『日々の映像』

2009年08月26日(水) 日本農業の没落の指標:耕作放棄面積

1、米農地価格、22年ぶり下落 穀物値下がり、農家向け融資細る
                   2009年8月22日  日経
2、都道府県別の耕作放棄地面積及び耕作放棄地率
http://www.abc-japan.or.jp/kousaku/pdf/first/riritu.pdf

 各政党の党首の演説を聞くと、今まで総て耳にしてきたことのみでうんざりする。しかも、核心の問題点には全く触れていない。民主党が政権をとっても、農業問題は全く解決できないだろう。思考の基本に所得保障かあるようではどうにもならない。ただ農村票を意識しての政策のみである。農業問題の最大のガンは農地の価額が、他の先進国の8倍から23倍になっていることだ。戦後の自民党政権は、集票組織として地方の有力者(地権者9)を優遇してきた悪政で、農地の価額まで上昇させてしまったのである。

農地価額の概要は次の通りだ。
「10アールあたりの農地価格を比べると、米国6万3000円、フランス5万5000円、イギリス15万4000円に対して、日本は147万7000円であり、欧米の価格の実に8〜23倍となっている」
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20090221

 さらに、資料1の通りエーカ(4反)で2100ドル(199500円)なのである。これは日本の流通基準1反あたり49875円(約5万円)の価額である。日本の農地147万円、アメリカの農地5万円では、全く競争にならないのである。現在の枝葉のみの農業政策では、日本の農業は更に没落していくことは必至だろう。

 没落のスピードもかなりのものである。
全国の耕作放棄地率は次の通りである。(単位ヘクタール)
平成2年耕作面積 4,198,732  耕作放置面積 150,655 耕作放置率 3.5%
平成7年耕作面積 3,970,051  耕作放置面積 161,771 耕作放置率 3.9%
平成12年耕作面積 3,734,288 耕作放置面積 210,019 耕作放置率 5.3%
平成17年耕作面積 3,608,428  耕作放置面積 385,791 耕作放置率 9.7%

平成17年度で全国の農地の9.7%が耕作放置されている。問題の核心は、放棄された農地の買い手がないのだ。耕作放置面積385,791ヘクタールは埼玉県の面積に相当する。

 耕作放置の多い県を上げてみよう。
長崎県      27.1%
山梨県      23.4%
群馬県      20.9%
広島県       20.3%
詳しくは以下。
http://www.abc-japan.or.jp/kousaku/pdf/first/riritu.pdf

 民法上の問題もあるが、農地は国民共通の財産であるので次の方法で農地の流通を図ることが考えられる。
1、休耕農地は、地方自治体が国際農地価額(1反5万円)で買取る法律を作る。
2、この農地は国際農地価額を最低価額として競売にかける。
3、落札者は農家:被農家の区別をしない。
  (落札して2年以内の耕作をしない場合は国際価額で強制買取りにする)
 
 ともかく、今までの常識外の政策をとらないと、日本の農業は没落の足音が更に強くなっていくだろう。民主党は高速道路の借金を国が肩代わりする政策である。これをやるぐらいであったら、農家を一番苦しめている全国の土地改良区の借金(財投からの借金)を国で引き受けるべきだ。

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1、米農地価格、22年ぶり下落 穀物値下がり、農家向け融資細る

                   2009年8月22日  日経

 【シカゴ=毛利靖子】世界的な食料高騰などを背景に上昇を続けてきた米国の農地価格が22年ぶりに下落に転じた。金融・経済危機の影響で穀物が値下がりしているためで、穀倉地帯の米中西部ではなお下落基調が続いている。作物価格の有力な先行指標である農地の下落を受け、米農家が消費や経営規模の拡大にさらに慎重になる可能性がある。
 米農務省によると、耕作地や牧草地、関連施設の平均価格は2009年1月1日時点で1エーカー(約0.4ヘクタール)当たりで2100ドル。過去最高を記録した1年前に比べて約3%下落した。農地が値下がりに転じるのは1987年以来となる。穀物の値上がり期待から、農地を買収してきた投資ファンドが金融危機で打撃を受けた。(07:00)

1エーカーは4反である。
1エーカ2100ドル199500円である。(1ドル95円として)
1反あたり49875円である。




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石田ふたみ