日常些細事
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引越し先を捜して『なんなら不動産(仮名)』に行く。 条件は倉敷市の中心部で2DK以上、家賃は駐車場込み5万円程度、である。 1件紹介してもらい、部屋を見に行くことにした。 社用車で案内してくれたのは営業部の深田恭子さん(仮名・20歳)。入社してまだ2ヶ月の新人さんである。愛嬌のある可愛らしいお嬢さんであった。 ところがこの深田さん、運転を始めてわかったのだが物凄い方向音痴なのだ。 店から3キロと離れていないはずの物件なのになかなかたどり着けない。 「あ。すいませーん。道まちがえちゃいました」 最初は明るく笑って取り繕っていたものの、それが4度5度と重なるにつれて次第に無口になり、最後は無言のまま泣きそうな表情でハンドルを握っていた。 「あのー。無理に行かなくてもいいですから」 気の毒になってそう言うと、 「いえ。だいじょうぶです。だいじょうぶです」 必死の形相で運転しながら深田さんが答える。 店を出ておよそ30分の後。 「着きましたあ!」 深田さんの実に嬉しそうな声。 ついに車は目的のコーポに到着した。 私は思わず拍手をしてしまった。
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