武ニュースDiary


* このサイトはリンクフリーです。ご連絡はいりません。(下さっても結構です。^_^)
* 引用は、引用であるとわかる書き方なら、必ずしも引用元(ココ)を表示しなくても構いません。
* 携帯からのアドレスは、http://www.enpitu.ne.jp/m/v?id=23473 です。
* 下の検索窓(目次ページにもあり)からキーワードでDiaryの全記事が検索できます。
* バナーは世己さんから頂きました。
* Se inter ni estus samideanoj, kontaktu al mi. Mi elkore atendas vin, antauxdankon!


目次前の記事新しい日記


2006年05月17日(水) 「如果・愛」の撮影現場にて(上)

張小薇という、多分ある女優さんのブログに、
「如果・愛」の撮影に参加した記録がありました。
昨年の6月5日の上海でのできごとを、今年になって綴ったものです。
そのときの雰囲気がとてもよく感じられます。
長いので2回に分けます。
芝居の内容でネタバレになるところは黄色の文字で伏せます。
差し障りないと思われる部分と、完成版ではカットされた部分は
そのまま残しました。

(前略)
 9時、帰宅したところ。
ネットを開いて友達の書き込みに目を通すつもりだった。
ところが会社から電話があり、夜の撮影のテストに行けという。
時間がないので、車で零陵路まで急いだ。
10時半にカメラテストが終わったとき、
初めてそれが映画「如果・愛」のテストだと知った。
聞けば、今夜、私の夢の恋人、金城武が来るというではないか。
私は即、夢心地状態になってしまった。
行け、チャンスは逃してはならない、何事もかえりみず、行け。
たとえ一目しか彼を見られなくても、いや一目でも、私は満足だ。

外灘18号の3階。
臨時にしつらえられた化粧室は、テレビでいつも見るのに名前を知らない人たちや、
忙しそうなヘアメークの人たちで、入り乱れていた。
私とジャオジャオはパーティーの貴婦人に扮するのだ。
ジャオジャオはレトロなヘアスタイルに結い上げられて、
ずっとほどいてしまいたがっていた。
私は黒のイブニングドレスを着たが、めったにスカートははかないので、
とても慣れなかった。
右から見ても左から見てもしっくり来ない。

このとき、革のジャンパーを着て緑色のアディダスのサングラスをした
長髪の男が近づいてくるのが見えた。
ああ、そうか。
その人に会釈をして、知り合いのように声をかけた。
「チャン監督、こんにちは」
彼は広東語で「はい、こんにちは」と返事をした。

撮るシーンの内容は大変簡単なもので、ジョウ・シュンがパーティーの席で、
ある上流社会の紳士に、以前三里屯で歌を歌っていたことを気づかれる。
彼女が強く否定
したとき、金城武が激しい怒りを抱きつつ会場にやってくるのだ。
こんな簡単な芝居が、夜中の2時から、昨日の午前11時半まで、
何度も何度も繰り返された。

どうしようもない、
金城武が姿を現わすたび、女たちはほとんど例外なくその姿を目で追った。
私はジョウ・シュンの背後に立って、
老紳士と無理やり話題を見つけて話をしていた。
芝居には、金城武が入ってきたとき、ある女性ファンが進み出て、サインをねだるが、
彼は断り、ジョウ・シュンに向かってまっすぐ進んでくる、というシーンがあった。
だから、私は完全に真正面から、彼に向かい合うことができたのだ。

彼がかまちに寄りかかって、ものうげに腕を伸ばし、裁縫師が寸法を取る。
私の夢の恋人はぴかぴかの革靴を履き、
一歩歩くたびに、私の心を踏んでいくようだった。
あんな厚いじゅうたんなのに、彼が足を踏み出すと音が聞こえた。

縞のある黒いスーツに白いシャツ、長いもみあげ、
きれいなカーブを描くあご、はっきりした輪郭の顔、浅黒い肌、
まっすぐな形の良い鼻、濃い眉、深い瞳。
黙っていると、少しも笑わず完全なクールさだ。
彼がこちらを見ると、女たちはみな自分を見ていると思い込んでしまう。
その漆黒の深海のような目、見るからに冷ややかな沈黙、
しかし誰もが頑固に信じている。
冷たさの中には温かな心が入り混じっていると。

彼はまっすぐカメラに向かって歩いてくる。
毎回、瞬きをし、毎回、不意に笑い出して少し歯を見せる。
なぜだかわからないが、急に彼が1人笑いをしたのが目に入った。
これら一切をこの目でしっかりと見たのだ。
思いがけず涙が出そうになった。
あらゆる感覚が抑えがきかなくなって、自然にあふれ出してくるようだった。
本当に馬鹿ですよね。
自分だけで胸いっぱいになってしまって、幼稚だこと。
(ここまで読んだら、どうぞ私のミーハーぶりを笑ってください。
ミーハーに罪なし)

カットがかかると、カメラマンがすぐ物差しではかり、
1センチ違うとやり直すのだ。厳格で精密だ。

ワンショット撮り終わるたびに、みんな拍手をした。
本当に大変なことだ。
ショットごとに10数回から20回までも繰り返すのだから。

ジョウ・シュンは化粧をして、とてもきれいだった。
実物はとても痩せっぽちで、小柄である。
全身真っ白。
真っ白なベレー帽をかぶり、髪は一方向にそろえて梳いて、胸の前に垂らしている。
真っ白なベルト付きコートを着、
真っ白なふわふわのスカート、真っ白なハイヒールを履いていた。

ヒールは10センチはたっぷりあるだろう。
足の甲が弓なりになるくらい高い。
ときどきぐらついて、歩くときも体が揺れており、大変苦労をしていた。
さらに、カメラの位置を固定して撮るときは、彼女は木の板を敷いた上に乗った。
そう、背が低いのだ。
けれども全身から賢そうな生き生きした雰囲気があふれていた。
良く笑い、笑うとずるそうな様子になった。

顔には黒いふっくりしたほくろがあった。
とてもあか抜けてきれいだ。
スターぶったところは全くない。
芝居がうまく行かなくて、チャン監督が指導しているときには、
おどけた顔をしてみせた。
それから1、2分空いた間に、彼女は気持ちを整えながら、
片方の足で立ち、片方は平らに伸ばして、ハイヒールの辛さをやわらげていた。

窓の外には、外灘の全景が広がっている。
ちょうど日の出が見えた。
半分顔を出した太陽は、塩漬けの鴨の卵のようなオレンジ色で、嬉しかった。
まだ散歩する人の姿はなく、黄浦江は波が静かだ。
フェリーの汽笛がもう聞こえる。
これが上海の早朝なのだ。  (続く)
(銭上談情――棉被人的BLOG 2006.1.18)



BBS  ネタバレDiary 5月9日更新   23:50


前の記事あさかぜ |MAIL

My追加