『日々の映像』

2010年05月15日(土) 自殺者、12年連続3万人超える。

自殺者、12年連続3万人超 若者、死に追いやる不況
毎日新聞 2010年5月14日 東京朝刊
自殺:原因「失業」が7割増30代の増加、目立つ
               2010年5月13日 12時18分 毎日新聞 
自殺対策基本法
(平成十八年六月二十一日法律第八十五号)
http://law.e-gov.go.jp/announce/H18HO085.html

 心が重くなるデータであるが書きとめておきたい。警察庁が13日発表した09年の自殺統計。自殺者総数は3万2845人で08年より1・8%増加、12年連続で3万人を超えた。

毎日新聞の解説の一部を引用したい。
「リストラや過酷労働
 なかでも20代と30代の自殺率(10万人あたりの自殺者の数)は08年に続いて過去最悪を更新し、若年層の自殺の深刻ぶりが浮かんだ。原因・動機に「失業」が含まれる自殺者は08年比で7割近く増加した。不況が若年層にも暗い影を落とす。一方、支援関係者らは、職場にとどまる人々にもリスクは広がっていると指摘する。【鮎川耕史、合田月美】」

自殺者数を年代別の内訳は以下である。
50代 6491人  (19.8%)
60代 5958人  (18.1%)
40代 5261人  (16%)
30代 4794人  (14.6%)
70代 3671人  (11.2%)
20代 3470人  (10.6%)
と続いている。20代・30代・40代・50代の自殺者が20016人となっている。よって、この自殺問題は、働く年代の問題といえる。

 09年の自殺者のうち原因・動機に「失業」が含まれる人は1071人で、前年から7割近く増えたという。景気後退による雇用情勢の悪化が影響しているとみられ、特に30代の増加率は9割近くに達している。失業者を対象とした講座を開いているが、社会状況がどうあれ、人生は自分発なのである。己を磨くことを忘れている人が、社会に対応できなくなると強く感じる。

 ここで自殺対策基本法の第一条・第二条を引用して置きたい。
第一条  この法律は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移していることにかんがみ、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

第二条  自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない。
2 自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。
3 自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。
4 自殺対策は、国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校、自殺の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない。

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自殺者、12年連続3万人超 若者、死に追いやる不況
毎日新聞 2010年5月14日 東京朝刊
 ◇リストラや過酷労働
 警察庁が13日発表した09年の自殺統計。自殺者総数は3万2845人で08年より1・8%増加、12年連続で3万人を超えた。なかでも20代と30代の自殺率(10万人あたりの自殺者の数)は08年に続いて過去最悪を更新し、若年層の自殺の深刻ぶりが浮かんだ。原因・動機に「失業」が含まれる自殺者は08年比で7割近く増加した。不況が若年層にも暗い影を落とす。一方、支援関係者らは、職場にとどまる人々にもリスクは広がっていると指摘する。【鮎川耕史、合田月美】

 NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京都千代田区)が自殺者の遺族を対象に実施する「自殺実態1000人調査」では、若年層が死に追い込まれる実態や遺族の苦悩が浮かぶ。

 愛知県に住む元会社員の30代男性が自ら死を選んだのは昨年秋。母親はその8カ月前、IT(情報技術)関連会社を辞めて実家に戻った際の息子のことを鮮明に覚えている。ほおがやせこけ、疲れ果てた様子だった。職探しはうまくいかず、会社の設立にも失敗。明るく振る舞っていたが、遺書には何カ月も前から自殺を考えていたと記されていた。

 母親は「家族の誰かが後を追うのでは。そんな恐怖におびえながら生きてきた。家族を自殺で失うなんて思わなかった。だからこそ、一人一人が身近な問題として自殺を考えてほしい」と訴える。

 NPO法人「労働相談センター」(葛飾区)には、年間5000件規模の相談が電話やメールで寄せられる。最も多い相談は賃金関係だったが、景気が後退した08年秋以降はずっと解雇がトップだ。

 スタッフの須田光照さんは、相談を受けた30代男性を気にかける。自動車メーカーの下請け会社を解雇された後、仕事が見つからず、うつ病と診断されてから連絡がつきにくくなった。「精神的な打撃を受けやすい人にとっては、解雇が重大なつまずきになるケースが少なくない。若い人にとって、自殺との距離は近くなってきている」と感じている。

 ライフリンクの清水康之代表は「自殺は主に中高年の問題だと言われてきたが、20、30代にも広がっている。経済問題が原因になるケースが目立つが、失業だけではない。過酷な労働条件にさらされている人が追いつめられている実態もある」と分析する。

 過労死の問題に詳しい川人博弁護士は「入社1〜2年の若者の自殺が増えている」と実感するという。40〜50代の社員がリストラで減り、以前より若い層が職場で責任を負うようになった。過酷な負担やノルマが、新入社員にものしかかる。「若い社員を取り巻く環境が変わり、ストレスはますます強まっているのに、サポート体制は弱い。そこに問題の一端がある」。川人弁護士は警鐘を鳴らす。

 警察庁の09年の自殺統計で、原因・動機を7区分に分類すると、「経済・生活問題」を含む人は8377人で08年より13・1%増加し、最も増加率が高かった。さらに多かったのが「健康問題」。1万5867人と最も多く、このうち「うつ病の影響・悩み」を含む人が6949人に上った。他の区分は▽家庭問題4117人▽勤務問題2528人▽男女問題1121人、など。

 日本いのちの電話連盟が毎月10日に実施する「自殺予防いのちの電話」には09年、自殺志向者からの相談が9731件あった。原因はさまざまだが、相談者の8割前後は精神科などで治療を受けたことがある人だという。

 連盟の斎藤友紀雄常務理事は「医療につながっていながら、『死にたい気持ち』へのケアが受けられていない実態がある」と分析。「生活不安を訴える若年層は多いが、それだけが自殺の理由ではない。自殺を志向する人へのケアのシステムをつくることが理想だ」と訴える。

 ◇予防効果、見極め難しく
 98年の統計で自殺者が3万人を超えたことをきっかけに、国は対策に乗り出した。厚生省(現厚生労働省)は00年に策定した「健康日本21」で、自殺予防への取り組みを初めて掲げた。06年施行の自殺対策基本法には、自殺を「個人の問題」のみとせず、「社会的な要因」に目を向けて対策を講じるべきだという内容が盛り込まれた。同法に基づいて政府が策定した「自殺総合対策大綱」が、現在の国の対策の指針となっている。
 09年には地域自殺対策緊急強化基金を予算化。市町村や民間団体による相談事業や支援者の養成、啓発活動などに補助金を出す制度で、3年間で計100億円を計上する。今年2月には「いのちを守る自殺対策緊急プラン」を打ち出した。
 しかし、一連の政策が自殺予防にどれほどの効果をもたらしているかの見極めは難しい。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の竹島正・自殺予防総合対策センター長は「キャンペーン型の事業だけでは真の対策にならない。自殺リスクの高い人は、それぞれの人生で生きにくさを抱え、そこに目を向けた本質的な支援を検討することが必要だ」と指摘する。
 自殺者数は、今年に入り小幅ながら減少傾向となっている。警察庁が発表した暫定値によると、4月末までの自殺者は1万309人で、09年同期比で9・0%減。景気の回復基調などを背景とした変化の兆しとの見方もあるが、自殺対策の支援関係者は「短期間のデータで判断するのは危険」と話している。
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 ◇自殺防止のための主な電話相談窓口
▽多重債務による自死をなくす会 コアセンター・コスモス相談窓口
 080・6159・4730
          4733
 ※午前9時〜午後8時
▽自殺予防いのちの電話(日本いのちの電話連盟)
 0120・738・556
 ※毎月10日。24時間
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自殺:原因「失業」が7割増 30代の増加、目立つ
              2010年5月13日 12時18分 毎日新聞 

 09年の自殺者のうち原因・動機に「失業」が含まれる人は1071人で、前年から7割近く増えたことが、警察庁が13日に発表した自殺統計で分かった。景気後退による雇用情勢の悪化が影響しているとみられ、特に30代の増加率は9割近くに達する。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺率は、20代と30代で過去最悪だった。自殺者総数は3万2845人で前年より596人(1.8%)増え、12年連続で3万人を超えた。

 今年1月に発表された自殺者総数3万2753人は暫定値で、今回が確定値となる。

 統計によると、原因・動機が判明した2万4434人のうち、1071人は「失業」が含まれ、前年の648人から65.3%増加した。原因・動機を分類する現行の方式を導入した07年(538人)から2年連続の増加となり、増加幅も急拡大。30代は228人で、前年(121人)比88.4%増だった。また、「生活苦」が原因・動機に含まれる人は全年代で1731人で、前年(1289人)から34.3%増加した。

 一方、09年の自殺率は25.8。年代別では20代が24.1、30代が26.2で、それぞれ過去最悪だった。20代は2年連続、30代は3年連続で最悪の数値を更新し、若年層の自殺の広がりは恒常化の様相をみせている。

 自殺者数を年代別でみると、50代が6491人と最多で全体の19.8%を占めた。60代5958人(18.1%)▽40代5261人(16%)▽30代4794人(14.6%)▽70代3671人(11.2%)▽20代3470人(10.6%)−−と続いた。

 09年平均の完全失業率は5.1%で6年ぶりに5%台まで悪化した。求職者1人当たりの求人件数を示す有効求人倍率も0.47倍で最悪の水準。自殺の原因・動機に関する数値の背景には、こうした厳しい雇用情勢もあるとみられる。【鮎川耕史、合田月美】

 ◇ことば・警察庁の自殺統計
 警察による検視などで自殺と判明したケースを計上する。原因・動機に関する現行の分類方法は07年統計から導入しており、「健康問題」「経済・生活問題」など七つの区分と、それを細分化した計52項目からなる。52項目には「失業」「生活苦」のほか「うつ病」「倒産」「職場の人間関係」「失恋」「いじめ」などがあり、警察官が三つまで選ぶ。

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(最終更新 5月13日 12時37分)


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自殺対策基本法
(平成十八年六月二十一日法律第八十五号)
http://law.e-gov.go.jp/announce/H18HO085.html


 第一章 総則(第一条―第十条)
 第二章 基本的施策(第十一条―第十九条)
 第三章 自殺総合対策会議(第二十条・第二十一条)
 附則
   第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移していることにかんがみ、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第二条  自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない。
2  自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。
3  自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。
4  自殺対策は、国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校、自殺の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない。
(国の責務)
第三条  国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、自殺対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第四条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、自殺対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業主の責務)
第五条  事業主は、国及び地方公共団体が実施する自殺対策に協力するとともに、その雇用する労働者の心の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(国民の責務)
第六条  国民は、自殺対策の重要性に対する関心と理解を深めるよう努めるものとする。
     以下省略

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石田ふたみ