その昔、ワタシは北海道出身の男性と結婚したかった。
理由は簡単。
夕張メロンを死ぬほど食べたかったから。しかし隊長は信州生まれの頑固な男。
おかげで毎年、ネクタリンと巨峰とリンゴを死ぬほど食べることができる。
ワタシはあまり好きではないのだが。
隊長と婚約中、ワタシは神戸に住むフルーツ屋の息子と知り合った。
3つ下の可愛い男の子だった。
彼と姻戚関係になればメロンが喰える。さすが天才。
スバラシイ閃きだ。
彼を弟にしてしまえばいいのだ。
そうだ。
妹と結婚させよう。
ワタシは、ワタシ以上にメロンにめろめろの愚妹Y子を唆した。
メロン屋の息子と付き合ってみないか?と。
Y子には当時彼がいた。
ちなみに今の夫ではない。
しかし、Y子の心は揺らいだ。
何せY子は、
独り暮らしをして1番良かったことって何?と尋ねた時に
メロンを1人で丸ごと食べれることに決まってんじゃん!お姉ちゃん♪と熱く語った女だ。
ワタシはメロン屋の彼をベタ誉めした。
さっさと彼氏と別れて、メロン屋の彼と付き合えと何度も何度も促した。
しかし、Y子はメロン屋の彼を選ばなかった。
なぜなら彼はチビッコで太っちょだったから。
酷いオンナだ。
結局、ワタシの夢は崩れ去った。
メロン屋の彼の家のメロンを1度も食べることもなく、彼との付き合いも疎遠になり、
今では年賀状だけの付き合いになってしまった。
惜しいことをした。
そしてこんなこともあった。
職場の北海道出身の同僚に、夕張メロン欲しさにお中元を送ってあげたら、
お返しに送られて来たモノがジンギスカンの山だったのだ。
かなり期待していたのに。
いや、彼女はメロンを送るって言ってたのに。
あの時は3日3晩泣いた。
そんな可哀相なワタシだが、神様は見捨てなかった。
それは毎年この時期にだけ送られてくるプレゼント。
仕事を終え、疲れた身体を引きずりながら帰ってくると、
我家の宅配BOXに
佐藤錦様が入っていた。
見事なサクランボだ。
ありがとう、マイ父母。
色も大きさも甘さも、本場のさくらんぼは違うね。
この時期だけは、実家が山形で良かったと思うよ。
でもね、
子供の頃に、こんなに立派なサクランボを喰った記憶がないよ?
そして黄色いサクランボだと思ってブチっともいだら、
それは黄色くって黒い線の入った大きな幼虫で、ブジョっと潰れて、屋根の上で手をバタバタさせながら
うわーん!メンメだぁー!メンメだぁー!と大泣きして危うく落ちそうになったことがあるよ。
だから屋根に登るなって言ったでしょっ!!って、おじいちゃんにシコタマ叱られたよ。
なんかあの感触が蘇ってきちゃったよ。
ブジョっ。それにしても、ケツが痛いよ。
ちなみにメンメ=虫のことだよ。