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2003年05月26日(月)
 見切り発射。


朝起きると、洗面所のシンクの中に、使い捨てと思われるティッシュペーパーが
数枚丸めて捨ててあった。


誰だよっ!!
家は二人暮しだよっ!!
小人か妖精じゃない限り、ワタシじゃなかったらアイツだよっ!!


体が火照る。
朝から血圧が急上昇したのが分った。


さてどうしたものか。


隊長は風呂に入っている。
風呂の扉を開けて「貴様ぁー!!」と文句を言うことはいとも簡単なのだが、
月曜の朝からヤツの裸など見たくない。
それに、そんなことをしたら間違いなく逆ギレだ。
ワタシは別な手段を考えた。
昨日「これもう着ないからキルちゃんのクローゼットに置かせてもらっていい?」
と、邪魔になったスーツをワタシ専用の衣裳部屋に引越しさせようとした隊長。
しぶしぶそれを受け入れたのだが、ワタシはそのスーツ2着を取り出し、床に投げ捨てた。
そして、踏んだ。
「バカバカバカぁー!!」とひとしきり踏絵のように踏み続けた。
その後にリビングにあるヤツの抜け殻を踏んだ。
「クソクソクソぉー!!」とリンチでもしてるかのように踏み続けた。
そして、とてもすっきりしたので洗面所に戻った。


そこでワタシはあることに気が付いた。


なんだか洗面所がカビキラー臭い。
そして、シンクに捨てたと思われるティッシュは、なんとなくシンクの手前つまりシンクの渕方向に集中している。
そして、洗面台の下に敷いたマットに白いシミがついている。
そう言えば・・・。


ワタシは昨夜の彼の言葉を思い出した。


「シンクの手前に黒カビさんが生えてるよ。あっ、オレいい人だからカビキラーしてあげるね!」


彼がそう言っていたことを思い出した。
しまった。
見切り発射してしまった。
彼は黒カビ除去のためにシンクにカビキラーをまき、そしてそれがたれてこないようにとティッシュを貼り付けておいたのだ。


ワタシは慌ててスーツを床から拾い上げ、丁寧にブラシをかけ、クローゼットに戻した。
リビングの抜け殻に至っては、さっきまで死に損ないの抜け殻だったのだが、少し丸みをつけ、あたかも彼が脱いだばかりのように形を整え、息を吹き返させた。


危ない危ない。
月曜の朝から戦争を勃発させるところだった。
しかしながら、ちょっとだけ言い訳を聞いて欲しいのだが良いだろうか?


隊長はいつも使ったモノを片付けない。
その一番の現場となる場所が洗面所なのだ。
歯ブラシ、歯磨き粉、シェーバー、ヘアーワックス、ヘアースプレー、エゴイスト。
どれもこれも、洗面所の鏡の裏から取り出し、キレイに洗面台の上に並べたまま出勤するのだ。
「時間がない」と言う理由で。
そんな前科のある人間が、馴染みある場所にティッシュを転がしていたら、
疑われるのも無理はないというものだ。
そしてもう1つ。
ワタシは昨日とあるエンピツ育児日記を最初から読みたくなり、数時間かけて読破し、その結果ワタシの頭の中はその子のことでいっぱいで、夢の中でまでいっぱいで、そしてその子供の悪戯っぷりと夫が重なってしまい、夫の行動をそれはもう憎々しく感じてしまったのである。








隊長が風呂から出た。
早速、「これ何?」と洗面所のシンクを指差すと、
「あっ、黒カビさんとれたかなぁ?」と
シンクの手前を覗き込んでいる。
そして、「やっちゃったね。」と言ってマットを指差してあげると、
「ああああああ!!ごめんなさぁい!!!!」と自分の失敗を心から反省している。



「まあ、やっちゃったもんは仕方ないよ。次注意してね。」







ワタシは自分の見切り発射の件と隊長のマットまで漂白しちゃった件を相殺することにした。
そっと心の中で。
そして隊長はそんなワタシをとても不思議そうに見つめ、小さな本当に小さな声でこう呟いた。











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ワタシは聞えなかったことにした。
そして、今朝も洗面所は使いっぱなしだったけど、半分は片付けてあった。




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今日もまた最後まで読んで下さってアリガトウ。感謝感激でゴザイマス。ぶりっ。


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