ネタ帳

コノハナ【MAILHOME

カップラーメン先生
2005年01月30日(日)

<テンプレ>
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翌日何の気もなく教場へはいると、黒板一杯ぐらいな大きな字で、天麩羅先生とかいてある。おれの顔を見てみんなわあと笑った。おれは馬鹿馬鹿しいから、天麩羅を食っちゃ可笑しいかと聞いた。すると生徒の一人が、しかし四杯は過ぎるぞな、もし、と云った。四杯食おうが五杯食おうがおれの銭でおれが食うのに文句があるもんかと、さっさと講義を済まして控所へ帰って来た。十分立って次の教場へ出ると一つ天麩羅四杯なり。但し笑うべからず。と黒板にかいてある。さっきは別に腹も立たなかったが今度は癪に障った。冗談も度を過ごせばいたずらだ。焼餅の黒焦のようなもので誰も賞め手はない。田舎者はこの呼吸が分からないからどこまで押して行っても構わないと云う了見だろう。一時間あるくと見物する町もないような狭い都に住んで、外に何にも芸がないから、天麩羅事件を日露戦争のように触れちらかすんだろう。憐れな奴等だ。小供の時から、こんなに教育されるから、いやにひねっこびた、植木鉢の楓みたような小人が出来るんだ。無邪気ならいっしょに笑ってもいいが、こりゃなんだ。小供の癖に乙に毒気を持ってる。おれはだまって、天麩羅を消して、こんないたずらが面白いか、卑怯な冗談だ。君等は卑怯と云う意味を知ってるか、と云ったら、自分がした事を笑われて怒るのが卑怯じゃろうがな、もしと答えた奴がある。やな奴だ。わざわざ東京から、こんな奴を教えに来たのかと思ったら情なくなった。

『坊ちゃん』夏目漱石より
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<自分で作ってみた>
翌日何の気もなくブリーフィングルームへはいると、黒板一杯ぐらいな大きな字で、カップラーメン先生とかいてある。
おれの顔を見てみんなわあと笑った。おれは馬鹿馬鹿しいから、カップラーメンを食っちゃ可笑しいかと聞いた。
すると傭兵の一人が、しかし四杯は過ぎるぞな、もし、と云った。四杯食おうが五杯食おうが俺の金で俺が食うのに文句があるもんかと、さっさと飛行ブリーフィングを済ましてバンカーへ帰って来た。
十分で戦闘を済ませて、次のブリーフィングへ出ると一つカップラーメン四杯なり。但し笑うべからず。と黒板にかいてある。
さっきは別に腹も立たなかったが今度は癪に障った。冗談も度を過ごせばいたずらだ。
マッコイから20ドルで買ったミサイルのようなもので誰も賞め手はない。外人部隊はこの呼吸が分からないからどこまで押して行っても構わないと云う了見だろう。一時間飛ぶと見物する町もないような狭い基地に住んで、外に何にも芸がないから、カップラーメン事件を米ソ冷戦のように触れちらかすんだろう。
憐れな奴等だ。紙切れ一枚で、こんな教育されるから、いやにひねっこびた、砂を噛んだエンジンみたいな人間が出来るんだ。無邪気ならいっしょに笑ってもいいが、こりゃなんだ。兵隊の癖に乙に毒気を持ってる。
おれはだまって、カップラーメンを消して、こんないたずらが面白いか、卑怯な冗談だ。お前等は卑怯と云う意味を知ってるか、と云ったら、カップラーメンで食費削って金貯めて笑われて怒るのが卑怯じゃろうがな、もしと答えた奴がある。やな奴だ。わざわざ東京から、こんな所に戦争しに来たのかと思ったら情なくなった。
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駄目だ、む、難しい・・・。オチがないヨ。
反骨精神あふれる一本気の江戸っ子のシンじゃなくって、偏屈で気鬱なシンになっちまった。でもカップラーメンのころのシンって、こんな感じっていえばこんな感じですが。

オタ女のアイドル漱石先生ですが、漱石センセの話は濃厚な友情関係が続出して、その道の通にはタマリマセンネ。
あたし、夏目センセの文体というか口調好き。センセの文体はときどき凄く色っぽくて頬が紅くなる。ついでにあの妙な当て字も好き。
正岡子規との書簡なんて、君がいなくなっちゃて寂しいから睾丸を握りながら、君のことを思っています、それまではアヂュー、など、い、今なんていったーッ?!という内容が超絶技巧漢文を駆使した文体で書かれていていて、読んでいて脳貧血を起こします。握り睾丸ですよ、握り睾丸。
文豪から入っちまうと、ライトノベルなんてぬるくて読んでられません。ヤングアダルト?BL?ハア?そんまもんに天下のくしゃみセンセは負けてはいません。『それから』なんて凄いですよ。超絶技巧漢文と英語の翻訳文みたいな理屈臭い日本語の応酬に失禁ものですぜ。つゆだくつゆだく。本当、ナナメ読みするのに最高のテキストですね!夏目先生は。国の誇りです。私は夏目センセの本を読むたびに日本に生まれてよかったなと思います。つうか真面目に読んでいると夏目漱石は偏屈気鬱で胃潰瘍おこすって。

新札の樋口一葉はくせのある文体のため、読むにはそれなりに古文慣れしていないとちょっと苦しく、最もメジャーな『たけくらべ』ですら吉原の話なので、ある程度の年齢になっていないと意味が理解出来ないなど、名前のわりに実際読んでいる人は少ないのではないかと思うのですが、その点我らが夏目センセは、高校生ぐらいになれば誰でも手に取れて善いですね。

漱石は生まれてすぐ、里子に預けられちゃって、その養父が破産してまた生家に戻っており、これが人格形成や作品に影響をもたらすわけなのですが、財布の中から消えていく千円札を見るにつけ、山岸凉子センセあたりに夏目漱石×正岡子規で漫画にしてもらいと、そんなことを思う今日このごろです。



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