『日々の映像』

2010年04月11日(日) 高速新料金 無料を掲げて選挙:終われば値上げとは


高速道路:上限料金制度を正式発表 割引廃止で実質値上げ
                 2010年4月10日  毎日
社説:高速新料金 無料を掲げ値上げとは
                 2010年4月10日  毎日
社説:高速割引見直し 値上げで建設費に回す無節操
                  2010年4月10日  読売新聞

 前原誠司国土交通相は9日、高速道路の新たな上限料金制度を正式発表した。

1、現行の「休日上限1000円」など既存の割引をほぼ全廃
2、普通車は曜日を問わず2000円を上限、車種別に上限料金を設ける。
3、走行距離が70キロ未満の普通車は現在の割引廃止で実質値上げ
4、時間帯割引や大口・多頻度割引は、廃止されれば輸送業者などの負担が増す
 
 上記をみると公約とは一体、何なのだろうかと考えさせられる内容だ。無料化のための予算が大幅に削減されたほか、現在実施している料金割引のために用意された財源を高速道路建設に回すというから驚きだ。

 具体的には、自民党時代の料金割引の財源のうち1・4兆円を高速道路建設に回すのだ。70キロ未満の短距離利用者が1・4兆円の負担増になるのだ。緩和措置があるものの、値下げの財源を建設に流用するのはルール違反だ。この内容に接すると、高速無料化の旗は選挙の勝つための手段であったと言わざるを得ない。

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高速道路:上限料金制度を正式発表 割引廃止で実質値上げ
                 2010年4月10日  毎日

 前原誠司国土交通相は9日、6月から実施する高速道路の新たな上限料金制度を正式発表した。現行の「休日上限1000円」など既存の割引をほぼ全廃し、普通車は曜日を問わず2000円を上限とするなど、車種別に上限料金を設ける。走行距離が70キロ未満の普通車は上限に届かないため恩恵を受けられない上、割引廃止で実質値上げとなり、反発も出ている。
 前原国交相は会見で、「上限1000円」などで休日に渋滞が集中している現状に言及し、「自公政権が導入した現行制度の課題を解消する」と新制度の意義を強調した。
 上限は軽自動車1000円、中・大型車5000円、トレーラーなどの特大車は1万円。政府が導入を促していたETC(自動料金収受システム)の有無にかかわらず対象となる。ガソリン1リットルで20キロ以上走行する「エコカー」は軽並みの1000円とするが、実施は7月以降。
 時間帯割引や大口・多頻度割引は、廃止されれば輸送業者などの負担が増すため、10年度に限り縮小して残す激変緩和措置を講じる。本州四国連絡高速道路の軽自動車と普通車は上限を1000円高くし、フェリー業界に配慮を見せた。
 新料金制度は、高速料金の一部無料化とあわせて実施。必要に応じて11年度以降に制度を見直す。
 また、首都高速と阪神高速は今年末から来年初めをめどに、関係自治体の同意を得た上で、現行の定額料金(普通車700円など)から、走行距離に応じて変わる距離別料金(普通車500〜900円、大型車1000〜1800円)に移行する。距離別料金はETC搭載車だけで、現金利用者には一律に上限料金が課されて値上げとなる。また、高速道路会社に投入した割引財源で、現在残っている2・6兆円のうち1・4兆円を、2車線路線の4車線化工事などに充てる。
 時間帯割引の全廃では、上限価格以下の利用が多い輸送業者は実質値上げとなる。休日限定だった普通車の上限料金が平日にも広がって長距離利用が増えれば、鉄道やバスの利用者は減りかねない。JRの旅客6社は「休日1000円」で年間計250億円の減収に見舞われたが、新料金で減収幅は倍増する見込みだ。【久田宏】

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社説:高速新料金 無料を掲げ値上げとは
                  2010年4月10日 毎日
 政権交代後の重要施策として民主党が掲げていたのが高速道路料金の無料化だった。しかし、発表された新たな料金制度によると、長距離の利用以外は、負担が増えてしまう。
 無料化のための予算が大幅に削減されたほか、現在実施している料金割引のために用意された財源を高速道路建設に回すことにした。その結果、こうならざるを得なかったのだろうが、公約とは一体、何なのだろうかと考えさせられる内容だ。
 確かに、無料の区間もできる。しかし、地方の2車線区間を中心に37路線の50区間で、無料化対象外の首都高速と阪神高速を除く全路線の約18%にすぎない。
 料金の上限を普通車で2000円とした。現在の1000円よりは高いものの、休日に限り、対象車も自動料金収受システム(ETC)を搭載した普通車以下に限定されているのと比べ、わかりやすい。平日も対象となるため、休日に集中している渋滞は改善に向かうだろう。
 ただし、上限の2000円は約70キロを走行した場合の料金に相当し、これより短い場合は、現在の割引がなくなるため、値上げとなる。
 一方、恩恵を受けるのは長距離を運転する場合だ。どこまで走っても普通車ならいつでも2000円、中・大型車でも5000円だ。休日1000円がなくなるとはいえ、それでも十分に安い。しかも、ETCの搭載は不要だ。
 ただし、長距離の利用が増えれば、鉄道やバスが影響を受けることになる。鉄道から自動車へとシフトすれば、二酸化炭素の排出量は増える。温室効果ガスの削減で現政権が掲げている高い目標の実現と、どう整合するというのだろうか。
 料金割引の財源のうち1・4兆円を高速道路建設に回す。しかし、値下げの財源を建設に流用するのはルール違反だ。国会の監視をすり抜ける便法として、同様のことが繰り返され、無駄な道路の建設が続くことにつながらないか、心配だ。
 フェリーに配慮し、本州四国連絡道路は割高に設定したものの、減収となる鉄道やバスへの影響については、どう対応するのだろうか。
 簡素化などのメリットはある。しかし、無料化を掲げながら、利用者の多くが現状より値上げとなってしまう。しかも、それは、道路建設に資金を回すようにしたためだ。
 高速料金の無料化は、物流などのコストを下げて、経済の活性化につなげることが目的だったはずだ。この点も含め、昨年の総選挙での民主党の主張と、今回の高速料金制度がどのようにつながるのかを、へ理屈や言い訳、強弁ではなく、きちんと説明してもらいたい。
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毎日新聞 2010年4月10日 2時31分


社説:高速割引見直し 値上げで建設費に回す無節操
2010年4月10日02時18分 読売新聞
 高速道路建設費の確保に窮して、料金を実質的に値上げし転用する―。鳩山内閣がまとめた高速料金割引制度の見直し策を一言でいえば、こうなるだろう。
 6月実施の新制度では、利用者の多くが負担増となりそうだ。経済効果が高く、事故防止にも役立つ路線の新設・拡幅は妥当だが、高速道整備に否定的だった鳩山内閣の姿勢と明らかに矛盾する。
 いまだ旗を降ろさぬ高速道路の無料化政策にも反しよう。新制度に対する国民の理解を得るのは、容易ではあるまい。
 新しい割引制度は、自公政権時代に導入された中身を、大幅に整理・統合するものだ。
 目玉だった、自動料金収受システム(ETC)を装備した車を対象にした土日・祝日限定の「1000円走り放題」は廃止する。早朝、深夜など時間帯ごとの割引も、今年度限りでやめる。
 その代わり、軽自動車は1000円、普通車は2000円、中型車以上は5000円などの上限を決め、それ以上の料金は取らないことにする。燃費のいい車を優遇する仕組みもある。
 土日ばかりでなく平日にも適用し、ETCの有無を問わない。このため、ETCを付けていない車や平日に遠出する場合、恩恵は確かに大きいだろう。
 だが、新制度には盲点がある。普通車などの平均走行距離は土日で約60キロ、平日なら約40キロだ。この程度走ったくらいでは料金が上限に達せず、支払うべき料金は現行より高くなるという。
 首都高速と阪神高速については年末をめどに、都府県ごとの区分と一律料金制をやめ、500円から900円を走行距離に応じて支払うシステムに変える。
 短距離の場合は割安になるが、長く走ると、負担増・減の二つのケースが出てくる。ドライバーも戸惑うのではないか。
 今回、料金割引制度を見直すのは、高速道路建設の財源確保のためである。
 料金割引の原資に国が手当てして残る2・5兆円から、今回の制度変更で使わずに済むようになる1・4兆円を、建設費に充てる計画だ。
 鳩山内閣が昨年末、民主党に高速道路の整備促進を強く要請されたことで、原資に目をつけた。
 建設費がどうしても必要というなら、きちんと予算化するのが筋だろう。一貫した高速道路政策が鳩山内閣にないから、こんな姑息(こそく)な手段を選ぶことになる。

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石田ふたみ