ナナとワタシ
ナナとワタシ
INDEX前へ次へ


2004年08月28日(土) なりゆきで・2(ついにカムアウト)

前回の続きです。


ナナの声が暗い気がしたし、「うん」しか言ってもらえないので、不安になったじょりぃは饒舌に。

「中学高校の頃なんかは、異性愛者でなければ『変態』とか『異常』と言われている世の中だったから、
 とにかくそれを隠さなければということで必死だったんだ」
「うん」
「だから、ワタシの基本に、常に強烈な劣等感と自分の存在否定みたいなものがあってさ」
「うん」
「自分は不良品で、そのことが知られたらとにかく親をガッカリさせるしと」
「うん」
「今はそんなこと思ってないよ? 劣等感もないし」
「うん」
「前に話して心配をかけた『早く死ななきゃ、いなくならなきゃ』って思っていたというのは、
 その劣等感のせいだったんだ」
「うん」
「とにかく親に対して申し訳なくてさ。そればっかりが頭にあって」
「うん」
「親の中で『娘としてよくできたじょりぃ』の状態のまま、人生を終わりにしなければ
 ガッカリさせちゃうって、バカみたいだけど真剣に思ってて」
「うん」
「バレたら友達もみんな背を向けると思っててさ」
「うん」
「それでも『あのじょりぃがそうなのなら、それって悪くないのかも』って
 思ってもらえるかもということに僅かな望みをつないで、
 とにかくすごい人にならなくちゃって思って、勉強でもスポーツでも人より抜きんでるようにがんばってさ」
「うん」
「でも、親に話して、しかも受け入れてくれたので、
 ああ、申し訳ないって思わなくていいんだ、生きてていいんだ、って思えて、
 それからは人生がラクになったんだ」
「いつ話したの?」
「30のときかな?」
「そうだよね。20代のときに会ったときは、両親を憎んでいたように感じたもの(笑)」
「(笑)そうだったのか」

ワタシ、「カムアウトは軽やかに☆」と決心していたのに、ハナから重たい話をナナにぶつけております。
なんていうか、ナナに対しては、そのほうが誠実な態度に思えたのです。
そしてたぶん、ワタシはこの人に、今までのワタシの心の動きみたいなものをきっと話したかったのでしょうね。
陳腐でカッコ悪いんですが「(昔は)つらかったんだ」っていうことも、わかってほしかったんだと思います。
今までいろんなことを隠して話をわかりづらくさせていた分、いっそ伝えるならナナの中ですべてのパズルがカシャカシャとはまって行って欲しかったんだと思います。


「・・・・自分の話をべらべらと話して恥ずかしいけど、まあ、そういうことなんだよ」
「・・・・・・・・」

間が。 間がつらい。
お願い。
何か言って。



「なーーんだ(笑)」



たぶん、この人はこう言ってくれると思っていたんですが。
やっぱりこの一言を聞くまで怖くて、この一言を聞いて、やっと安心しました。
とりあえずじょりぃに一通りしゃべらせてやろう、ということで、ひたすら「うん」「うん」と聞いてくれていたんでしょうね。

「なーんだ、だよね(笑)」
「ていうかさ。  あたし、たぶんそうだろうなと思っていたよ」
「たぶんそうだろうなと思っているだろうなと思っていたよ」<「親友にカムアウト」にありがちな会話展開
「(笑)でも話さないからさ。 そのへんつっこんで聞いちゃいけないのかなと思ってた」
「ワタシは訊かれたら答えるつもりでいたんだけど」
「そうなの?(笑)」
「うん(笑)」
「でも、やっぱりあたしの勘違いかな?って思うこともあって、ハッキリ確信できなかったんだけど」
「ワタシが一生懸命、嘘ついていたからね。これからはキミに嘘つかなくていいかと思うと、本当に嬉しい」
「気が楽になった?」
「うん。すごく」


ホントに、すごくね。
おかげさまで。


「じゃあ、中学の頃から、その子に気持ちがバレたらどうしよう、って思ってたわけ?」

この時点で、既にナナ、「好きな人」を女性に絞ってますが。
ワタシ、その人のことについてはまだなんにも言ってないんですけどねえ。
今までさんざん「好きな男の子」「彼」と言っていたくせに。
現金なもんです。

「ていうより、周りのすべての人に対して『今日はバレるかも』『明日はバレるかも』って、毎日怯えながら生活していたんだ」
「・・・つらそうだ(笑)」


「ねえ、誰かに疑われたことはなかったの? 中学のときとか」とナナ。
「直接言われたことはないよ。 ただ、あなたにほら、理科準備室に呼び出されてさ・・・」
「ああ。 あたしの記憶にない事件ね(笑)」
「うん(笑)。あれが一番ビビったかな」
「あたし、ホントに覚えがないんだけどなー。あんなこと言ったかなぁ」
「夢じゃないよ。言っておくけど(笑)」
「うーーーーん・・・・・。
 あたしねえ、中学高校の頃・・・ていうか、今でもそうなんだけど、
 友達づきあいなんて、うわべだけの楽しいもので十分、て思ってたのね?」
「うん」
「あたしのこと理解してほしいなんて思わなかったし、
 中学の頃なんて、そもそも相手だってそこまで友達のこと思わないしさ」
「うん」
「でもね、じょりぃは違っていたのだよ」
「・・・・・」
「あたしに踏み込んできそうなものを、すごく感じて、イヤだった」

イヤだったそうです。

「そ、そうですか」 スミマセン。
「そのことに対して、警告したかったのかもしれない。とは思う」
「そう」
「だって、家の事情とか絶対に知られたくなかったし、
 とにかくあたしに関わってほしくなかったのよ、誰にも。
 なのに、じょりぃはあたしのことすごく心配してくれて、すごく思いやってくれて、
 おまけにおせっかいでさ」

おせっかいだそうです。

「おせっかいですか」
「(笑)だって、部活さぼってると、迎えに来たりしたじゃん」
「あれは部長に言われて迎えに行ってただけですが」
「まあとにかく、あたしを深く知ろうとしないでほしかったのだよ」
「そういう点では、当時のワタシたちは似ていたのかもしれないね。
 ワタシも、他人がワタシに深入りすることを恐れていたから。知られたくないことがあったからね」

昔をしみじみとしのぶふたりでありました。

が、話は現実の、ワタシができればしらばっくれたい部分へと向かいます。
ナナ、容赦ありません。

「なっちゃんやきょんさんは、じょりぃのそういうこと知っているの?」
「あー、 うん、 まあ」<歯切れ悪し
「じゃあ、今の今までひとりで抱え込んでいたわけじゃなかったんだね? ちょっと安心したよ」
「うん。それはないよ。 それに、ワタシとつきあうことになると、自然にそういうことは相手に知られるわけじゃん?」
「うん」
「そう言う意味でも、本当にひとりぼっち、ということでは全然なかったよ」
「そうか」


「ていうことはさ、じょりぃがつきあった女の子って、みんなやっぱりそうだったわけ?」とナナ。
「それが微妙なところでね。 みんな男性が好きな人ばかりなんだ。
 たまたま、ワタシのことは好きになってくれた、という感じかな」
「女子高の生徒が、カッコイイ先輩にきゃあ☆ってなっちゃうようなもん?」
「(ムッとしつつ)もっと真剣に思い合ってつきあってたけどね」
「そうか。失礼」
「でもさ」
「うん」
「結局、みんな男性を好きになる人だから、いつでもつきあうスタートから、既に別れが前提だったんだよ」
「うん」
「それはさびしかった」
「さびしいね」
「だからなんか、不安なのとさびしいのがイヤなのとでさ、ついふたまたみまたかけちゃったりして」
「ああ。でも楽しそうだなー(笑)」


「で、バレるのが何しろ怖かったからさ」とワタシ。
「うん」
「とにかく『彼氏』という存在はワタシには必要だったのね」
「うん」
「そういうわけで、『男切らしたことなかった』わけだ」
「なるほど」
「今はその必要もなくなったけどね。恥ずかしいコトじゃない、って思えるようになったから」
「じょりぃにとって、男の人って、それだけのための存在?」
「それがそうでもなくて。だから両方ってことなんだけど」
「そうか」


「きょんさんとは、一緒に暮らしてるわけじゃない?」 キタ------!!!!!!
「うん」
「それはさ、   どういうことで?」
「んー・・・・」
「ずっと好きな人っていうのは、きょんさんじゃないんでしょ?」
「違う」
「じょりぃに好きな人がいるっていうのは、きょんさん、知っているの?」
「知らない」
「なんで話さないの?」
「きょんに失礼だから」
「失礼ってことは、・・・・・どういうこと?」
「結婚してるようなもんだからね」<きょんとこのこともあらためてカムアウト
「結婚してるようなもんだから、浮気とかもなしね、ってことになってるの?」
「なってるの?っていうかさ・・・・やっぱりそういうもんでしょ?
 『結婚しようね☆』って言って一緒に暮らし始めたわけではないけど」
「そうか。そうだね」
「うん」
「好きな人が他にいるって、きょんさんが知ったらどうなるの?」
「いい気持ちはしないんじゃないの? 
 前に『もしもさー』って感じでそんな話をしたら『そりゃイヤだろうね』て言われたし」
「そうか。
 ・・・ねえ、あたしとこうしていつも電話したり出かけたりして、それはいやがらないの?」
「うん」
「どうしてかな?」
「のんきだからね、きょんは」
「そうか(笑)。いいね、きょんさん」
「うん」

「でもさ」とナナ。
「うん」
「それってずるくない?(笑)」
「何が?」
「きょんさんがいて、いわば結婚してるような状態で、その上その人のことも好きってことでしょ?」
「ずるいよね。 でも、気持ちは変えられないじゃん」
「うん。 でも、きょんさんにはそのことは言えず、そして生活を続けていくわけか」
「きょんのことも、とっても大切なんだ」
「うん。そうだよね」


「じょりぃとつきあった女の子たちってさ、今はどうしてるの?」
「みんなそれぞれ、結婚してシアワセにしているよ。今でもみんな友達だし」
「ふうん。 その人たちがじょりぃとの関係を漏らすことはないの?」
「ないね。みんな揃って、驚くくらい口が堅くて信頼できる人たちなんだ。いちばん怪しいのはワタシの口です(笑)」
「ははははは」
「結局こうやってカムアウトしちゃうとさ、聞いたほうはどうしたって、あの子とあの子とあの子あたり、
 どうだったんだろ?あやしいよな、とか思っちゃわない?」
「(笑)思っちゃうね」
「だから、ワタシとしてはもう自分に誇りを持てるしカムアウトはいつでも誰でもOKくらいの気持ちなんだけど、
 その子たちのプライバシーのこととか考えると、やはり今まで通りこそこそといろいろ隠しながら生きていっているんだけど」
「そうだね。難しいね」
「うん」


「好きになるタイプとかって、決まってるわけ?」 ナナ、こうなったからにはいろいろ訊きたいらしく。
「? どういうことかな?」
「男の子ならこんなタイプ・・・変なヤツとかさ(笑)。女の子ならこう、とか」
「ワタシなりの好みの基準というのはあるよね」
「あのさ」
「うん」
「男の子についてはそう思わないんだけど、じょりぃ、女の子についてはけっこう見た目に厳しくない?」
「・・・なぜわかる(笑)」
「じょりぃのまわりの人見てても思うし。
 それに、前から思ってたんだけど、きょんさんがちょっと太ってきたとか、
 口開けて寝てる姿がイヤだとか、心底イヤそうに話すからさ」
「うん(笑)」
「あたし、なんでそんなことが気になるんだろう、それって変じゃん?と思っていたわけだ」
「ははははは」
「あのねえ、あたし的に言わせてもらえば、
 例えばきれいな女の子見たりすると『きれいだな』っていう気持ちとともに
 『なんか気に入らない』って思ったりするのよ」

これはきょんもなっちゃんも同じみたいです。

「ふうん」
「で、友達とかがやせた、とかキレイになった、とかも、
 心のどこかで『悔しい』とか『おもしろくない』という思いがあるわけよ(笑)」
「そうなんだーーーーー」 
「逆にこの人太ったとか老けたとか思うとさ、『勝った』とか思ったり」
「そういう感覚はワタシにはないなあ」
「そうなんだよ。 じょりぃ、友達がキレイになった話とか、ホントに嬉しそうにするじゃん?」
「うん。嬉しい」
「単純に、女の人がきれいだと嬉しいみたいじゃん? 友達はルックスで選ぶ、とか言ってるしさ」
「うん」 <最低です
「そのへん、違うなあと、前から思ってたんだー。
 でもじょりぃ、あたしにはうるさいこと言わないよね。寛容だし」
「そうかもね」  どう捉えているのかしらそのへんについて。

同性の美しさに対する嫉妬。
これって、ヘテロ的リトマス試験紙として採用していいように思うのですが。
同性愛傾向が強いほど、単純に「ぽーっ(はあと)」になりそうですものね、美しい女性に接した場合。
いかがなものでしょうね。



もっともっといろんな話をしたのですが。
まあ、おおよそこんなカムアウトでした。

でも、とうとう「で、じゃあ、好きな人は女の子なの?」とか「誰なの?」という話はナナから出ませんでした。

たぶん、もう気づいたと思います。
何度言ったかわからないですねワタシ。
まだまだこの件については断言できませんけど。


そういえば、「その人の、どんなところが好きなの?」ということは訊かれました。

「どんなところって・・・・わからないなぁ」
「わかんないのかよ(笑)」
「ここが好き、とかここが嫌い、とか、そういう問題ではないのだよ」
「嫌いなところはないの?」
「あるんじゃないかな(笑)。嫌いというか、こういうところは困るよな、みたいなさ」
「わっかんないなー」
「理屈じゃないんだよ。
 その人が、たとえばワタシの親兄弟を殺しても、ワタシを殺しても、ワタシはその人が好きなのだよ」
「すごいねそれって」
「困ったものだよ」
「困ったものだね」
「あ、でも。 ビジュアル的にあまりにもぶっさいくになってしまったら、あっさり愛がなくなるかも」
「・・・・・なんだそりゃ(笑)。でもあなたならあり得ますね」



「少しは気が楽になった? 眠れそう?」とナナ。
「うん。すごく気が楽になったよ。キミに嘘つきぱなしだったのが、とにかく辛かったんだ」
「そっか」
「ものすごく重い荷物を降ろしたような感じだ」
「それはよかったね。 ていうか、あたし、気づいてはいたんだけどね」
「ワタシもそれに気づいてはいたんだけどね」 またお互い知ったかぶり合うふたり。


「パパには言わないでね」とワタシ。
「うん。 パパは・・・・・・・・・・・・」しばらく無言。
「パパは?」
「ううん(笑)。 パパには言わないよ」
「ふふふ」
「(苦笑)」

ナナが言いかけてやめた言葉の続きはわかってるんです。
「パパは、そういうことに理解がないから」ということです。
おまけに、ワタシとナナの関係を深読みしはじめて、やっかいなことになりそうです。
だからワタシも「パパには言わないでね」とお願いしたんですけどね。


「あのさ」とワタシ。
「ん?」
「ワタシがものすごくラクになったのはさ、結局親がワタシを受け入れて、
 愛情は変わらないということをきちんとわからせてくれたからなんだと思うんだ」
「うん」
「だからさ、世間一般的に見て、子供達がフツウでないと言われる状態になったとしても、
 ええと、愛し抜いてあげてね。 ワタシに言われるまでもないだろうけど」
「(笑)言われるまでもないね」
「うん。そう思ったんだけどさ」
「でもあたし、『何があっても味方だよ』みたいなことは、けっこう伝えているんだけどな」
「うん。でも、ワタシが親に勝手に心を閉ざしていたときは、そう言って貰っても
 『どうせワタシの本当の姿を知れば、そうも言っていられなくなるくせに』と思ったりして、疑ってかかったからさ」
「(笑)うん」
「要は、子供が追いつめられて、助けて!って必死になって手を伸ばしたときに、
 それをしっかり受け止めてくれればいいんじゃないかなと」
「なるほどね」


「なんかさー、じょりぃの話で気がそがれて、長女のことがちょっと頭から離れちゃったよー(笑)」
「ははははは。ゴメン」
「でも、いいみたい。 あたし、もう少しゆったりいくんだ。またくじけるかもしれないけど」
「うん」
「次女ちゃんと末子のことも、もっとちゃんとかまってやる時間をつくるんだ」
「うん」
「眠れそう?」
「うん」
「長女のことがすっかり落ち着いたら、ゆっくり出かけようよ。旅行に行こ?」
「うん」
「それまでは、あたしきっと出かけても楽しめないんだ」
「うん。きっとすぐに落ち着くよ」
「うん。そしたら泊まりで出かけようね」
「うん」

嬉しい。

カムアウトもしくは告白したら、もしかしたら泊まりで旅行なんて行ってもらえなくなるかも(警戒されて)・・・と危惧していたので、これはとても嬉しかったです。
旅行なんていつになるかさっぱりわからないけど、変わらずワタシと接してくれるみたいです。


自分のことでいっぱいいっぱいだったのに、ワタシの独り舞台的長話につきあってくれてありがとう、ナナ。

やっと、同じ言葉で話ができます。
今までできなかったのは、すべてワタシのせいだったんですけどね。


セクのカムアウトが済んだら、気持ちの告白なんてどーでもいーんじゃないかという気もしてきました。
不思議なものです。
また気が変わるんでしょうけどね。


というわけで。

カムアウトしたら、その先(告白とか、もっとワタシにかまって!とか)を望んでしまうんじゃないか、と心配していたワタシだったのですが、
逆に「セクだけでもわかってもらえてる」という安心感が生まれて、今までよりもゆったりとナナと向かい合えそうな気がしています。
とりあえず「好きな相手は男って決めつけるなようがあああああ!」という、勝手な一人怒りからは解放されますしね。

「わかってもらえないなら、それでいい」という気持ちが強いワタシなのですが、わかってもらえるということの満足感・充足感て、けっこう大きいものなんですね。


憑き物が落ちたような気分で、やさぐれもどうやら解除でございます。
ありがとう、ナナ。


じょりぃ |HomePage