『日々の映像』

2009年12月26日(土) この予算をどう受け止めるか


社説:鳩山政権の予算案―仮設住宅を百年建築へ
                    2009年12月26日  朝日
社説:来年度予算案 財源「綱渡り」の危うさ
                     2009年12月26日 毎日
社説 無駄排除は掛け声倒れの鳩山予算案
                     2009年12月26日 日経
21、来年度の予算はどうなるの
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10399057202.html
22、09年度、国債依存度が初の5割超 財政、遠のく健全化
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10412262616.html
23、家計重視借金膨らむ、国債44兆円歳入の半分 10年度予算案
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10420159820.html

 今日は多忙で日々の映像に充てる時間がなった。どうにか資料だけは整理した。この予算をどう受け止めるかは、読者の判断にゆだねたい。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
社説:鳩山政権の予算案―仮設住宅を百年建築へ
                    2009年12月26日  朝日
 鳩山政権が来年度の政府予算案を発表した。
 官僚を中心に進んだ過去の編成作業は一変し、各省の大臣や副大臣が「政治主導」の主役を演じた。
 事業仕分けを駆使して要求を削り、公共事業は前年度より2割近く減らした。この変革は自公政権下では望めなかった。政権交代の意味を目の当たりにさせる師走の光景だった。
 紆余(うよ)曲折もあった。藤井裕久財務相は当初、閣僚に「要求大臣でなく査定大臣になれ」と呼びかけたが、現実には大臣らは各省の立場を主張し、要求額は膨れあがった。
 それでも9月の政権発足から100日あまりで年内編成にこぎつけた。精力的な作業ぶりには、及第点をつけていいのではないか。
 中身はどうだろうか。各省の概算要求総額が95兆円まで膨らんだため、最低限の財政規律が守られるかどうかがひとつの焦点になった。仕上がりは92兆円台で、「新たな借金」である国債発行は目標の44兆円枠をかろうじて守った。
■守られた国債発行枠
 世界経済危機の影響で税収が激減している。財政規律を重視して政権公約の目玉政策を修正・転換するべきか、それとも借金を膨らませてでも公約を貫くか。
 鳩山由紀夫首相はガソリン税引き下げの公約にこだわり、そのまま進めば国債発行枠を守れなくなる事態が予想された。助け舟を出したのは、民主党の小沢一郎幹事長だ。財政規律を求め、政権公約の一部実施を見合わせる党要望を出したことが、予算の方向を決めた。
 その結果、「政策決定の一元化」には大きな疑問符がついた。首相主導の仕組みをどうつくるか、今後の課題も浮き彫りになった。
 実現する政権公約の目玉は子ども手当だ。出産をためらっている人たちを励ます役割を期待したい。公立高校の授業料無償化も、若い世代向けの社会保障を充実する第一歩だ。いずれも鳩山内閣の「コンクリートから人へ」の基本理念を具体化する政策として意義深い。
 ガソリン税引き下げを断念した首相は「率直におわび申し上げねばならない」と国民にあやまった。しかし、国連演説で自ら打ち出した温室効果ガスの大胆な排出削減の方針と矛盾する公約だったのだから、それを見直したのは、妥当な判断だったと言える。
 この予算案を住宅にたとえれば「プレハブの仮設住宅」ということになろうか。
■積み残された真の課題
 一般会計92兆円は巨額の国債と、特別会計などの「埋蔵金」に依存している。埋蔵金の多くは積立金や基金の取り崩しで、毎年使える財源ではない。予算全体がいわば耐用年数1年限りの土台の上に建てられた仮住まいだということを忘れてはならない。
 めざすべきは百年、二百年の長きにわたって使える住まいだ。老いも若きも、子育て世代や将来世代も共に快適に暮らし続けることが可能な経済社会。それを支えることのできる財政システムである。堅固な土台や柱、つまり安定財源が欠かせない。
 今後の財源として有力なのは消費増税だが、自公政権は増税を先送りしてきた。鳩山首相もきのう、「4年間は消費税増税をしない」と述べた。
 だが国家運営と国民福祉に責任をもつ政権が、持続不能な財政から目をそむけ続けることは許されない。子ども手当ひとつをとっても、財源を将来にわたって確保しようとすれば、この問題を避けて通れない。
 子ども手当を翌年度から2万6千円に引き上げるには5兆円の恒久財源が必要になる。今回ほぼ使い果たす埋蔵金はもはやあてにできない。
 来年度は見送られた環境税も、環境エネルギーの総合政策とセットで早急に実現を図ることが必要だろう。
 この意味で、「国民の生活が第一」という政権公約の土台は危うく、重要な課題が積み残されたままだ。
■財政と成長の戦略を
 鳩山政権は財政再建の戦略を早急につくるべきだ。中長期の目標と、そこに至る道筋、必要な増税規模を国民に示し、理解を求め、実行に移す。それが王道ではないか。
 そのために欠かせないのが、しっかりした成長戦略だ。
 鳩山内閣には、崩れかかった国民の生活基盤を再興しようという強い意欲はある。だがそれだけで国民の安心は築けない。
 政権を取り巻く経済環境は来年も厳しい。デフレ脱却のめどは立っていないし、米欧経済も低迷しており輸出環境の劇的な改善も期待しにくい。だからこそ、あすの日本の産業と雇用の基盤をいかに築いていくのか。政権のメッセージがほしい。
 成長が期待されるのは、地球規模の課題となった環境、超高齢化社会を支える医療・介護、膨張するアジア内需などの分野である。これらの有望市場を切り開き、日本の経済成長の糧にする。その戦略を描くことは鳩山政権に課せられた任務だ。
 菅直人副総理兼国家戦略相が率いる国家戦略室が中心になって、近く成長戦略をまとめるという。政権をあげて取り組む意気込みを期待する。
―――――――――――――――――――――――――――

社説:来年度予算案 財源「綱渡り」の危うさ
                     2009年12月26日 毎日
 鳩山政権下で初となる予算案がまとまった。総額92.3兆円の超大型である。金融危機を受けた世界同時不況のさなかに組まれ、史上最大規模に膨らんだ09年度当初予算でさえ88.5兆円だった。概算要求段階の約95兆円からは縮小したものの、景気の現状を考慮しても驚くべき巨額さである。
 では、奮発した92兆円の買い物で我々は何を得るのだろう。規模に見合った対価を期待できるだろうか。「幾分は」が、その答えだろう。
 ◇「控除から手当」は前進
 初めての経験ずくめであることを思えば、初年度から満点を望むのは非現実的だ。予算編成をめぐるある程度の混乱もやむを得まい。例年なら編成作業が本格的に始まる9月半ばに政権が誕生し、普天間飛行場の移設問題など、他にも重大案件に直面する中で手がけた予算だった。
 安全優先の道を選ぶこともできただろうが、あえて公約した主要政策を初年度から野心的に実行しようとした姿勢は、評価したい。野党時代に描いた構想をその通り実現する難しさは国民もある程度、理解するだろう。
 ハンディを負っての初編成を、政権誕生から約100日で終えたこと自体、一定の成果といえそうだ。
 予算案の中身を見ても、子ども手当や公立高校の実質無償化など、民主党のマニフェスト(政権公約)で目玉政策とされた項目が完ぺきではないにせよ盛り込まれた。「所得控除から手当へ」に向けて、大きな一歩を踏み出したともいえる。
 また、地方交付税を積み増すなど、財源が限られた中で地方配慮の姿勢も強く打ち出した。一方で公共事業費は前年度比で大幅に減少し、「コンクリートから人へ」もそれなりに実行に移した形だ。
 何とか及第点は確保できたのではないだろうか。
 だが、危うい及第点であることは間違いない。歳入の約半分(48%)を借金でまかなう異常さである。さらに税収と借金でも足りない分は、「埋蔵金」など税外収入に頼ってしまった。これが10.6兆円にも上る。大半は一度使えば、なくなってしまうお金だ。
 今回の予算編成はなんとかクリアできたものの、来年以降、同じ手に期待することには無理がある。しかも、来年度予算に組み入れた子ども手当は、公約に掲げた額の半分程度だ。満額にするにはさらに財源が必要になる。マニフェスト関連の出費が11年度以降さらに増大する一方、埋蔵金に頼り続けられないとなると、今後のやりくりは一層、困難を極めよう。
 借金が膨らんだ分、その利払いも不安要因だ。政府は年2%の金利を想定しているが、国債の大量発行を受け投資家が将来に不安を募らせたら、金利は想定を上回りかねない。0.1ポイントの上昇で約1700億円の負担増になるという。
 政府は11年度以降の予算をどのように安定的に組み立てていくのか早急に作戦を練る必要がある。同時に、財政健全化に向けて、市場が納得するような具体的な中長期計画を一刻も早く提示しなければならない。時間との競争だ。
 ◇消費税上げの前に
 来年度予算案のもう一つの大きな欠陥点は、経済を活性化したり強くしたりするための方策が見えないことだ。子育てや高齢者、地方財政を支援する対策はふんだんに盛り込まれているものの、どのようにして国の経済が今後伸びていくのかをうかがわせる将来像が実感できない。
 財源面の制約や費用対効果を考えると、政府の資金で直接、特定の産業を育てる発想は非現実的だ。経済のグローバル化も意識した、戦略的な規制改革とセットで対策を打ち出す必要があろう。
 持続性が危ぶまれる予算になった背景には、中長期的な戦略をしっかり描くことなく編成に着手したことがある。大きな目標や政策の優先順位が閣僚や副大臣らに共有されていなかったため迷走を招いた。これは、国家戦略室が機能しなかったことが原因といっていい。
 安定的な財源を確保するため、消費税の引き上げを早急に検討すべきだとの声も今後高まるだろう。確かに真剣な議論を始める時に来ているのは間違いない。しかし、まずは、政府が税金を本当に無駄なく使い、将来世代のためにきちんとした計画を立て、それを実行に移す能力があることを示すのが条件だ。この政権に託せば国がよい方向に向かうだろう、といった国民の信頼なしに、増税を急いでも支持されまい。
 初の事業仕分けは、税金の使われ方に国民の広い関心を引き寄せた画期的な試みだった。とはいえ、あの程度で、無駄を根絶したとはとてもいえないはずだ。信頼を得るための道はまだ半ばである。
 今回の予算初編成を通して政権が何を学んだかが肝心だ。来年の予算編成からは、「政権交代したばかりだから」の言い訳は通用しない。
 鳩山政権は戦略室の機能を強化し、直ちに戦略作りに着手すべきだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
社説 無駄排除は掛け声倒れの鳩山予算案
                   2009年12月26日   日経
        
 鳩山内閣は9月の発足後、初めて編成した2010年度予算案を閣議決定した。一般会計規模は92兆3千億円、政策実行のための一般歳出は53兆5千億円といずれも過去最大となる。税収が37兆4千億円と著しく低迷し、国債の新規発行額も最大の44兆3千億円に膨れあがる。

 デフレが進み、景気の先行きに不安が残る中で、ある程度の予算規模の確保はやむを得ない。家計を支える子ども手当などの給付策も一定の効果は期待できる。だが、今回の予算案からは日本経済を確たる成長に導き、中長期で財政を安定させる道筋が見えてこない。

成長への道筋に疑問

 民主党政権は「コンクリートから人へ」を掲げ、福祉の充実に力を注いだ。衆院選で公約した子ども手当や診療報酬の増額などで社会保障関係費は27兆3千億円と前年度の当初予算より約10%増え、一般歳出の5割を超す。一方で公共事業関係費は約18%減の5兆8千億円に縮小した。

 民主党政権に求められたのは、長年の自民党支配で既得権に凝り固まった予算を根本から組み替え、経済の活力を高める配分を実現することだった。福祉重視への転換はその一端を示したとはいえるが、経済成長を力強く支える内容とは言い難い。

 最大の理由は、今回の予算が家計などへの「配る」政策に偏っていることだ。公費を元手にした子ども手当と高校授業料の無償化は家計が安心して消費に回してこそ効果が出る。そのためには、実体経済を支えるもう一つの主役である企業部門が活気を取り戻すことが必要だ。

 企業が収益を上げなければ人々の賃金や雇用が低迷し、不安を抱えた家計の消費も冷え込む。鳩山政権は医療、教育、農業、運輸などへの参入を促す規制緩和や税制改革を通じ、企業の創意工夫を引き出す努力をもっとしてほしい。

 公共事業費の大幅な削減も、日本経済全体で需要が供給を40兆円近く下回る現状でマイナスに働く可能性がある。誰が使うか定かでない過疎地の道路や橋は論外だが、渋滞解消など経済効果の高い都市部の交通インフラ、人口構造の変化に即応した保育所や介護施設などの投資は積極的に進めるべきだろう。

 政府が閣議了解した10年度の政府経済見通しは、国内総生産(GDP)について、名目で0.4%増、物価変動の影響を除いた実質で1.4%増とした。名目、実質とも2年続けて大幅マイナスが避けられない09年度に比べて大幅な回復を見込む。

 だが、今回の予算案だけで、この筋書きが実現するかどうかは心もとない。鳩山政権が近く出す経済成長戦略では、経済を着実に伸ばす青写真を明示してほしい。

 来年度予算案へのもう一つの懸念は一段と悪化した財政状況である。

 衆院選で民主党が訴えた「無駄の削減」は掛け声倒れだった。鳩山由紀夫首相は就任直後、マニフェスト(政権公約)に掲げた政策について、無駄の削減で「7兆円の財源は十分にメドが立つ」と明言したが、その言葉は実現していない。

 公開の議論を通じて予算の必要性を洗い直す「事業仕分け」は無駄の存在をはっきりさせる手法として有効だったが、歳出削減につながったのは7千億円弱にとどまった。他の項目でも切り込みは思うように進まず「無駄の削減で公約を実施する」という前提は崩れた。

 来年度は税収37兆円に対して国債発行が44兆円台と、第2次世界大戦直後の1946年度以来、初めて借金が税収を上回る事態になる。

中長期目標を早く示せ

 「霞が関埋蔵金」と呼ばれる財政投融資、外国為替といった特別会計の剰余金や公益法人の基金返納などをかき集め、10兆円を上回る税外収入を計上して、首相が掲げた「約44兆円」の国債発行額目標に何とか収めたのが実態だ。

 新たな借金と一時収入で、公約した給付策の帳尻を合わせる姿が長続きするはずがない。

 1年後の11年度予算編成はさらに困難が増す。民主党の公約に沿えば10年度は半額支給だった子ども手当が満額になるなど歳出が膨らむ一方、「埋蔵金」の税外収入を得るのも一段と難しくなる。財政との兼ね合いで、公約した項目を本当に実施するかどうかをもう一度点検しなおす必要がある。

 国と地方を合わせた長期債務残高は10年度末に862兆円とGDPの1.8倍に達する。日本の財政の持続性に金融市場が疑念を抱き、国債の金利が上昇するような事態になれば、財政運営はさらに苦しくなり、住宅ローン金利などの上昇で経済にも悪影響が及ぶ。

 鳩山政権は中期の財政見通しを来年前半に出すというが、あまりに悠長ではないか。歳入と歳出の両面から財政を立て直す道筋を、もっと早く打ち出すべきだ。

 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ