『日々の映像』

2010年02月14日(日) 枝野氏起用で「刷新」の新風が生まれるか



1、枝野行政刷新相:4月にも仕分け作業開始 就任会見で抱負
                     2010年2月11日  日経
2、社説:枝野氏起用―「刷新」するべきは何か
                     2010年2月11日  朝日
3、社説:枝野行政刷新相 改革の停滞感打開を
                     2010年2月11日 日経
4、社説2 思惑込めた枝野氏の起用(2/11)
                     2010年2月11日  日経

鳩山由紀夫首相は、仙谷由人国家戦略担当相が兼務していた行政刷新担当相に民主党の枝野幸男元政調会長を起用した。今回の人事には、小沢一郎幹事長に距離を置き、政治資金問題でもけじめをつけるよう主張していた。あえて「非小沢派」とされる枝野氏を起用することで、首相には人事権での指導力をアピールする狙いがあったとみられる。

 枝野氏は国民の注目を集めた「事業仕分け」を統括役として仕切った。行政刷新会議は4月以降、特殊法人などを対象に第2弾の事業仕分けを実施する予定だ。「政治とカネ」の問題や政策決定のもたつきで内閣支持率は急落、不支持率が上回っている。事業仕分けに再度注目を集め、政権浮揚の足掛かりとする計算もあるだろう。

 ただこの人事だけで失速気味の政権の空気を変えることができるだろうか。 枝野氏は党内でも有数の論客であり、首相は以前、首相補佐官などに起用する意向を示していた。だがなかなか決まらず、小沢氏が了承しないためとの見方が出ていた。首相は今回の起用を小沢氏に説明し「全く異論はない」と了承を得たという。

小沢氏は逆風にどう対処しようとしているのか。世論調査では「幹事長を辞めるべきだ」との回答が72%に達し、小沢氏の続投を認めた首相の対応にも「納得できない」という声が78%と圧倒的だった。「政治とカネ」の問題にケリがつかないまま7月の参院選に臨むのだろうか。国民の認識とのギャップ深刻だ。首相は党の最高責任者として自らの献金問題を説明するとともに、小沢氏らにも国会で説明責任を果たすよう指示すべきだ。


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1、枝野行政刷新相:4月にも仕分け作業開始 就任会見で抱負
                     2010年2月11日  日経
 枝野幸男行政刷新担当相は10日、内閣府で就任会見をし、公益法人や独立行政法人の事業を対象にした事業仕分け第2弾について「10年度予算案が成立してできるだけ早く実施し、税金の効率的な使い方を国民目線で見直す仕事を進めたい」と述べ、4月にも仕分け作業に入る考えを明らかにした。その上で「制度のあり方まで視野に入れた形で仕分けをしたい」と語り、制度改正を含めた抜本改革を目指す意向を示した。
 枝野氏は鳩山政権の役割について「大きな柱は、旧来の時代に合わなくなった行政を変えていくことだ」と強調した。
 枝野氏はこれまで民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体を巡る事件に対し、「一定のけじめ」を求めるなど、小沢氏と距離を置いてきた。10日夜、民放の報道番組に出演した枝野氏は「この政権は国民から高い期待を背に受けないとミッションを実現できない。幹事長であれ一般議員であれ、国民からの期待と信頼を維持し高めるため、何が最善かを考えないといけない」と語った。
 一方、行政刷新担当の兼務を解かれた仙谷由人国家戦略担当相は、公務員制度改革の担当を続けるほか、鳩山由紀夫首相が政権の理念として掲げる「新しい公共」担当を兼務する。【小山由宇】

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2、社説:枝野氏起用―「刷新」するべきは何か
                     2010年2月11日  朝日

 鳩山由紀夫首相が、枝野幸男・元民主党政調会長を行政刷新相に充てる人事に踏み切った。
 首相は「国民のみなさんに、民主党に対する信頼を再び高めていくために、彼に陣頭指揮してもらいたい」と、その手腕に期待感を示した。
 枝野氏は、昨年秋の「事業仕分け」で統括役を務め、担当閣僚だった仙谷由人国家戦略相を支えた人物だ。
 この春には、独立行政法人や公益法人、特別会計を見直す事業仕分けの第2弾が控えている。仕分けでマニフェスト実現の財源を工面するのは至難の業だ。昨秋に続く二匹目のドジョウがいるとは限らない。
 政策に明るく、経験も積んだ枝野氏のここでの起用は、順当といえる。
 ただ、今回の人事の意味合いがそう単純でないのは言うまでもない。
 枝野氏は党内で、小沢一郎幹事長と距離を置く有力政治家の一人だ。そのせいで、鳩山政権発足後、無役を余儀なくされたともささやかれてきた。小沢氏がかかわる土地取引事件については「身を引くことも含めて、けじめをつけることが必要」と主張している。
 政治とカネの問題で政権への信頼は揺らぎ、内閣支持率は続落している。選挙、国会から政策にまで至る「小沢支配」「小沢依存」の見方が定着し、鳩山首相への逆風が強まる。
 事件がひと区切りしたタイミングを見計らい、「非小沢」の枝野氏を起用することで、自分は小沢氏の言いなりではないと示したい。そんなねらいも、首相にあったのではないか。
 肝心なのは、それが首相の「小沢離れ」を直ちに意味するわけではないということだ。
 世論の多くは今、「小沢氏は幹事長を辞任すべし」としている。しかし、首相は小沢氏の続投を容認している。枝野氏の起用も、小沢氏の了解を得たうえでのことだ。
 小沢氏が受け入れられる範囲内で、なんとか政権の再浮揚を探っているだけでは、と見られてもしかたない。
 いま首相がなすべきなのは、小沢氏に国会の場で大方の納得のいく説明をするよう強く促すことである。不起訴は嫌疑が不十分だったからに過ぎず、潔白の証明ではない。説明責任を逃れる免罪符にはならない。
 それができないのであれば、首相はいずれ幹事長更迭の決断に追い込まれることも覚悟しなければなるまい。
 政権が負った傷は深い。ばんそうこうを張るだけで止血するのは難しいかもしれないが、そんなばんそうこうの役回りでは枝野氏も不本意だろう。
 「刷新」するべきなのは、よどみつつある政権と民主党内の空気である。その一役を枝野氏に期待したい。もとより、その最終的な責めを負うのは首相以外にない。
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3、社説:枝野行政刷新相 改革の停滞感打開を
                        2010年2月11日 毎日
 政権浮揚の足がかりとなるだろうか。鳩山由紀夫首相は民主党中堅、45歳の枝野幸男元政調会長を行政刷新担当相に起用した。
 首相と小沢一郎幹事長の資金管理団体を舞台とする事件が政権を直撃する中で鳩山内閣の支持率は落ち、肝心の政策調整に影響しかねない状態だ。党内で小沢氏と距離を置く勢力の代表格とも言える枝野氏の起用が、小沢氏に依存せず指導力を発揮しようとする首相の意欲の表れならば評価できる。枝野氏もおくせず、懸案の公益・独立行政法人改革に切りこむべきである。
 今回の人事は、与野党からは一定の意外感をもって受け止められたはずだ。
 民主党結党時から若手ホープとして「日のあたる道」を歩んできた枝野氏は、肝心の政権交代後は無役のままだった。行政刷新担当相の前任だった仙谷由人氏の引きで昨年、「事業仕分け」の仕切り役を務め脚光を浴びたが、その後内定したはずの首相補佐官への起用も、なかなか実現しなかった。枝野氏は党を仕切る小沢氏と一貫して距離を置いている。このため、首相の小沢氏への配慮がこうした処遇にも影響しているとみられていた。
 それだけに、入閣は思い切った人事だ。政権のいわゆる「二重権力」問題は、首相らが過剰に小沢氏の意図を意識し、なかなか決断に踏み切れないことにむしろ問題がある。「反小沢」勢力の象徴である枝野氏が入閣し政務に忙殺されるのだから、小沢氏側にとってもあながち不利な展開ではあるまい。窮余の一策とはいえ、首相が政権運営に危機感を抱き、可能な限りの人材活用を図るのは、むしろ当然と言えよう。
 枝野氏の責任の重さは言うまでもない。同氏が統括した10年度予算案の「事業仕分け」は確かに予算の透明さを増した点で、評価できる。だが実際のムダ削減効果には限界があり、財務省が運営を主導した、との批判もつきまとった。
 首相は夏の参院選に向け独立行政法人や公益法人を対象とする事業仕分けを行い、政権浮揚につなげたい考えだ。両法人に官僚OBが代々天下りし、多額の国費が支出される既得権益の構造にどこまで切りこめるか。昨年の「仕分け」以上に国民から厳しく成果が吟味されることを、覚悟しなければならない。
 「政治とカネ」をめぐり政権が揺らぐ中、首相から閣僚へのにらみが利かず、改革の目標もかすみがち、という深刻な停滞を鳩山内閣は呈しつつある。枝野氏の起用は巻き返しの端緒にはなり得るが、局面転換は容易でない。首相自らが、その先頭に立たなければならない。
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4、社説2 思惑込めた枝野氏の起用(2/11)
                    2010年2月11日  日経
 内閣支持率の低落傾向に歯止めをかけ、何とか政権浮揚につなげたいという思惑だろう。

 鳩山由紀夫首相は仙谷由人国家戦略・行政刷新相の兼務を解き、民主党の枝野幸男元政調会長を行刷相に起用した。「予算のムダ削減」という看板政策の実現でその手腕が試される。小沢一郎幹事長と距離をおく枝野氏の起用で党内力学が変化するかどうかも、注目点である。

 国会の予算審議中に新閣僚の任命や担当替えがあるのは異例だ。鳩山政権では「政治とカネ」をめぐる問題で首相と小沢氏の元秘書らが相次いで刑事責任を問われた。内閣の体制見直しにより反転攻勢のきっかけをつかみたいとの思いは、首相の発言からも伝わってくる。

 首相は10日、枝野氏の起用理由を記者団に聞かれると、昨年の予算編成で「事業仕分け」の取りまとめ役だった点に触れて「第2弾をやらないといけない。国民の信頼を回復していくため、できるだけ早く陣頭指揮してもらいたい」と語った。

 鳩山内閣は発足からまもなく5カ月となる。2010年度予算案は「子ども手当」などの衆院選の公約を一部盛り込んだ結果、国債の新規発行額は44兆円強に上った。事業仕分けによる歳出削減は7千億円弱にとどまり、行政のムダ削減は現時点では掛け声倒れとなっている。

 政治主導で予算の組み替えなどを進めるため、閣僚の兼務を解消して体制を強化する判断は評価できる。枝野氏は民主党で政策通、論客として知られている。4月から実施予定の独立行政法人や公益法人などを対象とした事業仕分けの第2弾でぜひ成果を上げてもらいたい。

 枝野氏は党内では仙谷戦略相とともに前原誠司国土交通相を支持する議員グループに属している。小沢氏の幹事長続投に異論を唱えた数少ない一人でもある。今回の閣僚起用に首相と小沢氏の協力関係の微妙な変化を読み取る向きもある。

 小沢氏の元秘書で政治資金規正法違反の罪で起訴された石川知裕衆院議員は民主党を離党する方向となった。だが、これで幕引きとはならない。信頼回復のために、首相や小沢氏は、国会の場でさらに説明責任を果たす必要がある。








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石田ふたみ