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2003年05月27日(火)
 血圧計。


昨日のこと。
久しぶりにジムに行った。
それはいい。
少しばかり眩暈がするので血圧を測ろうと思った。


どこのジムでもそうだと思うが、ジムには個人カルテなるものがある。
そこにはトレーナーによって作成されたその人に適したプログラムが事細かに書いてあり、
マジメな人達は忠実にそれを守りトレーニングに励む。
マイペースなワタシはことごとくそれを無視して踊りに励む。
更に、トレーニングの最初と最後に血圧を測り記入する欄が設けてあるのだが、
マイペースなワタシはことごとくそれを無視してそこには体重と体脂肪を記入している。
これでいいのだ。


話しを戻そう。


ワタシはジムに行くと、まずは体重と体脂肪を測る。
着用している500gの減量は欠かさない。
そしてそれを個人カルテに記入し、ストレッチを行う。
そしてスタジオレッスン(ステップやダンスやエアロ)を行い、温まった体のまま筋トレを行う。
温まり度が足りない時のみステアマスターを行う。
そしてクールダウンストレッチを行い、シャワールームへ向う。
身体を洗い、サウナでもう一汗かいて、身体をさっと流し、帰り支度をする。
これがワタシのやり方だ。


昨日もいつものように、体重と体脂肪を測り、この後に血圧を測ることにした。
それが事件に繋がったのだ。


個人カルテに体重と体脂肪を記入してから血圧を測れば何も問題はなかった。
不精モノのワタシは左手で血圧を測り、右手でカルテ転記をするという方法をとった。
実はこれ、結構技術を必要とする。
右腕を測定部分に挿入し左手でスタートボタンを押すという正しい使い方をすれば何も問題はないのだが、血圧計は右手用に作られている為、左腕を先に挿入してしまうと右手ではスタートボタンにはどうやっても届かないのだ。
ではどうするのか。
左手でスタートボタンを押し、押すや否や、電光石火の早業で狭くなっていく腕を挿入する筒型の測定部分に、ボタンを押した左腕をスルっと挿入するのだ。
そしてこの行為はワタシを実にワクワクさせる。
昨日も電光石火の早業で腕を挿入し、イエイ!ナイス!オレ!とワクワクしながら血圧を測り
右手でカルテ転記を行っていたのだが、この時異変が発生した。


血圧計が測定中のままいつまでたっても測定されないのだ。


血圧計とは腕を動かしてしまうとそこで一時的に測定が止まり再び測定しなおす代物。
右手を使っているせいか、何度か「身体を動かさないで下さい」のランプが点滅したのだが、
いつもならそこで圧力が止まるのに、その日に限って圧力がどんどん大きくなっているのだ。
つまり、血圧計がワタシの左腕をどんどん搾っていくのだ。


ワタシは腕が痛かった。


カルテ転記をしていると、いつもおばさん達が人のカルテをタダで見に来る。
やつらは自分の体重と体脂肪をそれこそ棺桶に一緒に持っていくかのようにひた隠しにするくせに、
人のものは断りもなく勝手に堂々と覗き見る。
その日もおばさん達は「キルちゃん最近ちょっと太ったんじゃない?」と言いながら人のカルテをじぃーっと眺めていた。
「ねえ、なんか血圧計おかしいんだよー。」とワタシが言うと、
「右手で書いてるからでしょ?ダメだよ体動かしちゃ。」と言うだけで取り入ってくれない。
その間もどんどん圧力がワタシの左腕を襲う。
「あのぉー、なんか左腕が痛いんだけどー。」とワタシが言うと、
「キルちゃんの腕が細すぎるからよ。」と言うだけで取り入ってくれない。
ワタシの左腕に更に圧力がかかる。
おばさん達はワタシに興味を失い、その場でおしゃべりを始めてしまった。


痛い。
腕が痛い。
「痛いよぉー!!」と言ってもおばさん達は笑って取り入ってくれない。
圧力はまだ止まらない。
ふと見ると左腕が紫色になっている。
「マジ痛いよぉー!!助けてよぉー!!」と言ってもおばさん達は更に笑って取り入ってくれない。
やばい。
このままでは腕がもげてしまう。
非常停止ボタンを押して血圧計を止めなければやばい。
しかし先ほども書いたが、血圧計は右手用に作られている為、右手では届かない場所に非常停止ボタンがあるのだ。
つまり、自分では非常停止ボタンはどうやっても押せないのだ。


ワタシはおばさん達に助けを求めるのを諦め、意を決して叫んだ。










「だれかぁー!!たすけてぇー!!止めてぇー!!もげるぅー!!」










すると、たまたま隣りの血圧計を使おうとしていた、ヨボヨボのおじいさんがポチっと非常停止ボタンを押してくれたのだ。
助かったぁー!!
血圧計の圧力が止まり、スゥーっと挿入部分が広がって行く。
ワタシの腕の血が正常に流れ始め、少しずつ紫色が薄くなって行く。
左腕が蘇っていくのをヒシヒシと感じた。
「おじいさん、ありがとうございます。」
ワタシは丁寧にお礼を言った。
すると、「あれ?ふざけてたんじゃなかったの?」と隣りのおばさん達が口を挟んで来た。
ワタシは「なんだよ!あれだけSOS信号出したじゃんかよ!今更何言ってるんだよ!それに今は貴様に話し掛けてるんじゃないんだよ!人が話してるのに横から口挟むなよ!喋ってるヒマがあるのならもっとトレーニングしろよ!井戸端会議ばっかりしてるからいつまでたっても痩せないんだよ!!」と叫びたくなるのとぐっと堪えた。
おじいさんはニコニコと笑いながら「これは右腕用ですからね。」と諭すようにワタシに言った。



ごもっともです。



ワタシは恥ずかしいやら嬉しいやらで顔を上気させながら、更におじいさんにお礼を言い、
おじいさんの後ろになんだか後光のような輝きを感じた。



その後、何事もなかったかのように、ワタシはトレーニングに励んだのだが、
ワタシの左腕には事故の後遺症が生々しく残っている。
20cmほどの真っ赤な数本の内出血が。










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