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下地。日本の近代史〜亀裂のない油絵がほとんどないなんて         2004年06月21日(月)

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カップ カップ カップ

この地は描きづらい。
油彩層がテカリ過ぎる。テンペラ層が剥がれる。
と思ったら、油彩層もヤスリがけで簡単に削れる。
形を気にしすぎて色はなくなり黒くなる。

失敗の原因は、エスキースを取らなかったこと、
テンペラで下地がとれる地を選ばなかったこと、
安直に始めて、完成図が見えてこないこと。

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下地の研究。
和蘭画房(オランダガボウ)にて、基底材のビデオを買う。
まだ全部見切れてないけれど、
活字と写真ではなく、ビデオで見るとわかりやすい。

基底材についていろいろ調べる。
ベルギー産のクレサンキャンバス販売のサイトを熟読する。
>>テオ画材舗 クレサンキャンバスとブロックス油絵具

吉村絵美留(著)『修復家だけが知る名画の真実』、
ホルベイン工業技術部編『絵具の事典』中央公論美術出版
を読む。本のリストは西洋絵画の画材と技法サイトから。

ホームページの画像を整理している。
下地が何か、描きだしは何かを、
画像を見ることで思い出している。

キャンバスペーパーがあまりに使いやすいので、
それは何故かと考えていたら、
どうやら「布目」にあるらしい。
今まで板絵を意識して、ツルツルにした地ばかり作っていたが、
やっぱり油彩はキャンバスの目に
ひっかけるように描くのが描きやすい。
荒目キャンバスを買ってきて、裏返す。
目止めに膠ではなく、アクリルメディウムのグロスメディウムを使う。
処方箋は、ホルベインのアクリルパンフレット。
ホルベインのオイルやアクリルメディウムのパンフは
ものすごくわかりやすい。必読。

リキテックス、ホルベイン、クサカベ油彩用ジェッソを
それぞれ試す。
クサカベ油彩用はエマルジョン地?つやがある。
リキテックスジェッソはビニル質が強く少し黄色っぽい?
ホルベインジェッソは青味がかかってる?
カタログと処方箋もあることだし、
なんとなくホルベインジェッソが一番うまく行きそうな気がする。
昔、ホルベインのカラージェッソで黒が気に入ってたっけ。
質感が少し違う。

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先週の話だが、「再考:近代日本の絵画 美意識の形成と展開」
と、オノヨーコ展を見た。
近代〜の方はあまりにも感銘を受けて語りきれないけれど、
要は経年ではなく、時代の風潮で絵の具の使い方が異なり、
大正〜昭和のものは特にもろく、
ヨーロッパの美術館収蔵作品とは比べられない、
信じられないくらいの亀裂・その他の破損がひどい。

新聞紙をコラージュしている作品が昭和38年頃作品であったけれど、
新聞紙は黄ばんでいるもののさほど損傷なし、
その周りの油彩が亀裂しまくっている。
新聞紙よりも持たない油彩画面なんて。

例えば作品が作者よりも長く生きながらえるかは、
ひとえに、後世の人達の作品を残そうとする努力。
修復の本を読んでの第一の感想がそれだった。

しかし努力しても哀しい残骸になるとしたら悪いなぁ。

絵画作品は高価だ。でも、制作者は表現は一生懸命でも
材料の扱いに関しては無関心なことが多い。
ガラスケースに入って、ほとんどの絵の具層が剥がれ落ちた作品がある。
これはどういうことで、何故ここ美術館に収蔵されているのか。
ン万出してせっかく買った絵画が、数10年でひび割れ剥離損傷したら、
これはやっぱりマズイよね!!

by HPY


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