さあ、悪魔ども、この質問に答えてみろ! Q1.風間真と海音寺八兵衛の血縁関係は? A.父子 B.叔父と甥 C.祖父と孫 Q2. 風間真と海音寺美鈴の血縁関係は? A.兄妹 B.いとこ C.またいとこ Q3.海音寺八兵衛と風間真の実母の血縁関係は? A.兄妹 B.父娘 C.祖父と孫 Q4.風間真の実父と実母は誰? A.風間英人・風間(海音寺)祥子 B.風間英人・名無しのロシア人との混血児 C.名無しのロシア人との混血児・風間(海音寺)祥子 Q5.神崎悟の実父は誰? A.風間英人 B.海音寺八兵衛 C.名無しのロシア人との混血児 Q6.風間(海音寺)祥子を殺害したのは? A.風間英人 B.海音寺八兵衛 C.神崎悟の実母 わ、わからん・・・。あの二人の血縁関係って、複雑で一度じゃ頭にはいらねぇ。 <解説> ▼風間真 孤児院出身のいわゆる捨て子。混血児らしいが両親のことは一切不明。混血児であるために、いわれのない差別も受けたことがあったようである。 自力で学費を稼ぎ、苦学して大手航空会社のパイロットの職を得る。が、友の裏切りにあり外人部隊に放りこまたのは、すでによく知られたところである。 どうやら金に不自由していたのは何も外人部隊に入ってからのことではなく、普段からのことだったようだ。 そんな天涯孤独の風間真の正体は、元内閣総理大臣・風間英人の次男。さらに母は政界の黒幕・海音寺八兵衛の愛娘。つまり父が総理大臣で、祖父が政界の黒幕(しかも財閥に肩を並べる資産家)という超お坊ちゃまだったのである。スーパーセレブな坊ちゃま風間真。 ただし、総理大臣のご令息といっても、実際のところは血はつながってはいない。母の不義によって出来た子なので、実父は風間元総理ではなくロシア人の混血児らしい。したがって、真はロシア人とのクォーターということになる。実父についてそれ以上のはっきりしたことはわからない。 真が生まれたのは風間が総理に就任した年であった。 しかし、この生後間もない総理の次男は、突如何者かに連れ去られてしまう。 現役総理大臣のご子息誘拐という大事件に、世間は揺れに揺れ、マスコミは騒然とし、警察はもてる限りの力を上げて調査を進めたと思うのだが、どういうわけだがこの子息の行方はようと知れなかった。その日、都内の孤児院で行方不明になったのと同じ月例の乳児が捨てられているのが保護されているのにもかかわらずにである。 孤児院の方では、当然保護した捨て子の届出をし、各種手続きをしたと思うのだが、不思議なことに、この捨て子と行方不明の乳児は結び付けられることはなかった。 さらに、コート、ストッキングという遺留品が多いのにもかかわらず、神崎実母もまた捜査線上にあがってくることはなかったのである。 そして、この捨て子は “風間真”と名づけられたわけだが、身一つで捨てられていたのに、何で本名がわかるか?とこれまた奇妙なことである。 もしかしたら、もの凄い偶然で同姓同名だったのかもしれない。あるいは、“風間真です。よろしく”とういう手書きのメモが残されていたのかもしれない。はたまたことの真相を知る政界の裏からのさしがねで金を握らされた院長が、一役噛んでいるのかもしれない。いや案外総理大臣の赤ちゃんが行方不明になっちゃったから、あなたの名前はそれと同じにしましょうねというワイドショー好きの院長先生の趣味で決まったのかもしれない、等々、命名にまつわる諸説は今日に至るまで数え切れない。 先に話を進めるため、ここではその諸説はおいておくが(これに関しては社会派推理作家・竹本清張による「風間事件」に詳しい。もちろん嘘)とにもかくも、夫人のもとに幼子は戻ることはなかったのである。 こうして風間真と名づけられた乳児は、孤児として育てられることとなった。波乱に満ちた人生の幕切れである。彼の壮絶人生は、なにも契約書にサインをしたときに始まったのではなく、この世に生を受けたときから、すでに始まっていたのである。 しかし、この事件はこれだけでは終わらなかった。 子どもを失い心身に支障をきたした妻のため風間元総理は別荘を買い与えるのだが、その別荘にて、風間夫妻は謎の転落死を遂げるのである。 元総理夫妻の謎の死。他殺説、自殺説、事故説、政界の陰謀説、謀国の謀殺説・・・捜査は二転三転し、困難を極めた。 そして不可解な点が多すぎるこの事件は、渦中の人物風間英人の謎の死が決定打となり、真相は解明されることがなく、藪の中におかれた。なお、不思議なことに、このときも、事件現場のすぐ近くで、風間元総理のかつての妻が息子と無理心中して事故死しているのだが、この事件との関連は取り上げられることはなかった。 こうして現役総理大臣子息失踪事件は迷宮入りし、下山事件、木星号事件、3億円事件とならぶ、戦後の未解決ファイルとして殿堂入りした。この日本中を震撼させた「風間事件」への人々の興味は今も尽きることはなく、今日に至るまでさまざまなミステリー小説・漫画・映画の題材として、繰り返し取り上げられている。そしてその代表作がエリア88なのである。 ▼神崎悟 風間英人元総理の長男。風間元総理は、生涯3回結婚しているが、神崎悟は2番目の夫人の子ども。3番目の夫人の子どもが風間真。神崎というのは母の旧姓。 4歳のとき、両親の離婚が成立し父とは別離。母に引き取られるが、母は無理心中をはかり死去。本人のみが生き残る。母亡き後は、孤児院にて育つ。 真とは戸籍上の異母兄弟。ただし、実際のところ、真は不義の子なので、風間の血を引いておらず、神崎悟との血のつながりはない。 父は元総理、母は名門神崎家、神崎悟もまたハイソな出身であった。 しかし、そんなお坊ちゃまも、母亡き後は、金で苦労したらしく、学費をまかなうのも大変だったらしい。 神崎は母を捨てた男を長い間探していたようだが、真と違い身元がはっきりしているのだから、市役所の戸籍課にいって、自分の戸籍を調べれば相手の男が誰か一発でわかりそうなのに、何故か神崎はそれをしない。300円も払えばすぐにわかりそうなのに、何故か神崎はそれを行おうとはしなかった。おそらく大和航空入社のため、戸籍取り寄せたときに、偶然自分の父が誰なのかわかったのだろう。もしかしたらその金も払えないぐらい神崎は貧乏だったのかもしれない。はたして本当に神崎家は名門だったのだろうか?本当は神崎母は身寄りのないただの山だしの女中だったんじゃないのか?名門だったら、何故母の死後、誰も引き取り手が現れず、父の名もわからないのだろう? その後、神崎は大金を使って詳細な調査を依頼する。貧しい彼にとって、その金はさぞ苦しかったに違いない。 そして世界に誇る日本の警察の必死の捜査にもかかわらず、解決をみなかった「風間事件」が、一介の調査屋と神崎悟の手によって、一つの答え形をみたのは、まさにこの時であった。 こんなことを書いていると、外人部隊の話なんてどうでもよくなるぐらい、この生い立ちだけで、ドラマがあるな。
|