ゆりゆり日記
ただ知ること
過去にあつめたカケラで出来る絵は
その瞬間瞬間ごと
いつも完璧だということ
そうして明日を未来を生きていく

2017年04月09日(日) 花道

誰の記憶のなかにも
ひと際くっきりと
鮮やかに残るから
この季節を選んだ

そう
思わずには
居られないほど
満開の桜は
風に吹かれて舞い散り
父の花道を作った

鼓動が止まった
その時の
春雷に始まり
お骨を囲んでの席で
清めの塩が乗った
陶器の皿が突然割れた

皆を驚かせた最後は
少し耳が遠くなった母を
何だろうか
と思わせる音で
窓の外を見てみると
見たこともない鳥が居た

カラスを追い立て
捕獲したムクドリを
その爪で掴みながら
母と姪っ子とわたしを
窓越しの庭で
いつまでも逃げず
鋭い眼でじっと見ていた

なんだろう
不思議だね
そう言いながら
それぞれが父を思った
ゆっくり涙する
チャンスもなかったけれど

帰る電車のなかで
嫌でも浮かんでくる
家にまつわる
業とも言えるあれこれに
かつてない程
心の力を使ったそのことが

あまりに辛くて
独りで涙した
愚痴を受け止めることなんて
いくらでもしてあげるさ
けれどわたしは
誰にも溢さずに
死んでも持って行くんだ


父の弔いではなく
自分の魂の為に飲みたい


そう
つらつら思って駅を降り
店に入ると
探してもそこではこのかた
一度も得られなかった
けれど飲みたいと描いていた
大好きなお酒があった

ああ
またしても
鮮やかに
このタイミングを
知らしめたのか

ようやく今や
少なくとも父は
解ってくれているのだ
もうそれで
報われたから
今日を境にできるよ
きっと


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ゆりすこ [MAIL] [吉祥堂]

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