▼エリア88番外編単行本未収録について 既にご存知の方も多いように、エリア88には単行本未収録の読み切りの番外編が存在します。 これは、1880年小学6年生3月号に掲載されたものだそうです。 小学生を卒業したら次は少年ビックコミックを読んでねという宣伝の意味合いを兼ねて描かれたと聞いています。 そのため、単行本には収録されていません。 おかげで、長いことこの番外編は読めない状態にあったわけですが、脱稿から21年ほどたった2001年に、新谷かおる氏自身が同人誌として発行しております。ありがたや。 サークル名は八十八夜。書名は「エリア88SPECIAL EDITION」販売は2001年夏コミ。 こちらは現在でも金さえあれば中古市場で入手することが出来るようです。 手に入るかどうかは金しだいになりますが、金さえあれば難しくないので、活路を見出したい方は、一撃を狙ってみるとよろしいかもしれません。 また未確認情報ですが「エリア88豪華画集」の中にも同原稿が収録されているとのことです。こちらも詳しくは中古市場を探索されてみてください。 ▼ストーリー 今日も敵機を追うシンとミッキーは、パイロットが心臓発作で操縦不能になったビジネスジェットに遭遇する。心臓発作で苦しむ父に変わって操縦桿を握るのは、単独飛行はこれが初めてという少女だった。二人はジェット機を援護しながら88基地まで誘導を試みる。はたして少女の乗ったジェット機は無事88に辿り着けるのか?そして基地にいるサキは…。シン、ミッキー、サキが登場する。全22ページ。 ▼感想 というわけで買ってきました。エリア88SPECIAL EDITION いやー、やっと読めましたよ、この番外編。 これまで読んだことがなかったのですが、長い月日を経てようやく読む機会に恵まれました。 脱稿が1980年1月となっているので、実に24年後の対面になるのですね。 この時期になって未読原稿に会えるなんて感激もひとしおです。 ああ、はじめてみるシン・カザマだ!初めてみるシン・カザマだよ。懐かしいんだけど、フレッシュでみずみずしいこの感覚。感涙ものであります。 さて、お話のほうですが、流石に小学生読者相手に人殺しは不味かったのか、人を殺すのではなく人を助ける話になっていますね。 書かれた時期は連載初期のころにあたるのでしょうが、初期短編にある重苦しい空気はなく、読後感はさわやかで、エリア88というよりむしろファントム無頼のノリです。 シンとミッキーもシンとミッキーというより、神田と栗ちゃんみたいな感じです。 いや神田というよりジョーイっていったほうがいいでしょうか。 全体的に普段のエリ8より、敷居を下げて低年齢の子向けに描かれている感じです。 また男子だけでなく、女子児童も念頭においているせいかか、今回はゲストヒロインに少女が登場しています。 この少女は12,3歳ぐらいでしょうか、読者層を意識したためか、たぶんそのぐらいの年齢だと思うのですが、かよの夫人の筆の可愛いらしいチャームな美少女です。 そんな可憐な少女が、通りすがりのパイロットに助けてもらうお話です。 少女は自分を守ってくれた素敵なパイロット達に感謝と親愛の思いを寄せます。 パイロット達はそれに優しく微笑んで、再び大空に飛び立っていきます。 小さなプリンセスとそのプリンセスをお守りする騎士。 強くて勇敢なわたくしの騎士たち。 ああ、少女漫画みたいですこと!心ときめきましてよ。みなさん。乙女回路ぐるぐるですわ。 小さなレディに紳士的に接するサキ司令や、体をはってプリンセスをお守りする蒼穹の騎士シン・ミッキーなど、シンもミッキーもサキもローティーンの子からみた憧れの王子様像として描かれており、かよの夫人の筆とあいまって、いつもにもまして少女漫画度がアップしておりますよ。 このころの絵ってぷにぷにロリロリエロエロしていなくていいですね。エグイところもないし。透明感があります。 (あとがきのページに、今の筆の新谷氏のシンの簡単ひとふで書きがあるのですが、連載時との絵柄の違いに、時の涙が見えました。) さあ、みなさんもマニアックでハードなメカと、少女漫画チックなお伽噺が融合した一本をご堪能あれ。 今こんな話を読むことが出来て、とっても幸せ。
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