『日々の映像』

2009年10月17日(土) 景気2番底に突入か



1、中小の7割「二番底懸念」 景気認識で大企業と開き、日経調査
            2009年10月16日  日経
2、大企業も支援対象に 企業再生支援機構、16日業務開始
                   2009年10月16日 日経
3、新政権、景気二番底リスクの回避を
白川 浩道さんの見方


景気の二番底リスクは米国景気の動向である。最近の米国経済データの中で最も衝撃的であったのは9月の自動車販売である。トラックを合わせた合計で74.6万台と8月の126.2万台から52万台弱も減少した。41%の減少である。水準としてはボトムとなった今年1月の実績(65.7万台)をわずか9万台上回ったに過ぎない。まさにクラッシュ的な減少である。(資料3から)
  
最近の求人倍率を見ると日本経済は二番底に突入したのか思わせる。資料2の通り、「中小企業経営者調査」では景気が「二番底」に陥る危険性を感じている経営者が68%に上った。大企業を対象にした「社長100人アンケート」の38%を大幅に上回っている。中小企業経営者の判断が正しい雲行きである。
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1、中小の7割「二番底懸念」 景気認識で大企業と開き、日経調査
            2009年10月16日  日経
 日本経済新聞社が14日まとめた「中小企業経営者調査」によると、景気が「二番底」に陥る危険性を感じている経営者が68%に上った。大企業を対象にした「社長100人アンケート」の38%を大幅に上回った。日銀が同日、現状の景気認識について「持ち直しつつある」と上方修正したが、企業の大半を占める中小の経営者は先行き厳しい見方を変えていない。
 調査はほぼ四半期ごとに集計している。10月中旬に東阪名に本社のある企業を中心に250社から回答を得た。売上高が数億円から数十億円の未上場の製造業が多い。(08:15)
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2、大企業も支援対象に 企業再生支援機構、16日業務開始
                   2009年10月16日 日経
 政府が不振企業の再建を目指して設立した「企業再生支援機構」が16日に業務を開始する。当初想定した中小・中堅企業だけでなく、過剰債務を抱える大企業も支援対象とする方針。出資や融資のための資金調達に使う政府保証枠を今年度だけで1.6兆円分確保した。ただ企業の公的支援策が乱立し、機構の役割が見えにくいのも事実。国内経済そのものが収縮した厳しい環境下で、どこまで不振企業を支えられるか試される。
 機構は14日付で発足。社長には東京都民銀行元頭取の西澤宏繁氏が就いた。実務部隊のトップとなる専務兼最高執行責任者(COO)も置く方針だったが適任者が見つからず、不在のまま始動する。政府が100億円を出資し、年内には全国約100の金融機関が100億円を追加出資する方針だ。 (07:00)
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3、新政権、景気二番底リスクの回避を
白川 浩道さんの見方
 民主党を中心とした連立政権はまずまずの出足となっている。藤井裕久財務相による円高容認発言(真意は積極的な円安誘導はしないというものであったようだが)、亀井静香郵政・金融担当相によるモラトリアム(借金返済猶予)導入宣言など、金融市場を動揺させる動きも一部ではみられた。しかし、補正予算の見直しや独立行政法人などへの天下り制限など、行財政改革面では一定の成果がみられている。外交面では、首相の国連総会演説に代表されるような環境重視姿勢を軸に無難なデビューとなった。円高容認発言は最終的には修正されたし、モラトリアム問題も、結局は年度末の企業金融緩和措置(信用保証枠の追加など)の追加導入として決着をみるだろう。外国人投資家が日本市場に対して新たな魅力を感じるような状況を作り出せているわけではないが、新政権の政策運営は全体として及第点といえよう。
 しかし、世の中はそう甘くはない。これまでの政策運営が及第点であるからといって安穏としていられるわけではない。足元で“景気二番底リスク”という逆風が、急にそしてかなり強く吹き始めたからである。
 景気二番底リスクの元凶は米国景気のぜい弱性の高まりである。
 最近の米国経済データの中で最も衝撃的であったのは9月の自動車販売である。トラックを合わせた合計で74.6万台と8月の126.2万台から52万台弱も減少した。41%の減少である。水準としてはボトムとなった今年1月の実績(65.7万台)をわずか9万台上回ったに過ぎない。まさにクラッシュ的な減少である。
 理由は改めて語るまでもないが、政府が導入した新車販売促進プログラム(cash for clunkers、燃費効率などの一定の条件の下に新車購入者に対して最大4500ドルの補助金を支給する制度)停止の反動である。プログラムを停止すれば反動が出る可能性が高いことは事前に分かっていたが、ここまで大きな落ち込みになるとは誰もが予想していなかっただろう。残念ながら、それだけ米国の消費市場を取り巻くファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は悪いと解釈せざるを得ない。
 米国の消費者が縮こまっている背景はいくつかある。調整が続く雇用市場、底入れしたものの回復力が極めて乏しい住宅市場、上昇軌道に復帰できない不動産価格などである。雇用者報酬が伸び悩む中で再び家計貯蓄率が低下し、消費余力が乏しくなっていることも懸念材料である。このまま追加対策が打たれなければ、クリスマス商戦は悲惨な結果になる可能性がある。
 米国の個人消費が回復しなければ、世界的な生産活動も、早晩、下を向くことになるだろう。中国の内需は引き続き好調であるが、それだけで世界生産をけん引し続けることは不可能である。日本の輸出も年末にはピークアウトしてしまうのではないか。
 そうした状況では、国内の冬のボーナスにさらなる下押し圧力がかかるだろう。また、冬になれば、国内観光シーズンも終わりを迎えているはずであり、高速道路料金引き下げの消費刺激効果も減退している可能性が高い。加えて、新型インフルエンザの拡大による人の動きの停滞も懸念される。これらの悪材料が重なったとき、国内個人消費は一気に深い調整を演じるかもしれない。
 輸出ピークアウトに個人消費の調整が加われば、1〜3月期の国内総生産(GDP)成長率はマイナスに落ち込むだろう。二番底の始まりである。
 二番底シナリオを回避し、1〜3月期の景気調整を“踊り場”の範囲内で食い止めるためには最低限、金融・財政政策の引き締めを先延ばしすべきである。
 無駄な公共事業を見直すことには基本的に賛成するが、“削減ありき”の発想で臨むことは許されない。また、いかなる措置についても金融政策における出口戦略を安易に認めるべきではないだろう。例えば、日銀がコマーシャルペーパー(CP)と社債の購入を停止した場合、市場ではその延長線として政策金利の引き上げが視野に入るだろう。これは円高圧力を高め、輸出を下押しする。二番底リスクが顕在化している中にあって円高を認めるなどという政策はあり得ない。むしろ、現状は、政府・日銀が一体となって円高懸念論を展開すべきであろう。
 成長戦略を持たない新政権が二番底を回避できるのか、多くの市場参加者は懐疑的である。これまでのところ株価は暴落を免れているが、それは単に嵐の前の静けさなのかもしれない。哲学なき公共事業削減や金融緩和の是正など、二番底の回避という基準に照らして政策運営が間違った方向に踏み出せば、株価はあっさり崩れてしまうリスクがある。新政権の政策運営は今まさにその真価を問われ始めている。

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石田ふたみ