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2003年03月22日(土) 「戦争反対」には賛成できない

ひとくちに「戦争反対」と言っても、実際には様々な異なったレベルが考えられる。
概ねそれは、次のように分けられるだろう。

1.戦争そのものに反対
2.アメリカの戦争には反対
3.今回の戦争には反対

しかしこの3つに対して、私はいずれも同意できない。ゆえに「戦争反対」には賛成
しない。以下、その理由を順に書く。

1.戦争そのものに反対

「戦争では多数の罪のない市民が犠牲になる」からという理由で、あらゆる戦争
そのものに反対、というのは、一番素朴な、それゆえに受け入れ易い反戦平和論であ
ろう。
今回反戦と言っている人々も、表向きはこの理屈で騒いでいる場合が多い。
しかし実は、これが全く論外である事は、すぐわかる。
なぜなら、戦争そのものに反対なら、他国からの侵略に対して戦うのも反対というこ
とになる。
さらに、独裁政治への抵抗戦争、歴史上数限りない植民地からの独立戦争、等々、
すべての戦いは否定されなければならなくなるのである。
「犠牲者を出すべきではない」のならば、侵略されてもどんな独裁支配をされても、
唯々諾々として従い、果ては殺されるべきであって、応戦して死ぬ事だけが間違いな
のだろうか。
そんな馬鹿な話はあるまい。それゆえ、あらゆる戦争そのものに私は反対ではない。

もっとも、社民党のエセ平和主義者などは実際、「犠牲者を出さないために」日本が
侵略されても戦わないと称している。
だったら、例えば荒畑寒村のいうように「日本の侵略に抵抗した中国の人民は大
馬鹿者」だったと批判するべきだろう。また、何より、今アメリカの攻撃に応戦して
いるイラクこそ批判されなければならい。武装解除しないフセインに平和憲法の精神
とやらを説くべきだろう。
しかし勿論そんな話は聞いた事がない。聞えてくるのはアメリカ非難ばかりだ。
つまり「罪のない人々が犠牲になる」からあらゆる戦争反対なのではなくて、
特定の国による、特定の戦争によって「罪のない人々が犠牲になる」事にのみ反対な
ご都合主義なのである。
従って今回の場合も、たんに「アメリカの戦争」だから反対しているに過ぎない。


2.アメリカの戦争には反対

内戦や紛争、武力衝突、そしてテロによる犠牲は世界中至るところで常に起こり続け
ている。
また、戦争でなくても独裁者の恐怖政治によって、長期にわたって「罪もない市民」
が殺戮され、犠牲になり続けている事は、現にイラクで見ての通りである。
ところが、なにゆえにか「アメリカによる武力行使」という時だけ脊髄反射のように
猛烈な非難を始め、反戦平和を唱え出す。
これはただのご都合主義者というのを超えて、もはや偽善者だろう。
要するに、超大国のアメリカだから気に食わないという、理屈にもならない反米感情
論である。
何しろ、一昨年のニューヨークの同時多発テロの際には、リビアのカダフィですらも
哀悼の意を表しているさなかに、「ざまーみろっと思っている人だっている」と言い
放った日本の国会議員もいたほどだ。こういうのは、反米小児病患者という。

なるほどたしかにアメリカは超大国だし、そして強者の行いが別に正しいわけではな
い。が、逆に強者だから常に悪であるというのは、「強者の善」をただ裏返しただけであ
り、それはニーチェの喝破した通り、歪んだルサンチマンに過ぎない。
アメリカに比べればイラクは弱小国かもしれないが、弱小であろうがなかろうが、
生物化学兵器を所有した独裁者が支配している国と、民主的手続きで指導者を選んだり
辞めさせたりできる国のどちらがましかを比較するも愚かな事だ。

また、アメリカの戦争は、たとえどんな大儀名分の美名に隠れても所詮は常に自国の
利益に基いたものだから許せないという意見がある。
例えば今回の攻撃は、その背後に石油利権がからんでいるなどと、もっともらしく言
う人がいる。それは確かにそうかもしれない。だが、もし石油利権がからんでいるから戦争を
するのであれば、同じく石油利権がからんでいるロシアやフランスが反対するのはなぜなのか。
一方でフランスやロシアは、武器輸出では世界有数であり、フランスなどは過去には散々っぱら
イラクには武器を売りつけて来たのである。
つまり、自国の利益で都合のよい時だけ正義を塗色しているは、どこも同じである。
日本がアメリカの世界戦略のおこぼれを頂戴しながら戦後の経済繁栄にうつつをぬかして
来た事実を棚上げして、のうのうとアメリカを非難できる倫理的立場というのは一体、
何なのだろうと思わざるをえない。


3.今回の戦争には反対

戦争そのものは必ずしも否定しないし、また、アメリカの武力行使にも絶対反対とい
うわけではないが、ただ今回に関しては、仏ロ中を始め多くの国が反対し、国連
決議を経ずして米英単独で行っているので反対、という意見。
国際社会の合意のもと、国連中心でやるべきだというもので、民主党や自由党の立場
はこれに近い。
原則論としては、私も同意である。だが実態はどうか。

12年前、クウェートに侵攻したイラクは侵略者として国際社会から断罪され、
国連決議に基き多国籍軍が出撃、イラクをクウェート領内から押し戻した。
この時の合意で、イラクは大量破壊兵器を破棄する事を国際社会に約束したのであ
る。
にもかかわらずそれを反古にし続け、国連決議を無視して今日に至っているのだが、
それに対して国連はなすすべもなかった。つまり国連などはとうに機能していないのである。
イラクが侵略国家であり、かつまた今も大量破壊兵器を保持し、そしてテロを行う
危険性の高い国家であることは確かなことであり、それを武装解除する事は必要である。
ゆえに私は今回の戦争に反対ではない。


附.日本政府の姿勢に反対

ついでながらもうひとつ、戦争についての判断は留保するものの、
ただ、日本政府のアメリカの武力行使支持に反対、という姑息な立場もあり得る。
アメリカ国民ではないのでアメリカの行う戦争に反対しても仕方がないが、
ただ日本が戦争を支持するのは避けたいし、
それに何といっても、小泉首相が世論調査の結果に背いて支持を決めたのは、
世論の人気で総理になった人だけにいただけない、というもの。
しかし日本国では別に、世論調査で首相を選んでいるわけではない。
小泉氏は第1党である自民党総裁として国会で首班指名されている。
つまり自民党政権なのである。また、その自民党は日米同盟・対米協調主義を
50年外交基本政策に掲げ続けているのだが、それを50年政権に選んでいるのは日本国民。
非同盟・中立主義を称した万年野党第1党などは藻屑の如く消え去ってしまった。
一国の外交方針をその時々の世論調査の結果で変えたら、それこそポピュリズムだろう。
勿論、日本の外交の柱は国連中心主義だが、その国連が事実上分裂しているのだから、
国連中心もなにもない。
また、国の外交方針変えるのなら、それは民主主義のルールに従って、次の選挙で決めればいい。
自民党政権が民意に反し、かつ、国益を損なったのなら野党が必ず勝つのだろう。
私も政権交代には大賛成なので、結果を楽しみにしている。


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