2010年04月10日(土) |
消費税の論議が大きくなるか |
発信箱:「消費税政局」の予感=倉重篤郎(論説室) 2010年4月8日 毎日 与謝野・平沼新党:「消費税上げ」で一致 毎日新聞 2010年4月5日 社説:法人税―引き下げ戦略を描くとき 2010年4月9日 朝日新聞 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 「消費税政局」の予感=倉重篤郎氏の文章は的をえた表現なのでここに引用させていただく。
1、永田町を2枚の鉄板がじりじりと焼いている。1枚目は「政局」鉄板だ。野党・自民党がその熱にあおられ、耐えられなくなった人たちがこぼれ始めた。熱の正体は、野党転落である。
2、現在起きている与謝野馨(71)、平沼赳夫(70)両氏らの自民離党、新党作り現象の背景にはそれが透けて見える。だからといって、2人をくさすつもりはない。与謝野氏は06年10月に13時間にわたる喉頭(こうとう)がん手術から、平沼氏も同年12月に脳梗塞(こうそく)に倒れ懸命なリハビリを経て復帰。与謝野氏は消費税、平沼氏は改憲というライフテーマを抱いて最後の勝負に出たからだ。一寸先は闇の政局、何かを動かすかもしれない。
3、もう1枚の「財政危機」鉄板の過熱が予想を超えたものになりそうだからだ。歳出92兆円規模の今年度予算で37兆円しかなかった税収が伸びるめどはなく、加えて来年度は民主党公約実現のため10兆円の追加歳出が必要というのだから年度末に予算がすんなり組めるわけがない。
4、参院選が終わり年末に向けては、いかに消費税増税を政治日程に乗せるかが焦点になる。・・・・・ただし、2枚目の鉄板の扱いは要注意だ。下手すると国家全体が焦げ落ちる。
鳩山政権では消費税はあげないことにしている。庶民の立場ではよいことであるが果たして国が持つかという大きな不安がある。ここにきて法人税の引き下げ論議がある。
日本も国税である法人税を下げ続け、1980年代末に40%以上だった基本税率は99年から30%になっている。だが、地方税である法人事業税などを合わせると約40%だ。
これは米国と同水準だが、30%を切る欧州主要国や韓国の24%、中国の25%などと比べると高い。 社会的存在である企業が税負担をするのは当然だ。とはいえ海外との競争を意識すれば、税率の引き下げを考える意見が出ることは自然の流れだ。
さりとて国家の税収の中心を個人から徴収する消費税のみが大きく論議されるのは問題だ。日本の庶民の消費は約250兆円である。消費税を10%にすると、約25兆円の 税収(現在の2倍)となる。消費税の増税だけで現在の財政バランスを保つことは困難なのである。少なくとも、予想を超える厳しい生活環境になることだけは間違いない。
―――――――――――――――――――――――――――――― 発信箱:「消費税政局」の予感=倉重篤郎(論説室) 2010年4月8日 毎日
永田町を2枚の鉄板がじりじりと焼いている。1枚目は「政局」鉄板だ。野党・自民党がその熱にあおられ、耐えられなくなった人たちがこぼれ始めた。熱の正体は、野党転落である。政策の決定権限を失い役人も記者もSPもいなくなり、政権与党でしかるべきポジションにいた政治家からすると、まさに天国から地獄の責め苦である。それも少し我慢すれば元に戻れるならいいが、今回は先が長そうだ。民主党が衆院で300議席をがっちりつかんでいる限り、任期残り3年余は野党暮らしを避けられない。自分にはとてもそんな持ち時間はない。 現在起きている与謝野馨(71)、平沼赳夫(70)両氏らの自民離党、新党作り現象の背景にはそれが透けて見える。だからといって、2人をくさすつもりはない。与謝野氏は06年10月に13時間にわたる喉頭(こうとう)がん手術から、平沼氏も同年12月に脳梗塞(こうそく)に倒れ懸命なリハビリを経て復帰。与謝野氏は消費税、平沼氏は改憲というライフテーマを抱いて最後の勝負に出たからだ。一寸先は闇の政局、何かを動かすかもしれない。 というのも、もう1枚の「財政危機」鉄板の過熱が予想を超えたものになりそうだからだ。歳出92兆円規模の今年度予算で37兆円しかなかった税収が伸びるめどはなく、加えて来年度は民主党公約実現のため10兆円の追加歳出が必要というのだから年度末に予算がすんなり組めるわけがない。 参院選が終わり年末に向けては、いかに消費税増税を政治日程に乗せるかが焦点になる。鳩山政権は任期中消費税を上げないと明言しているから、どこかで首相交代ないしは解散・総選挙で信を問う場面が出る可能性がある。となれば、そこが政界再編、新党活躍の機となりうる。ただし、2枚目の鉄板の扱いは要注意だ。下手すると国家全体が焦げ落ちる。 消費税:「景気が後退」「必要なら」…閣内に温度差 新党:「消費税上げ」、与謝野・平沼両氏が一致 大塚副内閣相:「法人税率引き下げ必要」 国際競争力を強化 枝野行政刷新相:消費増税なら「衆院解散を」 消費税政局 0時08分
―――――――――――――――――――――――――――――― 与謝野・平沼新党:「消費税上げ」で一致 毎日新聞 2010年4月5日 自民党に離党届を提出した与謝野馨元財務相(71)、無所属の平沼赳夫元経済産業相(70)らは5日夜、東京都内で今週中の新党結成に向けて協議し、基本政策として「日本の伝統・文化・歴史の尊重」「将来的な消費税率引き上げ」を掲げることで一致した。保守再生を訴える平沼氏と財政再建派の与謝野氏の主張を並べ、双方の顔を立てた格好だ。 ◇邦夫氏外れ5人で発足 平沼氏らは「国会議員5人で発足する」と明言している。だが、先に自民党を離れた鳩山邦夫元総務相(61)は結党時のメンバーから外れる。5日は旗揚げ日や党名に結論を出せず、8日を想定していた結党は、10日にずれ込む可能性も出てきた。 会合には自民党の藤井孝男元運輸相(67)=参院=と、5日自民党に離党届を出した園田博之前幹事長代理(68)が出席し、新党支援を表明している石原慎太郎東京都知事も同席した。 新党参加に意欲を示す鳩山氏は5日昼、都内で平沼氏と同じ会合に出席したが、あいさつを交わしただけ。平沼氏は会合後、鳩山氏の参加について「党首として今考えていない」と否定した。新党メンバーには鳩山氏が兄の鳩山由紀夫首相同様、実母からの資金提供問題を抱えていることを懸念する声もある。平沼氏と近い鴻池祥肇元官房副長官(69)=参院=も結党には加わらない見通し。5人目には自民党の中川義雄参院議員(72)らが取りざたされている。 会談後、平沼氏は記者団に「将来的な増税も視野に経済政策と財政再建を両立させる」と与謝野氏がこだわる消費増税を容認し、基本政策を巡る両氏の主張に「大きな差異はない」と述べた。ただ、05年に衆院で郵政民営化法案に反対した平沼、藤井両氏と、当時自民党側で法案とりまとめを主導した与謝野、園田両氏が手を組むことには分かりにくさもつきまとう。 一方、自民党は5日、執行部と両院議員らによる3日間の懇談会を終えた。谷垣禎一総裁は同日夕、緊急に記者会見し、参院選選対本部に「政権力委員会(ネクスト・ジャパン)」を設置することや、本部役員は派閥を離脱することなどを打ち出した。中堅・若手議員らの執行部交代要求をはねつけた代わりに、河野太郎氏の幹事長代理起用など党改革の要望をある程度取り入れて妥協を図った形だが、求心力回復に疑問も残した。【野原大輔、大場伸也】 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
社説:法人税―引き下げ戦略を描くとき 2010年4月9日 朝日新聞 企業が負担する税の水準をどう下げるか。世界の企業を日本にもっと呼び込んで投資や雇用の機会を増やす成長戦略の観点から、避けて通れない課題になってきた。 鳩山由紀夫首相が国会答弁で「国際的な流れにふさわしく減税の方向に導いていくのが筋だ」と述べたように、各国は法人税を競うように引き下げてきた。グローバルな市場を動き回る資本を引きつける戦略だ。 国内景気を良くして雇用を増やすには企業の投資が増え、オフィスや工場、販売拠点がたくさんできるようにしたい。それには法人の税負担は低い方がいい。各国の引き下げ競争はそう考えてのことだ。 日本も国税である法人税を下げ続け、1980年代末に40%以上だった基本税率は99年から30%になっている。だが、地方税である法人事業税などを合わせると約40%だ。 これは米国と同水準だが、30%を切る欧州主要国や韓国の24%、中国の25%などと比べると高い。 社会的存在である企業が税負担をするのは当然だ。とはいえ海外との競争を意識すれば、税率の引き下げを考えるのもやむを得ないだろう。 参考になるのは、2008年のドイツの法人税改革だ。税制の例外措置や抜け道を封じて課税対象を拡大した。好況も幸いし、税収を減らさずに税率を39%から29%台に下げた。 英国も同じ時期にやはり税収を減らさずに28%まで下げた。 日本でも課税基盤の拡大を図れば、税収を減らさずに税率を数%幅で引き下げることも可能なはずだ。 これまで研究開発投資額の大きい企業に対する優遇税制は競争力の強化に役立った面もある。だが、税率を下げれば、中小も含む企業全体が恩恵を受けることができる。 さらに大幅な引き下げとなると、容易なことではない。 追加の財源が必要だ。それを消費税や所得税の引き上げなど個人の負担増でまかなうことが考えられる。しかし、家計に負担を求めれば反発が予想される。消費税を引き上げるなら、増税分を医療・福祉や年金に使うべきだとの声が上がるだろう。 減税の恩恵を受ける企業は、国内で雇用を維持・創出し、社会保障で責任を果たすことが前提となる。減税がいずれ家計にプラスの効果をもたらすという設計図も欠かせない。 税率を下げさえすれば企業の投資が増えるわけではない。日本の市場と社会に、ビジネスの機会と将来性がみなぎることが大切だ。 だからこそ消費税をどうするかも含めて税制改革と成長戦略の全体像を描き、夏の参院選で堂々と国民に信を問う。そのことを与野党に求めたい。
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