『日々の映像』

2010年01月10日(日)  いまだかってない雇用不安


社説 未来への責任 労働市場を育て雇用不安の根を絶て(1/9)
                 2010年1月9日  日経

 いまだかって経験したことのない雇用不安は広がっている。日経の社説から」基本情報を取り上げよう。
1、完全失業率は5%台と高い(11月の完全失業者数は331万)
2、企業が抱える過剰雇用、いわゆる「企業内失業」が600万人にのぼる
3、非正規社員は09年7〜9月に平均で1743万人、勤労者3人に1人を占める。
4、15〜24歳の完全失業率は09年11月で8.4%にのぼる。
5、労働力調査(基本集計) 平成21年11月分(速報)結果
 http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm

主な産業別就業者数及び1年間の増減数
   
製造業・・・・・・・・・・・・・・・・ 1063万人と74万人減少
卸売業,小売業・・・・・・・・・・   1023万人と45万人減少
サービス業(他に分類されないもの)・・ 474万人と24万人減少
建設業・・・・・・・・・・・・    520万人と19万人減少
医療,福祉・・・・・・・・・・    628万人と16万人増加
宿泊業,飲食サービス業・・・・・   384万人と10万人増加


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社説 未来への責任(5) 労働市場を育て雇用不安の根を絶て(1/9)
                 2010年1月9日  日経
 このままでは、若者たちに深刻な雇用不安を残すことになる。

 完全失業率は5%台と高い。さらに潜在的な失業として、企業が抱える過剰雇用、いわゆる「企業内失業」が600万人にのぼる、と2009年度の「経済財政白書」はいう。

 雇用調整助成金は失業を抑えるだけの応急処置にすぎない。鳩山政権はハローワークで再就職の相談に加え、生活保護や住居のあっせん手続きが一緒にできる「ワンストップサービス」を打ち出した。

自助努力がかなう国に

 だが肝心の職を増やさなければ、根本的な解決にはならない。

 景気が回復し、医療や環境の分野が育っても、なお残る雇用不安が大きく2つある。ひとつは正社員を望みながらパート、派遣などの非正規社員になっている人たちが、低賃金の仕事から抜け出しにくい点だ。

 非正規社員は09年7〜9月に平均で1743万人、社員3人に1人を占める。自ら望んで短時間労働を選ぶといった人は多い。一方で、高度な仕事への意欲がある非正規の人たちを単純労働などに就かせたままでは、労働力の無駄遣いになる。

 もうひとつの問題は若者の失業率の高さだ。15〜24歳の完全失業率は09年11月で8.4%にのぼる。将来の社会の担い手が仕事を通じて能力を高める機会を得られずにいる。

 人材を需要のあるところへ移す「労働市場」を育てることが、何より必要だ。非正規の人たちも技能や知識を身に付ければ、働いている企業のなかで賃金が高い仕事に移れ、正社員になれる仕組みが大切だ。非正規労働が急増した現実を直視し、思い切った改革が求められる。

 パートなど非正規社員を正社員に登用する制度は、小売業など一部にとどまっている。もっと産業界に広がってほしい。大事なのは、非正規と正社員の垣根を崩すことだ。企業の労使は、そのための制度改革に積極的に取り組むべきだ。

 電機業界の労働組合から成る電機連合は、賃金を製造、設計などの職種や、社員の能力、役割に応じて決める方式にし、企業が雇用契約を直接結ぶパートや契約社員にも広げる改革案を打ち出した。非正規の人たちを処遇の良い仕事に移りやすくする動きで、評価したい。経営側への働きかけを急いでほしい。

 「同一労働、同一賃金」の考え方にもとづき、職種によって賃金を決める制度を、真剣に考えるときが来ている。この制度は非正規社員と正社員の処遇が釣り合いをとれるようにするうえでも効果がある。

 現在は労働力が余剰だが、少子化が進めば、将来は深刻な労働力不足になることも、忘れてはならない。働く意思と能力のある人の総数である労働力人口は、足元の約6600万人から30年までに約1000万人減る。高齢者、女性や外国人労働者の活用が必要になる。

 その備えとしても、職種別の賃金制度が役立つ。その人の技術や知識に見合った報酬にすれば、高齢者や外国人などを集めやすい。

 若者の就業を促すには、職業訓練の見直しが欠かせない。製造業の海外移転が進んでいるのに、溶接、機械技術など、生産現場の仕事に就くための科目がまだ多い。

 岩手県北上市の北上情報処理学園は、コンピューターを使った設計などの講座を充実させ、電機や自動車業界への就職を増やしている。看護などサービス分野も柱に、職業訓練施設は教育内容を再編成すべきだ。

解雇のルールも議論を

 日本では企業が正社員を解雇しにくいため、人件費の負担が重くなり、非正規社員の賃金や新卒採用が抑えられているとの指摘がある。

 企業が業績悪化による整理解雇をする場合、判例から、人減らしを迫られるほど経営が危機にある、先にパートや期間従業員を減らすなど正社員の解雇を避ける努力をした――といった4つの条件を満たすことが必要とされている。

 正社員の解雇を防ぐ歯止めはもちろん必要だ。しかし現状は、正社員を守るために非正規社員の雇用を犠牲にすることも事実上認められている。非正規社員にしわ寄せがいく現状は是正するなど、解雇のルールを見直す必要があるのではないか。

 広島電鉄は路面電車の運転士ら非正規の約300人全員を昨年10月に正社員にした。代わりに勤続年数の長い正社員は、賃金を段階的に下げる。非正規社員の待遇改善で正社員があおりを受ける場合がある。

 正社員もある程度の痛みは受け入れる必要がある。企業の労使は、両者の合意の下で労働時間の短縮を進める欧州型のワークシェアリング(仕事の分かち合い)についても真剣に議論するときではないか。




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石田ふたみ