銀英伝のOVAを全部見終わったら、(いつ終わるんだ、全然終わる気配がないゾ)田中芳樹氏の原作も読みたいと思っている。 なので、どんな版が出ているか調べてみたら、これがいろんな版があって、どれを買ったらよいかわからず迷ってしまった。一番最近刊行されたのは徳間デュアル文庫のようだけれど、これは表紙がティーンズ向けのライトノベルといった軽い感じで、中高生にはとっつき易くていいかもしれないが、その対象からは外れる自分にはファンシーすぎてちょっと購買意欲が沸かない。しかし、内容的にはこれが一番良さそうだ。どうやらこれが修筆されたファイナルバージョンみたいだし、作者インタビューも掲載されているし、外伝も洩れなく網羅しているみたいだし、中身は充実しているらしい。 けど、この装丁が少々好みでないところが残念である。銀英伝はもちっとクラシックな装丁の本がほしいのだ。別にカイザーが読んでいそうな豪奢な銀色の愛蔵版ほどは要求しないけれど。 私はどちらかというと選民意識が強く名作とか名門という言葉に弱い化石人間で、オーソドックスなものを好み、前衛的で当世風なものをよしとしない気風がある。そのため、なんとなく文庫も岩波とか新潮がオタヒエラルキーの頂点のような気がしてわけもなくそれらのものを高く評価する傾向が強い。その逆にライトノベルは不条理に軽視するきらいがある。ライトノベルと聞くだけで、中身も見ないで、名前だけで視聴を切ってしまったりもする。 それゆえ、富士○書房ファンタジ○文庫とか角○ス○ーカー文庫とか徳○デュ○ル文庫とかはオタカースト制度の底辺層と一方的に決めてかかっているふしがある。よくない傾向だ。 しかしWEB上で画像だけを見ている状態ではよくわからないし、ここであれこれいっても埒が明かないので、実際に現物をみて、それを買うに値するか値しないか見極めることにした。全巻揃えるとなると30冊にものぼるし、いくら文庫とはいえ金額もそれなりになるので、下見をしておいても無駄にはなるまい。 そこで早速アニメイトいってみることにした。下見のためにアニメイトにいっておいて、オタカースト制度もなにもあったもんじゃない。 うちからアニメイトまでは10分である。要するに地元だ。なので便利は便利なのだが、逆にこれだけ近いと知っている人にあう危険性も高く、それはそれでまた困ったことになる。 店内で知っている人に出会ったら、むしろ逆に同じ穴のムジナでこちらから「おかいものですかあ?」と背後から忍び寄り耳元でささやいて、相手が取り乱して手に持ったものを隠そうとするさまを見て楽しむという趣味の悪い遊びもできるが、問題なのは、買い物を済ませて袋を提げて店の外に出たところに、ばったり人に出会うことである。今度はこちらが逃げ場がない。いい年の大人がアニメイトで大人買して大きな袋を抱えて出てくる、そんな姿はたいそう外聞が悪い。そんな事態に遭遇しないよう願うばかりである。しかしそうそう世の中はうまくいかない。自分の気づかないところで案外目撃されていたりすることが、世の中にはままあったりするものである。そう、知らないうちに買い物をしているところを見られているかもしれないのだ。 もし、そんなことにでもなろうものなら、翌日なんの気なしに、教室に入ると、黒板一杯ぐらいな大きな字で「銀英伝先生」と書いてありそうだ。みんなが私の顔を見て笑うので、銀英伝買っちゃ悪いか、と聞くと、生徒の一人が「しかし30冊は多いぞな、もし」と答えそうだ。そして運動場に出ると、今度は滑走路いっぱいにバッタが置かれている、バッタを滑走路に置いたのは誰だと尋ねると、「バッタではない、あれはイナゴぞな、もし」と生徒に口答えされそうだ。そんな漱石の坊ちゃんみたいな目にあうのは嫌だ。 結局銀英伝のデュアル文庫は買おうか買わまいか、決めかねて、帰ってきた。やはり現物もライトな感じだったので決心がつきかねた。まだOVAを全部見終わるまで、しばらくあるので、そんなに慌てることもなかろうということで、今はまだ保留にしてある。 そう思ったら、エリ8初心者には、どの刊行シリーズを買うのが適当か判らなくて迷うではないかと心配になってきた。そして、また私のようにアニメイトにいって、どれを買おうかと決めかねて困っている大人がいると思うと不憫に思えてきた。そして23巻買って、「しかし23巻は多いぞな、もし」といわれている大人がいると思うと・・・なんだか、胸が詰まされる。そんなソトレイト・シープのために、私も選書指南書ではないが、エリア88の本に関して、見聞きしたものをまとめてみたいと思った。以下がその本文である。あー前置きが長かった。 現在手に入り易い本 紙媒体のみ。 他にもあったら、教えてください。 ▼エリア88 MFコミックス 全13巻(メディアファクトリー)¥700 最も最近刊行されたもの。下のMF文庫と共に現在最も手に入りやすいものの一つ。 二つ折のカラー原画ピンナップが1枚挿入されている。また雑誌連載時の2色刷りカラーが再現されている。解説はない。大判コミックスサイズ。漫画はこのくらいのサイズがないと・・・という大きいめサイズが好きな人にはいいかもしれない。 13巻の表紙はすべてシン・カザマ。この漫画って主人公偏重主義ではないし、むしろ逆にシン・カザマという人物は無色透明で主体性が薄く、主人公が動いて話が進むのではなく、周りが動いてくれることによって動きが見えてくる役者だと思うのだけど、そのわりに扉絵登場率が高いですね。普通こういうのって、1巻がシンだったら2巻はサキ、3巻がミッキーで、4巻に神崎、5巻に涼子さんと安田さんがきて、6巻にグレッグ・・・とこうもち持ち回りで回ってきそうなものですが、ことこの漫画に関しては、そのルールは通用しませんな。たぶんシンの登場率が高いのは作者にとって単に絵的に描きやすいだけだと思いますが。 このコミックスは表紙原画に好みなものが多くて見ていて楽しい。特に10巻の口をぽかっと半開きにした奴がお気に入り。この先生は絵が巧いんだか下手なんだかわからない。 ▼エリア88 MF文庫 全13巻 (メディアファクトリー)¥620 先にあげたMFコミックスとともに現在入手しやすいものの一つ。巻末に軍事ジャーナリスト三藤修の解説あり。 文庫サイズで小さくて場所をとらない。背表紙が金色で本棚に並べておいたとき主張しすぎないので、他の漫画文庫との親和性も高い。同文庫では他にも新谷かおる作品が多数刊行されているので、文庫サイズでいろいろそろえてみたい人にはよいかも。同文庫からはふたり鷹・ガッデム・クレオパトラDC・・・などが刊行されている。 たぶんエリ8世代の人はモノが多く、蔵書の数もそれなりにあって腐海化が進む部屋に悲鳴を上げていると思うのだが(例えばこのページの作者など)省スペースをご希望の人、取り合えず買ってみようという人は、これなんかがよいかもしれない。 ▼エリア88 スコラ文庫 全13巻(スコラ出版)絶版 ¥580 巻末に軍事評論家の岡崎いさくの解説あり。 表紙は新谷かおる氏の絵ではなく、別の絵師さんによる絵。 ひところ名作漫画が再販されると、表紙にその漫画の絵でないものを用いることが流行ったけれど、これもその流れをくんでいるのだろうか、漫画らしからぬ写実的な絵柄が挿画に用いられている。装丁も渋く幼稚なところがない。そのため大人の人でも手に取りやすい。あのひょうたん顔に抵抗を感じて食指が伸びない男性も、これなら手に取ってもらえるかもしれない。ただし中はいつものひょうたん顔なので、どうしようもないが。むしろ知らないで買った人は騙された!心境か。まあ、レジに持っていく時の抵抗がわずかながらでも減るのはいいかもしれない。私も新谷御代の本で表紙が恥ずかしくて、買うのにためらったものがあったのでその気持ちはわからないでもない。 特に『刀神妖緋伝』は恥ずかしかった。あの3巻のぷにぷにロリロリエロエロの水着は非常に恥ずかしい。これだけレジに持っていくのに羞恥心を駆動させた表紙は、夢野久作の『ドグラマグラ』以来かもしれない。本当この先生は絵が巧いんだか下手なんだかわからな・・・以下略。 また岡崎いさく氏の解説も読み易い。残念なことに絶版。 ▼エリア88 少年サンデーコミックスワイド版 全10巻 (小学館) ¥693 絶版 通称ワイド版。その名の通り大きい。ホワイト地に戦闘機絵というシンプルな装丁。どうやらこの刊にはマップの回想シーンが表現上の理由でカットされているらしい。所有していないので、実際に確かめたわけでなくあくまで伝聞。私は分散されて細切れになったものより、本というものは長くて厚くてびっしり話がつまっているほうが好きなので、こういう分厚い本が刊行されるのは嬉しい。読み応えがあって充実感倍増。同じく絶版。 ▼エリア88 少年ビッグコミックス 全23巻 (小学館)¥377 連載時からのファンにはおなじみ。この25年間にたくさん流布したコミックス。背の色が銀なのでもっぱら銀背と呼ばれているらしい。郷愁に駆られたい人、出版時の版が欲しい人はこれがいいかもしれない。このコミックスのおかしいところは、各巻背表紙に透過処理したシン・カザマのひょうたん顔が載っていて、それを23巻並べるとひょうたん顔が一列に並ぶところだろうか。なんか、これ無性に笑える。
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