『日々の映像』

2009年12月05日(土) 深刻な雇用環境


1、社説:雇用不安 新成長戦略で働く場確保を        
      2009年11月30日読売新聞
2、社説:雇用対策 介護起業のすすめ
                    2009年11月28日 毎日
3、社説:デフレ危機 政策総動員で景気の悪化防げ
2009年12月1日 読売新聞

米国の米失業率、29州で悪化 14州で10%超えている
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10394699324.html
ユーロ圏失業率、9.8%で米国と同じである。
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10402167677.html
日本の失業率5.1%
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3080.html

企業が雇用調整助成金をもらっている対象社員は失業者の予備軍である。100万人以上いるこれらの対象者の動向によっては、失業率が更に増加する危険がある。総務省が11月27日発表した10月の完全失業者は344万人で、完全失業率は5.1%だった。全国の有効求人倍率も0.44倍と、低水準が続いている。

 地方経済は公共工事が激減したうえ、電機メーカの工場閉鎖も加わり実に深刻で、新潟でご三家と言われてきた建設業者のどこが倒産してもおかしくないという話が流れている。少なくとも経験したことにない雇用環境が展開されることは必至である。

 失業者を対象として講座を開いている関係で、深刻な雇用環境を肌身で感じている。明日月曜日、独立行政法人雇用・能力開発機構 新潟センターに陳情に行く予定になっている。主なテーマは来春4月卒業の専門学校生・高校生の就職難の問題である。高校・専門学校を卒業させるのがやっとという家庭が多いのだ。この新卒者には働く場所がないことは実に深刻と言わねばならない。
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1、社説:雇用不安 新成長戦略で働く場確保を        
 2009年11月30日01時11分 読売新聞


 昨年暮れは製造業の派遣切りが続き、日比谷公園に「年越し派遣村」ができた。1年たった今、雇用情勢は一段と深刻化している。
 政府の緊急雇用対策は、どれだけの効果が期待できるか。年の瀬を前に、政府は雇用対策に全力を挙げなければならない。
 ◆深刻な地方へのしわ寄せ◆
 岩手県の南西部に位置する北上市は、全国有数の工業団地を持つ。広大な平野と豊かな水資源に恵まれ、高速道路も整備された立地条件の良さが売り物である。
 大企業が次々と進出し、産業集積が進んだ成功例とされるが、その北上市にも、景気悪化の荒波が押し寄せている。
 市内北部の工業団地にある東芝子会社の岩手東芝エレクトロニクス。稼働中の半導体工場の横には広い敷地が残されたままだ。
 東芝は2008年、最先端のNAND型フラッシュメモリーの北上新工場を建設すると発表した。ところが、今年初め、半導体不況と業績悪化を理由に建設を延期した。新工場は着工されず2度目の冬を迎えようとしている。
 計画通りならば、来春以降に稼働し、1000人規模の新規雇用が見込まれていた。
 北上市は約3年前、企業進出ラッシュで有効求人倍率が1・9倍程度まで上昇し、人手不足の時期もあった。それが今や、約0・3倍に急落した。伊藤彬市長は、東芝の着工決断を待つ日々だ。
 「プラスワン」作戦――。一人でも多くの採用を求める陳情攻勢を市長はそう名付け、地元に進出した企業を回り続ける。
 こうした状況は北上に限らない。NECの液晶パネル工場閉鎖(鹿児島県出水市)、ホンダの新工場稼働延期(埼玉県寄居町)など、全国で相次いでいる。
 上場企業の今年9月中間決算は、業績改善を裏付けた。しかし、グローバル競争を勝ち抜くため、各社は、コスト削減を徹底しており、設備投資には慎重だ。
 総務省が27日発表した10月の完全失業者は344万人で、完全失業率は5・1%だった。全国の有効求人倍率も0・44倍と、低水準が続いている。
 鳩山政権は、「コンクリートから人へ」の政策転換を掲げる。頼みの公共工事が激減したうえ、企業リストラも加わり、特に地方経済にはダブルパンチである。
 政府は、10月に緊急雇用対策をまとめたのに続き、2009年度第2次補正予算に盛り込む追加雇用対策を検討し始めた。
 ◆求められる大胆な追加策◆
 失業者が増え続け、景気腰折れも懸念されており、ここは大胆な対策を打ち出すべきだ。
 政府の雇用対策は、仕事を失った貧困・困窮者や新卒者への支援のほか、介護や農林業などを中心に年度末までに約10万人の雇用創造を目指すことが柱である。
 ハローワークの支援機能や住宅支援策の強化を目指すが、旧来型の政策で目新しさはない。
 政府は、従業員を解雇せず休業などにとどめた企業を支援する雇用調整助成金の要件を緩和する。雇用維持に一定の効果が期待できるが、助成金をさらに拡充すべきだろう。きめ細かな職業訓練も強化しなければならない。
 来春の大卒予定者の就職内定率は、10月現在で約60%に低迷し、「超氷河期」と言われる。就職できない「ロストジェネレーション」を生み出さないよう、支援対策の強化も急務だ。
 中長期的に肝心なのは、雇用機会を拡大することだろう。
 政府が雇用創出の目標に掲げた10万人は、344万人に膨らんだ失業者と比べると力不足だ。1次産業を活性化させる農商工連携の拡大や観光ビジネスなども絡め、政策を総動員し、地域の雇用を広げる工夫が求められる。
 ◆国内産業の空洞化を防げ◆
 雇用対策は、国内産業の空洞化を防ぐ対策にも直結する。
 企業は製品の値下げ競争に追われるように、工場の海外移転を加速させており、雇用機会の縮小は深刻だ。日本経済は、それによってさらに弱体化する悪循環に陥りつつある。
 だからこそ、政府は、国内産業や地域が活性化できる新成長戦略を打ち出さねばならない。
 環境などの日本の強みを生かした新産業をテコ入れし、活力を生みだし、雇用増につなげる――将来に希望を持てる、そんな明確なビジョンを示す必要がある。
 アジアの消費者向けの市場を狙い、商品開発や輸出戦略も強化するなど、アジアの需要を国内に取り込むことが重要になろう。
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2、社説:雇用対策 介護起業のすすめ
                    2009年11月28日 毎日
 失業率は3カ月連続で若干の改善を見ているが、雇用情勢は相変わらず厳しい。来春卒業予定の大学生や短大生の就職内定率は低く、高校生の3人に2人はまだ就職先が決まっていない。年越し派遣村の当時よりも状況は深刻ともいえる。
 有効求人倍率が0.44倍(10月)という中で、やはり大きな受け皿として期待されるのが医療や介護である。特に介護現場では慢性的な人手不足に陥っている事業所が多い。いや、急速に進む高齢化に対して介護施設・事業所そのものが不足しているのだ。政府は職業訓練に力を入れ、介護福祉士らの養成学校は訓練生であふれ返っているが、思ったほど就職に結びついていないという。訓練中は失業手当を延長して受けられ、雇用保険未加入でも生活手当をもらえるため、働く気のない人の避難場所になっているというのだ。
 しかし、介護を敬遠する理由としては、全産業平均の6〜8割程度という給料水準の低さを挙げざるを得ない。民主党は公約である介護従事者の待遇改善を優先的に実施すべきだ。また、学校やハローワークで「介護の仕事は大変だ」と求職者にブレーキをかける傾向があるともいう。たしかに楽な仕事ではないが、介護を通して得られる感動や専門性に魅力を感じて働き続ける人はたくさんいる。食わず嫌いでいるよりも、まず飛び込み、試用期間中に自分に合っているかどうか見極めてもいいではないか。慣れない人を受け入れる介護事業所は大変かもしれないが、国全体が陥っている雇用危機を救うのは介護しかない。介護をこの国の主産業にする覚悟で臨んでほしい。
 支援の質よりも経営を優先する事業所が増え、それに失望して良質な職員がやめていくケースも多いという。こういう人には自ら起業することを勧めたい。訪問系サービスや宅老所ならば多くの準備資金は要らない。20〜30代の若者や企業を定年退職したシニアが狭い事務所や民家を借り上げて介護NPOを設立するケースはいくらでもある。苦労はするだろうが、安定して顧客(高齢者)が増え続けていく成長分野でもある。政府が現在検討している雇用対策には介護を担うNPOの創業支援を柱として盛り込んでもらいたい。
 わが国の高齢化率はいずれ40%にもなる。過疎地の限界集落だけでなく、都心部でも高齢者ばかりの団地やマンションが増えてくる。どれだけ施設をつくっても追い付かない。町内全体が特別養護老人ホームのような状況になるのだ。国民全員がヘルパー2級資格を持ち、どの町にも小さな介護事業所がたくさんあるくらいにしないと対応できないのではないか。発想の転換が必要だ。



3、社説:デフレ危機 政策総動員で景気の悪化防げ
2009年12月1日00時58分 読売新聞

 デフレによる物価下落は、不況で給料の減ったサラリーマンや、年金暮らしの人にとっては「恵みの雨」だろう。
 だが、デフレは経済を冷やし、衰退させる恐ろしい難病だ。軽視するのは危険である。
 ◆格安チキンで節約ランチ◆
 「カップめん+チキン」
 コンビニで最近、こんな節約メニューの昼食を選ぶサラリーマンが増えている。
 東京・大崎駅前にあるローソンゲートシティ大崎店の昼時は、サラリーマンやOLでにぎわう。確かに、時間とカネの節約からか、男性にはカップラーメン派が少なくない。
 でも、カップめんだけではさすがにわびしい。ほとんどの人が「あと1品」を買う。そのヒット商品が、今春発売したフライドチキンの新製品「Lチキ」だ。
 約100グラムと従来品とほぼ同じ量で、値段を168円から128円へ下げた。小林亮介店長(26)によると、安くて食べ応えがあると評判で、「以前の1・5倍から2倍も売れている」という。
 値下げできたのは、安いブラジル産鶏肉が大量に出回り、国産も含め値崩れが起きたためだ。昨年来の世界不況でブラジルの得意先だった欧米の需要が減り、格安の鶏肉が日本に流入した。
 こうして、コンビニに安いフライドチキンが並び、ライバルの弁当チェーンも300円前後のから揚げ弁当で安さを競う。
 10月の消費者物価指数は前年同月比2・2%下落し、大幅なマイナスが続いている。必需品のため、下がりにくいとされる食料も、5か月連続で前年を下回る。
 消費者にとってうれしい「食のデフレ」だが、かつてない逆風に苦しむ人たちもいる。
 ◆中小企業を襲う価格競争◆
 東京・板橋の鶏肉販売会社「鳥新」の磯田孝義社長(74)は「このブラジル産は、去年のほぼ半値に落ちた」と嘆く。
 扱う輸入鶏肉の9割はブラジル産。大手が安売り攻勢を仕掛け、取引先からは「悪いけど1円でも安いところで買う」と言われる。販売単価の下落で業務用を中心に売上高が減った。
 需要期の年末を控えた11月も価格は回復せず、売り上げは前年の7割程度に低迷している。磯田社長は「50年商売して、こんな不振は初めて」と、頭を抱える。
 「節約需要」を取り込むための価格競争は、激化の一途だ。
 スーパーなどで、割安なプライベートブランド(PB)商品が増えた。350ミリ・リットル缶入りで30円を切るPBのコーラやお茶を売る量販店もある。
 「衣のデフレ」もすさまじい。格安ジーンズの値段は、イオンとダイエーが880円、西友850円、ドン・キホーテ690円とどんどん下がった。
 あるOLは「デパートは試着まで。買うのは安いネット通販で」と家計防衛作戦を披露する。
 百貨店は10月まで20か月連続で売上高が減り、中でも衣料品の落ち込みが激しい。失地回復を狙って1万円を切る紳士スーツを売る百貨店も出てきた。
 大手ならある程度、値下げ競争に耐えられるが、中小企業は窮地に追い込まれやすい。
 商工中金の調査によると、中小企業の10月の景況判断指数が9か月ぶりに低下に転じて、業績回復の足踏みが裏付けられた。主因は、販売価格の下落による売り上げ減少だ。中小企業のリストラ加速は避けられそうにない。
 労働者の8割が働く中小企業で雇用や給与のカットが広がれば、消費は打撃を受ける。その需要不足が価格を押し下げ、さらに景気悪化が加速する「デフレスパイラル」の危険が高まりかねない。
 こうした中、政府は再びデフレを宣言した。消費などの需要が40兆円も足りないためだ。
 ◆政府と日銀は協調せよ◆
 ところが、鳩山内閣は公共事業の一部を凍結しており、来年にかけて需要不足が景気を底割れさせるとの懸念が広がる。
 内需刺激策として子ども手当や高速道路無料化を掲げているが、即効性や持続性に疑問がある。
 先週のような急激な円高と株価下落もデフレ圧力となる。鳩山首相は29日、関係閣僚と緊急協議し、第2次補正予算に円高・株安対策を盛り込むよう指示した。
 日銀の白川総裁も30日、「デフレ克服のために最大限の努力を行う」と述べ、遅ればせながらデフレを認めた。政府・日銀が協調して、政策を総動員する態勢がようやく整ってきた。総合的なデフレ対策を急がねばならない。

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石田ふたみ