『日々の映像』

2010年04月03日(土) 世界の製造業部門が予想外のペースで拡大

1、日銀短観:景況感、4期連続改善 3月
                   毎日新聞 2010年4月1日
2、3月の製造業活動、世界的に拡大
                   2010年 4月 2日 5:57 JST
3、社説:日銀短観改善 攻めの経営の出番だ
                   2010年4月2日 毎日新聞
                     

日本経済は着実に明るさを増してきた。 そんな現状を、きのう発表された日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)が映し出した。 大企業の製造業の景況感は4四半期連続で改善している。中国などアジア向けを中心とする輸出の好調なのだ。エコポイントなど個人消費を刺激する政策の効果も続いている。
中堅・中小企業も景況感がよくなってほしいものだ。

日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、「企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でマイナス14と、昨年12月調査から11ポイント上昇し、09年6月調査から4期連続で改善した」(毎日から)と言う通り「景気の持ち直し」が確認されているのだ。しかし、報道の通り大手メーカーの多くは、生産拠点をコストの安い中国など海外に移す動きが多くあるので、劇的な景気回復は難しいと思わなければならない。
1日に発表された世界指標では、世界的に製造業部門が予想外に速いペースでの拡大を示し、世界の景気回復が進んでいる明らかになった。 3月の米製造業活動は過去約6年間で最も速いペースで拡大した。3月の水準はエコノミスト予想を上回るとともに、2004年7月以来で最高水準となっている。この波がやがて日本経済に好影響を与えると期待したい。

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日銀短観:景況感、4期連続改善 3月
毎日新聞 2010年4月1日

 日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でマイナス14と、昨年12月調査から11ポイント上昇し、09年6月調査から4期連続で改善した。日銀は「景気の持ち直しが確認された」(幹部)と見ている。ただし、収益回復は新興国向け輸出や政府の景気対策に支えられた側面が強い。中小・中堅企業にもようやく薄日が当たり始めたが、依然として厳しい状況に置かれた企業は多い。景況感はまだら模様で、内需主導の自律回復には程遠い。【永井大介、清水直樹】
 ◇自律回復は程遠く 「新規の仕事まったくない」町工場
 小規模の町工場が集中する東京都大田区。同区で30年間、汚泥ポンプの製造、保守点検業を営んできた男性(67)は「この1年間、新規の仕事がまったくない」と嘆く。
 受注の大半が公共事業だが、自治体が地元業者を優先し、東京以外での仕事がめっきり減った。社員は息子2人だけだが、男性はこの1年、無給の状態だ。「息子はほかの仕事に就いてほしい」と力なく語った。
 大田区産業振興協会によると、ピーク時の83年に9190カ所あった町工場は08年に4362カ所と半減した。跡地には高層マンションが建ち並んでいく。受注を仲間内で融通する「仕事回し」など、集積の強みを武器にしてきたが、08年秋のリーマン・ショック後の世界同時不況で被った傷は大きく、廃業・撤退による「虫食い」は止まらない。
 看板がなければ民家と見間違うほどの「並木金型」の作業場では、20〜30代の3人が研磨機で金型に磨きをかけていた。指先の微妙な感覚で1000分の1ミリの精度を保つ職人技の世界だが、大手メーカーの生産の海外移転という逆風に加え、不況の影響で昨年の最悪期には、受注量がリーマン・ショック前に比べ半分以下に落ち込んだという。
 創業35年の並木正夫会長(69)は、15人の職人を育て上げた。今では設計にパソコンの三次元デジタルデータも使うが、「高精度な金型を作るには、職人の経験や技術が不可欠」と力説する。
 しかし、大手メーカーの多くは、生産拠点をコストの安い中国など海外に移す動きに加え、国内生産のコストも極力抑えるため、海外で安い金型を作って日本に持ち込み、下請けの部品メーカーに使うよう要請する動きを強めている。
 部品メーカーに金型を納入する国内の中小零細の金型メーカーはまさに存亡の機にある。並木会長は「日本のものづくり文化が壊れないか」といらだちを隠さない。
    ◇
 「今週は稼働率が高いな」。樹脂加工メーカー、カツロン(東大阪市)の大阪府八尾市の工場で、石川明一社長(40)がほっとした表情を見せた。3月下旬のこの日は、23本の製造ラインのうち18本が稼働、自動車の配線などを通すチューブや、手すりの表面に巻く塩化ビニール素材などが仕上がり、次々と段ボール箱に詰められる。金融危機後は一時、半分近くを停止したが、3月の売上高は14カ月ぶりに前年同月を上回りそうだ。
 昨年4月、3代目社長に就任して1年もたたない石川さんを、取引先の破産が直撃した。取引高で五指に入るだけに影響は大きいが、「再就職が難しい今、リストラは絶対にできない」と人員削減は見送り。本社にあった工場を倉庫に転換し、倉庫の借り賃を削るコスト削減で黒字を維持したという。
 ◇自動車・電機、収益回復 新興国の需要が後押し
 3月短観は、大企業から中小・中堅に景気回復が波及する道筋を描いたが、石川さんは「とても『回復』とはいえない」。住宅版エコポイントやエコカー減税などの政策効果もあって受注は上向いてきたが、「あくまで時限的な施策。効果が切れた後は……」と気をもんでいる。
 3月短観では、自動車や電機メーカーの業況判断指数が大幅に上昇した。新興国の需要に加え、景気対策が消費を底上げしており、全体的にみて収益回復基調は鮮明だ。
 トヨタ自動車は大規模リコール(回収・無償修理)の影響で米国では一時的に販売が落ち込んだが、3割増だった中国など新興国に加え、国内でもハイブリッド車人気が続き、2月の世界新車販売台数は前年同月比14・8%増とプラスを維持した。
 ホンダや日産自動車も10年3月期の業績予想を大幅に上方修正。電機大手もエコポイント効果で薄型テレビが好調で、パナソニックやソニーなどが上方修正している。短観では、10年度は3年ぶりの増収増益が見込まれ、「企業の収益は相当しっかりしてきた。多少の円高進行があっても耐えられる」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏)との見方が強まっている。
 しかし主要国は財政悪化で景気対策にも限界があり、「政府に支えられた業界ほど、先々苦しむ」(アナリスト)可能性がある。昨年末に自動車の販売支援策を打ち切ったドイツでは、2月の新車販売が3割減と急減した。国内も9月末に補助制度が終了する方向で、業界では「需要の先食いの副作用で、下期にかけて販売不振に陥る」(大手メーカー幹部)と警戒している。
 短観では、輸出企業の業績回復が非製造業にも広がっていることが確認され、「本格回復の芽」は見えた。政策効果が切れる前に、企業部門の回復が家計に波及し、内需が自律的な回復軌道に乗るかどうかが、今後の焦点となる。【大久保渉、清水憲司】
◆日銀短観の業況判断指数(DI)の推移◆
        09年 10年
        12月 3月  6月
【大企業】
製造業     ▼25 ▼14 ▼ 8
石油・石炭製品 ▼22 ▼ 5 ▼17
鉄  鋼    ▼48 ▼37 ▼33
電気機械    ▼20 ▼12   2
自動車     ▼21 ▼ 2 ▼12
生産用機械   ▼60 ▼40 ▼21
非製造業    ▼21 ▼14 ▼10
建  設    ▼24 ▼25 ▼24
不動産     ▼13 ▼ 8 ▼ 4
小売り     ▼27 ▼16 ▼11
運輸・郵便   ▼30 ▼19 ▼18
飲食店・宿泊  ▼50 ▼38 ▼28
【中小企業】
製造業     ▼41 ▼30 ▼32
非製造業    ▼34 ▼31 ▼37
※主要企業を抜粋。▼はマイナス。10年
 6月は見通し
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毎日新聞 2010年4月1日 22時05分(最終更新 4月1日 22時07分)

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3月の製造業活動、世界的に拡大
2010年 4月 2日 5:57 JST

 1日に発表された3月の指標では、世界的に製造業部門が予想外に速いペースでの拡大を示し、世界の景気回復が進んでいる明らかな兆候が示される格好となった。またこれにより、各国の中央銀行が金融政策の引き締めに動く可能性が高まるとの見方が広がっている。
 こうした指標を受けて、世界の株価や商品相場、ドル以外の通貨が広範にわたり上昇している。ダウ工業株30種平均は1日午前遅くの取引で前日比62.88ドル高となり、電子ブローカーシステムEBSによると、ユーロ相場も朝方の下落から反発し、対ドルで1ユーロ=1.35ドル付近で推移。

 3月の米製造業活動は過去約6年間で最も速いペースで拡大した。米サプライマネジメント協会(ISM)がこの日発表した3月の米製造業景況指数は59.6と、2月の56.5ならびに1月の58.4から上昇した。3月の水準はエコノミスト予想の57.0を上回るとともに、2004年7月以来で最高水準となった。同指数では50が製造業活動の拡大と縮小の境目を示す。
 注目される同指数は米経済がリセッション(景気後退)を徐々に抜け出していることを示す最も一貫した指標の一つとなっており、同指標の拡大が続いていることは、米経済の緩やかな回復が進んでいることを示唆している。
 これに先立ち、アジアと欧州でも同様に良好な指標が発表された。
 マークイットが1日発表したユーロ圏の3000社を対象とする調査に基づく3月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)は56.6と、2月の54.2から上昇した。これは過去40カ月間で最も高い水準となった。また、同指標は、様々な基準からユーロ圏の製造業が2008年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破たんに誘発された今回の金融危機前以来見られていない水準に戻っていることを示している。
 ユーロ圏の製造業部門の拡大はドイツとフランスという域内の2大経済国の経済成長率の加速がけん引しており、特に、過去10年間で最も速いペースでの増加を示した新規輸出受注が貢献した。
 マークイットの首席エコノミストはリポートで、「ユーロの下げと世界の需要増で、3月の輸出の伸びは過去10年間で最高水準に達した」と指摘。さらに、「その結果、3月のPMI指数を上回ったのは同統計が実施されている過去12年間で2回だけとなり、人員削減速度はリーマン破綻以来で最も遅いペースに鈍化した」と言及した。
 一方、中国物流購買連合会が1日に発表した3月の中国購買担当者景気指数(PMI)は55.1と、2月の52.0から上昇した。同指数は13カ月連続で拡大を示した。

記者: Michael Casey

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社説:日銀短観改善 攻めの経営の出番だ
                  2010年4月2日 毎日
 日銀が3カ月に1度実施している短観の3月調査で、企業の景況感が一段と改善した。景気が「よい」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた業況判断指数は、大企業・製造業がマイナス14となり、昨年12月の前回調査(マイナス25)から11ポイントの大幅上昇である。
 昨年の3月短観も、同じ新年度初日の4月1日に発表されたが、内容は惨たんたるものだった。大企業・製造業の業況判断指数は「過去最悪」のマイナス58、自動車産業にいたってはマイナス92まで落ち込んだ。
 そこから4期連続の改善である。自動車は今回、マイナス2まで上昇した。もちろん、回復が遅れている業種もある。中小企業はまだ厳しい。大企業・製造業の改善も、輸出先であるアジアの成長に助けられている面が大きい。大幅改善とはいえ業況判断指数はまだマイナスの領域である。それでも1年で、ここまで回復した。企業はそろそろ自信を持って攻めの経営に踏み出していい。
 短観の中で特に改善が著しいのが新年度の収益見通しである。経常利益は製造業を中心に軒並み前年度比2けたの増加を見込んでいる。問題はこの利益を企業がどう使っていくかだが、気になる傾向がある。リーマン・ショック以降、企業が蓄えている現金や預金が積み上がっているのだ。総額で210兆円規模に膨らんだ。これを消費につながる賃金に還元したり、新たな投資に回したりしなければ、景気はよくならない。ところが企業は、賃上げにも設備投資にも極めて慎重なままである。
 確かに設備などの余剰感は残っているだろうが、設備投資といっても既存製品の増産につながるものばかりではあるまい。環境やエネルギー、娯楽・文化関連産業などで、これまでになかった製品や新サービスを生み出す余地は十分あるだろう。成長するための提携先も国内企業に限らない。いつまでもデフレを理由に縮こまっていては韓国や中国などの企業にチャンスを奪われるだけだ。
 政界には政府や日銀の追加刺激策を求める声もある。しかし、膨大な借金を抱えた財政に支出を増やす余力は乏しい。企業の資金不足が景気の足かせになっているわけではないのだから、日銀に追加緩和を求めるのもほとんど無意味だ。政策頼みの回復には限界がある。
 1日、会社更生手続き中の日本航空が開いた入社式で、稲盛和夫会長はこうあいさつした。「復活の成否は『必ず再生する』という不撓(ふとう)不屈の一心が持てるか否かだ」
 企業一社一社の成長が国の経済成長を支える。「必ず成長する」と経営者や社員が強く思うことから、新しい発想や成長戦略は始まる。
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毎日新聞 2010年4月2日 2時31分

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石田ふたみ