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2009年09月01日(火) 民主党こそ「本当の自民党」だった件

かつて、民主党は「第二社会党」かと思っていたことがあるが、実は民主党こそが「第二自民党」で、
自民党は「第二社会党」であったらしい。
尤も野党に転落した自民党が社会党と同じ末路を辿るかどうかはまだわからない。
しかし、民主党の第二自民党化の方はほぼ間違いがないだろう。
鳩山、小沢、岡田など、党のトップの殆どは旧自民党田中・竹下派の出身である。
そのバラマキ政策は昔の自民党そのものだし、右から左まで幅広い勢力を抱合したファジーなところも
かつての自民党のあり方と同じ。
従って今回の選挙は「自民党から民主党へ」政権が代わったのではなく
「自民党(清和会支配)から昔の自民党(田中派支配)へ」と政権が戻ったというべきであろう。
その象徴が肥大化した小沢グループと言う、民主党に突如復活した「自民党田中軍団」の存在である。

「田中派支配」とは、刑事被告人でもある元首相・田中角栄が選挙とポストで手なづけた子分を
大量に傘下に収め、「一致結束箱弁当」「親分が右と言えば右」をモットーに鉄の規律で党中党を作り、
「数と金の力」で政権を影から操り支配する、と言うものである。
この手法は田中派を簒奪した経世会(竹下、小渕派)にも受け継がれ、1978年の大平正芳内閣から
2001年の森喜朗内閣まで実に23年もの間、自民党政権をほぼ支配した。
この状況を漸く打破したのは、角栄のライバル福田赳夫(清和会)の遺鉢を継いだ小泉純一郎である。
小泉は「自民党をぶっ壊す」と言って総理総裁に就任したが、その内実は長年にわたる「田中派・経世会支配」
の打破にほかならなかった。
事実、その目論見どおり、自民党における田中派・経世会支配は崩壊した。
ところが経世会支配の崩壊と同時に、まさに自民党そのものがぶっ壊れてしまったのが今日の状況である。
しかし自民党が滅びても(?)田中派支配は不滅だった。

かつて小沢一郎が田中角栄を「おやじ」と呼んで慕う、熱烈な「一の子分」であったことはよく知られている。
その後権力闘争に敗れて自民党を追い出された小沢は、16年目にして自民党に復讐を成し遂げ、
民主党内に「田中軍団」復活を遂げた。
自らは表面に決して立とうとしない小沢一郎が100人に及ぶ子分を従え影から政権と党を操ろうする…
このあり方はまさに「田中軍団」そのものである。
つまり「自民党=田中的なもの」が自民党から民主党へ移ったに過ぎないのである。
であるならば、民主党政権の正体も自ずと見えてくるというものだろう。

さてこの田中的な支配、つまり「権力の二重構造」が問題をはらんでいることは言うまでもない。
鳩山政権がやがて経済、外交、政策のあらゆる面で馬脚を現し行き詰ることは必定だが、
それに連動するのは党内の「小沢対反小沢」の対立構造であろう。
かつての自民党における「田中対反田中」の再現である。
喩えるならば、さしずめ

小沢=田中、鳩山=大平または鈴木善幸、菅=三木、岡田=福田、前原=中曽根、
山岡(小沢の忠臣)=二階堂(田中の忠臣)、小沢チルドレン=かつての小沢自身

と言ったところか(菅と前原は逆かもしれない)
まさに「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として二度目は茶番として」(マルクス)だが、
尤も、党内抗争が直に民主党政権崩壊に繋がるかと言えば、必ずしもそうではない。
かつての8会派寄せ集めの細川政権当時と違い、曲がりなりにも今の民主党はひとつの政党であり、
更に政権がその接着剤となっている。
つまり、たとえどんなに「田中対反田中」の派閥抗争が激化しても決して崩壊しなかった、
昔の自民党政権と同じである。
従って民主党政権は党内でゴタゴタしながらも、次の選挙までは継続するだろう。
ただし、中選挙区時代の自民党政権と異なり、小選挙区制の下では、
不人気の政権があっと言う間に崩壊することは今回の自民党惨敗の例で明らかである。
一方で、肝心の次の政権の受け皿になるのが自民党なのか、そうでないのかも現時点では不明である。
そこで最後に自民党の見通しについても触れておこう。

民主党が権力闘争で疲弊する「第二自民党」化するのと同時に、
野党に転落した自民党もまた党内抗争で自滅する「第二社会党」化する可能性はより大きい。
万年野党第一党だった社会党は、党近代化の遅れによる党基盤の弱さと言う欠点を尻目に、
埒もない浮世離れしたイデオロギー論争に終始しているうちにやがて自滅した。
自民党もまた、かつての良くも悪くもファジーな国民政党と言う柔軟性を失い、
やれ真の保守主義だ、或いは構造改革路線だなどと、矮小なイデオロギー論争に陥りつつある傾向が
見えている。これは誤りである。
「政権奪還」を焦り、「与党との違い」「対立軸」を掲げることに拙速過ぎると、却って党の弱体化・分裂を招く。
おそらく今後の自民党は、安倍晋三あたりを中心に右寄りのイデオロギー政党へと尖鋭化することが懸念されるが、
それでは支持者の間口を狭め、単に先細りするしかない。
再び政権を目指すなら、それだけは行ってはならない道である。
はっきり言って野党の最良の戦略とは「与党が失敗して政権が転がり込むのをじっと待つ」ことしかないからだ。
政権交代が起きるのは、別に「野党が魅力的だから」ではなく、単に「与党が不人気だから」なのは、
今回の選挙でもはっきりしている。
なので、何も野党の方から「与党との違いを際立たせる」政策などを先に打ち出す必要はない。
それは最低の下策である。
与党が失敗したら、その時にそれと反対のことを言い出せばいいだけなのだ。
これが今回の選挙における「民主党の成功」から学ぶべき唯一の教訓であろう。
最大の問題は、それまで自民党は「待てる」のか、そして自民党が「持つ」のか、と言うことだけである。


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