利の路上に車を停め、ぼーっとアパートを眺めるじょりぃ。 住所はわかってましたが、何号室かまでは知らなかったので途方に暮れました。 4世帯あるタイプのアパートです。アパートの正面に停めたので、すべての世帯が見渡せます。 見渡せますが、どこんちも同じに見えます。
しかし、遠い。 洗濯物くらいしか見えません。 実は双眼鏡も持ってきていたじょりぃだったんですが、見つかったらこりゃもうホントにヤバイと思って使えませんでした。 それでも葛藤はあって、「見つかったら『探偵です』って言えばいいかな!」とかもちらりとアタマをかすめたんですが、やっぱりできない。さすがにできない。
子どもがいるという情報は入手していたので、それっぽい洗濯物の部屋はどこかいな、と見てみるのですが、なんかどこんちもホントに同じような感じなんですよ。洗濯物すら同じ。
あとでナナから聞いたんですが、当時住んでいたアパート4世帯、みんな同じ年頃の子どもがいたそうなので、洗濯物からわかるわきゃあなかったんですが。
ワタシが張っていたのは時間にして3時頃。 そろそろ洗濯物を取り込んでも良い時間です。大きなお世話ですが。 取り込んでくれればナナの姿が見える。 ということでしばらく粘るワタシ。
しかし。 100メートルと距離を取りつつも、そんなところに意味もなく車を停めているのはワタシだけ。 すごく目立ちます。 だってそのアパートしか見るモノがないような場所なんですから。 逆に言えば、アパートからもワタシの車くらいしか見るモノがないんです。目立ちます。 何かもう、そわそわしちゃっていけません。 誰も見てないっちゅうのに、たまに地図を開いて眺め、アゴに人差し指と親指をあてて「うーん」なんてやって、あたかも道に迷って困っている人の演技をしてみたり。 こんなことでは立派なストーカーへの道は遠いです。 いつの間にか「小心者入門」か「じょりぃアクターズスクール」になってます。
思い切ってアパートの裏手にある駐車場に車をまわし、車から降りて表札とか見てきちゃおうかなーとも思ったんですが、 そんなときにナナにばったり会ってしまったら、もう言い訳のしようもありません。 「ポスティングの仕事してるんだ。あはは」とかならいけるかなとも思ったのですが、実際に顔を合わせて会話をする勇気がこれっぽっちもなかったので、やはりリスキーなことはやめておくことに。
結局30分ほど、4世帯の洗濯物を眺めて帰ってまいりました。 アホかワタシは。
そして会社に戻り、「遅い!何してたんだ」と怒られ(ストーキングしてました)、そして激しい自己嫌悪に襲われるワタシ。
当時はストーカーなんて言葉が流通していなかったので、「ワタシったらまるでストーカーじゃん・・・」という落ち込み方はしなかったのですが、なにかこう、やはり陰湿で執拗で強い負のエネルギーを自分に感じてしまいましてね。 そんなに会いたいなら、ちゃんと会えばいいのに。 好きだ好きだと思いながら誰んちのかわからない洗濯物をじろじろと眺めてくることしかできないのかワタシは。 ストーカーというより下着泥棒みたいです。
ということで、それからしばらくして、ワタシはナナに手紙を書きました。 なんてことない手紙ですが。 結婚したって聞いたから、実家に電話して住所教えてもらっちゃったー、と。 よく思い出してるんだよ、元気? みたいな感じで。 しかも便せんは手作りでした。 その頃買ったばかりのMacの勉強も兼ねて、何か海をイメージした便せんを作ったような記憶があります。 ハッキリ言ってやってることがダサいです。 こんなことを世界に向けて今さら告白している自分を、自作の便せんの海の中に沈めてやりたいです。
海の便せんがいけなかったのか、ナナから返事はなく。
しかし、手紙を出して数ヶ月後のお正月に、年賀状が届きました。
やったあああああああああ!!!
もう、嬉しかったこと嬉しかったこと。 「手紙ありがとう。返事しなくてゴメンね。会いたいね」とかなんとかあっさりさっくり書いてあったと思います。 あっさりさっくりとはいえ、ナナからもらった年賀状なんて、中3のときが最後ですし、それだって文字だけで 「もう会えないかもしれません。実は私、風邪ひいてるんです」 それだけという、アタマおかしいとしか思えないものだったんですから。あけましておめでとうくらい言えんのか。 なのでこのたびの年賀状はワタシを凶器させました。 違う、狂喜させました。
しかし年賀状には、ワタシの中でう●こ扱いになっていた子どもの七五三の写真が。
今でこそかわいくてしかたないナナの子どもたちですが、当時のワタシには「いらん現実」でありまして。 一瞬 (´・ω・`) としたんですが、でもそこに写っている幼い女の子の顔立ちの中にナナの面影はしっかりとありまして、すごく遠回しにですが、ワタシはナナの顔を垣間見ることができました。 ナナの「今」をリアルなものとして感じることもできました。
ワタシのストーカー行為の実りは、割と健全な形で得ることができたわけですね。 めでたいことです。 あのときやりすぎなくてよかった、本当に。 双眼鏡でなめ回すように観察してこなくてよかった。 干してあるブラジャーとか盗んでこなくてよかった。(する気もなかったですが)(本当ですよ!)
ちなみに後日談ですが。
ナナときっちり再会を果たし、あれこれとおしゃべりするようになったある日。 ナナがその問題のアパートの話をしまして。 で、立地に関する話題になったときに、ワタシったらうっかり「○○○電機の裏のほうだよね?」と知ったかぶって口走ってしまったことがありました。 ナナは「そうそう。・・・てか、なんで知ってるの、あんな奥まったとこ」と。
Σ (゚Д゚;) ドウシヨウ!
「ああ、だって年賀状やりとりしてたし、○○(町名)でアパートあるとこっていったらあのへんじゃない?」
苦しい。実に苦しい言い訳です。 だって、そのへん、他にアパートなかったし。
「そうかあ?」と言いつつも、ナナにしてみれば、まさかかつて自分がストーキングされていたかもなんて想像もしませんから、その場はそれだけで落ち着きました。
でもとってもドキドキしました。 じょりぃの小さな心臓が早鐘のように。 ブラジャー盗んだのバレなくてよかった。(冗談ですよ冗談)
以上、なんの役にも立たないストーカー入門・『結局ただのナナワタ昔話かよ編』を終了させていただきます。
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