さて、甲児くんのお友達のボスも、自分専用のロボットが欲しいと思うようになってきました。 マジンガーZと兜甲児は唯一無二のメカとバイロット。代替えが効かないゆえ、半死半生の重傷を追っても悠長に寝てられず、包帯をひきずって這ってでも出撃しなければならないのです。 イメージ的には、兜甲児というと、仲間意識が強く、俺達仲間じゃないかと友情の押し売りと大安売りをしそうな感じですが、ところがどっこい、戦闘に関していえばさにあらず、仲間意識は薄くて、いつもひとりで戦っている人なのです。 光子力研究所を守れるのは自分だけと思っている節があって、一人で全部背負い込んでいて、一人で戦っている感じ。近頃は特にその傾向が強い。 それゆえ、傲慢な印象も与えるわけですが、この人って、あの明るさに騙されそうになりますけれど、本当は一人で全部背負っている人じゃないですかね?何も背負っていない代表格のように言われることがありますが、それって、ちょっと違いません? ここのところは自分が研究所を守らなきゃ、自分がしっかりしなきゃと、気負いが強くってちょっと痛々しい感じです。おかげでイタイ言動もチラチラ目立つように。 たしかに研究所を守れるのは自分だけというのは間違いではなくて、事実上、研究所を守れるのは甲児だけ。弓先生は甲児くんに頼りきり、シローやさやかさんや3博士は繰り返し人質になるしで、自分がしかりしなきゃと背伸びして、結構無理しているんだろうな。 そりゃ、無茶もするだろうさ。一人で守っているんだから、無茶しなきゃ守りきれないだろ。一応アフロダイAもいますが、補佐しているとはいいがたく、Zが出動しなきゃ、話になりません。 甲児くん、最初のころあった金持ちの余裕みたいなものもなくなってきて、アウトローな雰囲気になってきましたね。それゆえZに時代の甲児は背筋伸ばして、格好いいわけですな。 さて、そんなそっけない甲児くんに対して、むしろ仲間意識が強いのはボスでした。 一人で全部を気負って戦っている甲児くんの背中を見て、自分も手を貸したいという気持ちが半分、羨ましいと思う気持ちが半分で、専用ロボットを持ちたいと願うようになります。 先生、俺にもロボット作ってくれよと頼むボス。しかし、マジンガーZの補修強化で忙しい光子力研究所の人々は、ボスにかまっている余裕はありませんでした。 けれどもボスはあきらめきれません。 3博士を誘拐して強引に作られせるという強硬手段にでます。 部下のヌケとムチャをつれて研究所に覆面をして潜入するボス。 甲児くんは高性能な光子銃を腰にさげいますが、平民のボスにはそんなものはありません。おもちゃの銃で代用です。 そして誘拐に成功したボスは、自分の家であるスクラップ工場に連れてきて、これを作るんだと、自作のロボット設計図を取り出しました。 甲児くんはお祖父さんが世界的ロボット工学の博士でしたが、ボスの家は町のしがないスクラップ工場なのです。巨大ロボットの設計などできる人は身内に誰もおりいません。自分で図面を引かなければならないボス。 兜家の血筋で天性のメカニックセンスを持つ甲児くんと違って、ボスはメカは苦手でした。けれど、ロボットに乗りたい一心で線を引きます。 さらに、大金持ちの甲児くんと違って、庶民のボスには、ロボットを作る資材を調達する資金はありませんでした。夢の新素材超合金Zなど、夢のまた夢。ああ、兜甲児のマジンガーZとの差は広がるばかり。 彼にあるのはスクラップだけ。廃材を利用して作るしかありません。 とりあえず、スクラップだけはたくさんあるので、それを利用して作るよう命じます。 こうして完成したのがボスのロボットこと、ボロットです。 ううう、3博士、あいかわらずいい人ですね。 ボスのために、ロボットを作ってあげるなんて、なんていい人達なんでしょう。 そして、甲児くんのマジンガーZとの差が大きすぎるのが、また泣けてくる。 自分のロボットができて喜ぶボス。 廃材でできたボロボロのロボットなのに、喜んで乗るボス。 一所懸命操縦して、機械獣と戦おうと意気込むボス。 抜群の運動神経を持つ甲児くんと違って、操縦に苦労するけれど、がんばるボス。 格納庫はバラックだけど、そんなことは気にしないで満足気味のボス。 駄目だ、泣きそうになった。 ボスがいい奴すぎて泣けてくる・・・。甲児くんは本当いい友達もったよ。大事にしろよな。 そして、甲児くんはボロボロのボロットを、金持らしい悪意のない無邪気さで、馬鹿にして笑うのでした。 この、金持ちのボンボンが!(怒) 暗黒大将軍!早く出てきて、こいつのロボットを、めっためったにやっつけてやってくださいッ! いいですか、甲児くん、あなたも続編になったら、自分のメカは牧場の小屋に置かれるようになるのですよ? 牧場の小屋ですよ、牛や馬と同じ扱いなのですよ、家畜扱いなのですよ? マジンガーZといえば、誰もがプールが割れて中からロボットがせり上がってくるあの有名な格納庫を思い出すでしょう。あれは前田建設ファンタジー営業部 ⇒http://www.maeda.co.jp/fantasy/project01/01.html によれば、現在の技術で作ると72億円かかる代物だそうですが、そんな立派な格納庫にしまってもらえるのも、親の遺産がある今のうちだけですからね! あなたも続編になれば、主役を筆頭に研究所の人から、そんなメカじゃ無理無理とさんざん馬鹿にされ、客員研究員なのに、牧場で馬の世話の手伝いさせられ、荷物持ちをさせられ、アッシーをさせられ、あごでこき使われる身分に転落するんですよ。 今、あなたがボスを馬鹿にして笑った言葉を、そっくりそのまま浴びせられるのですよ。 今はどれほど破損しようとも、知の殿堂光子力研究所の知恵袋たちが総出で修理してくれるでしょう。パワーアップのためには、世界的権威の博士が手を貸してくれるでしょう。けれど、覚えておきなさい、兜甲児よ、もう誰も、手を貸してくれなくなるのですよ。自分で設計して、自分で建造して、自分でテストパイロットもこなして、そうして苦労して作ったメカはむざんにも処女飛行のその日に打ち落とされるのですよ。 ああ、この恵まれすぎた鉄(くろがね)の城の住人は、やがて訪れる遺産を失う日のことを知らないのでした。 兜甲児という人は、当時一世を風靡していた仮面ライダーやデビルマンのような変身ヒーローとは異なり、スーパーロボットに乗ってはいるけれど、パイルダーを降りれば普通の人、ロボットから降りれば普通の人、つまりは視聴者に近い身近なヒーローということで登場するわけですが、果たして、この大金持ちで高名な学者の孫で運動神経抜群でズバ抜けて頭がよく、精錬な2枚目な少年を普通といっていいのでしょうか?
|