『日々の映像』

2010年01月20日(水) 日本航空:負債総額は2兆3221億円の破たん

報道
1、日本航空:会社更生法の適用申請…再生機構も支援決定
                    2010年1月20日 毎日
2、社説 慢心し経営改革怠った日本航空の挫折(1/20)
                    2010年1月20日 日経
3、社説:日航再建 親方日の丸から脱却を
                    2010年1月20日 毎日
日本航空がこんなボロ会社であったことに唖然とする。
 経営危機に陥っていた日本航空は19日、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。負債総額は2兆3221億円(グループ2社含む)に上り、金融機関
を除く事業会社の経営破綻(はたん)としては過去最大の破たんとなった。

日航は8676億円の債務超過で会社更生のシナリオの骨子は以下だ。
・金融機関などの債権約7300億円のカット
・株式の100%減資(日航の株式は紙くずになる)
・機構が3000億円以上を出資。
 上記の他に企業再生支援機構の融資があり公的支援は9000億円に達する。仮に再建が頓挫すれば、巨額の国民負担が発生する構図であろう。

 子会社は100社もあるとのことで、稲盛和夫の新体制でのチックが進むと債務超過は8676億円を大幅に超過するのではないかと思う。
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1、日本航空:会社更生法の適用申請…再生機構も支援決定
                  2010年1月20日 毎日
  経営危機に陥っていた日本航空は19日、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。負債総額は2兆3221億円(グループ2社含む)に上り、金融機関を除く事業会社の経営破綻(はたん)としては過去最大。日本を代表する航空会社だった日航だが、08年の金融危機後の航空需要の急減などに直撃され、自力再建の道を断たれた。官民共同出資の企業再生支援機構が申請直後に日航の支援を決定、グループで1万5700人の人員を削減するなどの事業再生計画を発表した。日航は公的管理に入り、機構は3年以内の再建を目指す。【大場伸也】
 ◇負債、最大規模2.3兆円
 政府も同日、日航支援の声明を発表し、資金繰りや安全運航に万全を期す方針を表明した。日航は本業のもうけを示す営業損益が10年3月期に2651億円の赤字に転落する見通しを発表した。
 日航の西松遥社長は19日付で引責辞任し、京セラの稲盛和夫名誉会長が2月1日付で実質的な最高経営責任者(CEO)として会長に就く。東京都内で会見した西松氏は「心からおわびします。我々は最後のチャンスをいただいた。強い会社として生まれ変わると確信している」と述べた。
 機構によると、日航は8676億円の債務超過(10年3月末見通し)。金融機関などの債権約7300億円のカットや100%減資を実施するとともに、機構が3000億円以上を出資し、債務超過を解消する。経営の重荷となっていた企業年金は、OB・現役社員が減額に同意し、年金基金は存続する。
 機構は6月末までに詳細な更生計画案を提出し、8月末までの裁判所認可を目指す。
 政府は19日、日航が就航している三十数カ国・地域に、安定運航への協力を要請した。前原誠司国土交通相は会見で「今日が再生の出発点となる。安心して日航を利用し、取引を継続していただける」と語った。
 ◇会社更生法
 経営に行き詰まった企業の再建手続きを定めた法律。経営陣は原則退任し、裁判所が選任した管財人に経営を委ねる。管財人は通常1年以内に再建策を盛り込んだ更生計画案を策定。債権者らの集会で可決されれば、裁判所が計画を認可する。

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2、社説 慢心し経営改革怠った日本航空の挫折(1/20)
                    2010年1月20日  日経
 日本航空(JAL)が19日、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、法的整理の道を歩むことになった。売上高1.4兆円、人員5万人を抱える日航のつまずきは、企業経営の反面教師として示唆に富んでいる。

 1986年まで日本と外国を結ぶ唯一の国内航空会社だった日航は、海外へのあこがれをかきたてる存在だった。操縦士や客室乗務員は子どもたちの人気の職業であり、大学生の就職人気ランキングでも常に上位を占めた。

環境変化を直視せず

 強い輝きを放った有名企業が、なぜ転落したのか。85年の日航機墜落事故や、海外ホテルの買収の失敗などいろいろな事件はあったものの、日航の経営が本格的におかしくなるのは21世紀に入ってからだ。

 90年代の日本経済は「失われた10年」と言われたが、航空市場は例外的に高成長を続けた。日航が様々な問題を抱えていたにしても、右肩上がりの環境がそれを覆い隠した。

 だが、世紀が変わって、より直接的には2001年9月の米同時テロを転機として市場の伸びが止まった。その後も新型肺炎の流行や金融危機の発生で需要は大きく下振れし、業績は低空飛行を余儀なくされた。

 過去10年の日航の合算純損益は1千億円を軽く突破する巨額の赤字だ。それでも破綻を免れてきたのは、ひとえに公的金融機関の支えがあったからだ。

 だが、状況が悪化しても、危機感はなかなか浸透しない。部門間の対立や複雑な労使関係も改革のスピードを鈍らせた。組織全体が「いずれ市場は回復する」という希望的観測にしがみつき、抜本的なリストラは先送りされた。

 その象徴が今回の再建でも大きな問題になった企業年金だ。積み立て不足は10年以上前から指摘されていたが、OBの反発を恐れて、手をつけなかった。ライバルの全日本空輸が早くも03年に後年度負担の発生しない確定拠出型の年金を導入したのとは対照的だ。

 02年の日本エアシステムとの統合は思い切った改革を進める一つのチャンスだった。再編を機に余剰設備や人員を整理するのは、経営の定石だが、ここでも動きは鈍かった。「統合で巨大化すれば、もうつぶれることはない」。こんな慢心が経営陣を支配したのかもしれない。

 日航を追い詰めたもう一つの要因は自由化の進展、競争の激化だ。98年にスカイマークなどが新規参入し、東京―福岡などの幹線で価格競争が加速した。民営化の成功で体力を回復したJR各社は新幹線の高速化に乗り出し、空の客を奪った。

 世界的にもオープンスカイ(航空自由化)政策が広がった。スイスやオランダではナショナルフラッグと呼ばれる代表的な航空会社が破綻したり、他社に吸収されたりした。日航経営陣に十分な想像力があれば、「明日は我が身」の危機感を持ったかもしれないが、残念ながらそうはならなかった。

 米経営学者のジェームズ・コリンズ氏は企業が衰退する段階を「成功によるおごり」「規律なき膨張」「リスクと危うさの否認」「ひたすら救世主にすがる」と分析した。

 過去の成功体験にしがみつき、環境変化による経営リスクを直視せず、最後は政府に頼るしかなかった日航の転落は、まさにこの段階を正確になぞったかにみえる。

赤字止血が優先課題

 こうした経営の問題とともに、日航を取り巻く行政や政治の問題もむろん大きい。今年春に開港する茨城空港は当初年間81万人の利用を想定したが、実際には10万人強にとどまる見込みだ。

 需要に関係なく各地に空港をつくり、航空会社に就航を迫る。こうした政官のふるまいが、日本の航空会社の経営基盤を弱め、国際的な「空の大競争」への対応を遅らせた。

 日航再建にあたって、企業再生支援機構などが投じる公的支援は9000億円に達する見通しだ。仮に再建が頓挫すれば、巨額の国民負担が発生する。そうした事態を避けるには、安全運航を堅持しつつ、「ヒト・モノ・カネ」の3点で、厳しいリストラを進めるしかない。

 法的整理を利用して再生を果たした米国の航空会社の事例をみても、人件費や路線網を大胆にカットしている。

 日航の平均賃金は下がったとはいえ、新興のスカイマークの400万円弱に比べれば2倍強の900万円弱の水準(08年度実績)にある。ほかにも関係会社や老朽機材の整理など改革の余地は多そうだ。とりあえず縮小均衡を志向し、赤字を止めることが最優先の課題である。

 一方で政府も過去の航空政策の何が問題だったかを総括してほしい。日航の挫折は航空政策の挫折でもあり、大胆な見直しが欠かせない。
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3、社説:日航再建 親方日の丸から脱却を
               2010年1月20日 毎日新聞
 日本航空が子会社2社とともに東京地裁に会社更生法の適用を申請した。同時に官民が出資する企業再生支援機構が支援を決定し、政府も日航の安定運航を支援する声明を内外に向けて発表した。
 昨年来、日航の再建問題で政府の対応は二転三転した。その間に信用不安が広がり、客離れを招いた。時間の空費が損失拡大につながったことを改めて強調しておきたい。
 日航の負債総額は、金融を除く事業会社では過去最大の2兆円規模に達する。その中には、政府保証付きの融資もあり、それが債務削減によって焦げ付く。穴埋めに投じられる税金は数百億円規模にのぼる。
 現時点で一般国民の負担が発生することになるわけで、日航はそれを自覚し、今後の事態に対処してもらいたい。
 役員の退任、従業員の整理は避けられない措置だ。また、債権放棄額が約7300億円にものぼることを考えると、株券が無価値となる100%減資という形で株主の責任を問うのも当然だろう。
 支援機構はスポンサーとして約3年後まで支援する。そのために3000億円以上を出資し、融資も6000億円の枠の中から実施する。しかし、再建がうまく進まず、それが焦げ付くことになれば、再び国民の負担が生じる。
 実質的な最高経営責任者(CEO)として会長に就く京セラの稲盛和夫名誉会長ら新経営陣、そして支援機構の責任は重い。安全運航の確保は絶対で、そのうえで、労務問題や派閥抗争といった日航の積年の課題を解決し、親方日の丸的な体質からの脱却を実現してもらいたい。
 採算性の悪い内外の路線の休止・減便を拡大することになり、利用者の反発が予想される。しかし、需要の少ない地方空港を次々につくり、路線の維持を求めてきたことも日航の経営の足を引っ張った大きな要因だ。そうした点を考えると、不採算路線からの撤退・縮小はやむを得ない措置だろう。
 今回の日航再建作業の開始を機に、日本の航空運輸のあり方についても、見直しを進めてほしい。
 前原誠司国土交通相は、地方空港乱立の原因となった空港整備勘定の廃止や、着陸料などの値下げに言及した。また、羽田空港のハブ空港化、さらに、関西の3空港のあり方という問題もある。これらの課題にも具体的に取り組んでもらいたい。
 人口減少の中で日本の航空産業が、活力を維持していくには、中国など東アジアの成長を取り込むことが必要だ。そうした視点での航空政策の転換も、日航の再生を後押しするはずだ。
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日本航空:会社更生法の適用申請…再生機構も支援決定
毎日新聞 2010年1月20日 2時40分






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石田ふたみ