| 2009年07月09日(木) |
改正正農地法が成立 企業参入へ規制緩和? |
報 道
1、改正正農地法が成立 企業参入へ規制緩和 2009.6.17 10:42 産経 2、【主張】改正農地法 減反見直しも同時並行で 2009.6.18 03:23 産経 3、平成の農政改革と呼ぶには程遠い http://diamond.jp/series/agric/10014/
改正正農地法の成立についてここに取り上げるがどうか迷いつつ20日余りが経過した。迷って理由は、余りに内容が複雑で短文エッセイに取り上げることが難しいことであった。このテーマに関心のある人からは、エンピツに引用の上記資料を見てもらうこととしここでは、一般にイメージの薄い情報を少々引用しておきたい。
1、農地の有効利用に転換し、借地期間の制限を20年から50年に延長するなどして企業の参入を促す。
2、改正前は所有・利用とも農業者、農業生産法人に限られていたが、改正後は、利用については一般企業やJA、NPO法人などを認める(所有は改正後も変更無し)。しかし、「法人が「貸借」する場合には役員一人以上が常時農作業に従事することや農業委員会の許可に当たっては市町村が関与するなどの要件が加重された」これでNPO法人・企業参画する可能性は少ないと思う。
3、今回の改正で通常の経済活動で行われている「所有と経営の分離」はない。このため、農業は参入リスクが高い産業となっているのである。
4、10アールあたりの農地価格を比べると、米国6万3000円、フランス5万5000円、イギリス15万4000円に対して、日本は147万7000円であり、欧米の価格の実に8〜23倍となっている。このようになったことは、戦後の自民党政治の最大の失敗のように思う。
改正正農地法成立してもさまざまな条件があって、企業が参入する可能性は少ない。企業が農業をするとすれは、10アール当たり5万円以下の海外で行なうしかない。今回程度の農地法の改正であれば、日本の農業の発展はないないと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1、改正正農地法が成立 企業参入へ規制緩和 2009.6.17 10:42 このニュースのトピックス:農林水産 農地を借りる規制を大幅に緩和する改正農地法が、17日の参院本会議で賛成多数により可決、成立した。同法の目的を所有者保護から農地の有効利用に転換し、借地期間の制限を20年から50年に延長するなどして企業の参入を促す。政府は耕作放棄地の増大に歯止めをかけ、国内農業の活性化につなげる考えだ。12月に施行の見通し。 改正法では昭和27年の制定以降、戦前の地主制度が復活しないように明記してきた「耕作者による農地の所有が最も適当」との文言を初めて削除。企業が借りられる農地を、市町村が指定した放棄地などに限る現行規制を撤廃。優良な農地も利用できるようにした。 一方で、零細農家の経営を脅かすことを懸念した民主党からの修正要求で、農地を借りる企業は経営陣の1人以上が農業に常に従事する義務を負う規定を設けた。(共同)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【主張】改正農地法 減反見直しも同時並行で 2009.6.18 03:23 農地の貸借を原則自由にする改正農地法が参院で可決、成立した。農業への新規参入を促し、耕作放棄地拡大に歯止めをかけるのが主な狙いだ。日本の農政にはまだまだ課題が多いが、改革前進に向けた第一歩と受け止めたい。 法改正の最大のポイントは「農地の所有者が耕作者でなければならない」という戦後の農地解放以来の「自作農主義」を転換した点にある。農地貸借の自由度を広げるとともに、借地期間の制限についても20年から50年に延長し、有効利用が図られるようにした。 これまで企業は耕作放棄地など各自治体が指定した農地以外は借りられなかったが、今後は優良農地の借り入れも自由になる。企業参入には大きな刺激策だ。 日本農業の最優先課題は、意欲的な担い手の確保である。「食糧安全保障の上から食料自給率の向上をめざす」とスローガンをいくら掲げても、担い手なしに農業の未来は開けない。だが、現状は農業従事者の6割を65歳以上の高齢者が占め、将来は先細りだ。 今回の法改正で、高齢者らが営農意欲のある個人や法人に農地を貸し出せば、農地全体の約6%を占める耕作放棄地を減らすことにつながる。農地の集約化にも役立ち、生産性が向上することで農家の収入増も期待できる。 ただ無秩序な貸借には注意を払うべきだ。貸し出された農地が産業廃棄物処分場にされた例もある。乱開発で優良農地がなくなる事態は防がねばならない。 今回は違反転用への罰金についても、最高300万円から1億円に引き上げた。そうした歯止めと監視を強めた上で、企業の参入を促すのは担い手を確保する上で必要な措置だろう。 忘れてならないのはコメの「減反」という生産調整の問題だ。自給率が下がっているのに、価格を維持するために補助金を投じて減反を続けるのは本来、矛盾した政策である。それが日本の農業の競争力を低下させ、消費者は長年、補助金と高い米価という二重のコストを負担してきた。 今春、石破茂農水相は減反に参加するかどうかを農家個々の判断に委ねる「減反選択制」を打ち出した。現状維持では乗り切れないという危機感による政策転換だが、農水族議員が反発し、すっかり尻すぼみになった。農政の制度疲労を放置してはなるまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2、平成の農政改革と呼ぶには程遠い 農地法改正は「昭和の懐メロ」だ http://diamond.jp/series/agric/10014/
「所有から利用へ」をキャッチフレーズに掲げる農地法改正法案が、5月8日の衆院本会議で自民、公明、民主の賛成多数で可決された。農政当局は「平成の農政改革」といっているようだが、筆者には「昭和の懐メロ」に聞こえる。まず法改正の主なポイントを上げると、以下の通りだ。 <法律の目的の見直し> 農地法の第1条から農地改革の理念であった「自作農主義」(所有者=耕作者)に関わる文言を削除する。具体的には、「農地を耕作者みずからが所有することが最も適当である」とする考え方を、「農地の効率的な利用を促進する」との考え方に改める。しかし、国会では民主党からの修正要求で、政府原案で削除されていた「耕作者」という言葉を復活し、「耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ…農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進」という文言を加え、「自作農主義」が維持された。 <農地転用規制の強化> 現行では、学校などの公共施設の設置に伴って行う農地転用については、許可は不要とされているが、これを見直し、許可権者である都道府県知事等と協議を行う仕組みとする。違反転用に対する罰則(罰金額の引き上げ)を強化する。 <農地の権利移動規制の見直し> 改正前は所有・利用とも農業者、農業生産法人に限られていたが、改正後は、利用については一般企業やJA、NPO法人などを認める(所有は改正後も変更無し)。しかし、民主党の修正要求によって、法人が「貸借」する場合には役員一人以上が常時農作業に従事することや農業委員会の許可に当たっては市町村が関与するなどの要件が加重された。 ちなみに、農業生産法人への出資は、改正前は、1事業者当たり10%以下、全体で25%以下だが、改正後は1事業者当たり10%以下の規定を廃止する(全体で25%以下は継続)。農商工連携事業者などの場合は50%未満に。20年以内とされてきた賃貸借の期間は、50年以内に拡大する。 このうち、今回の法改正が「平成の農政改革」とされる最大の根拠は、法律の目的から「自作農主義」が削除されることだ。確かに、これは、一見、大きな転換のように映る。農地法の基本理念はこれまで「自作農主義」だといわれてきた。それは、農地法第1条の目的規定の中の「農地はその耕作者自らが所有することを最も適当であると認めて」という文言に根拠があると信じられてきた。実際には1952年の農地法制定当時、農地改革への思い入れの強かった当時の農林事務次官が思いつきで書き入れただけものものにすぎないが、以降この文言が農地法の基本理念を示したものと農業関係者の中では受け止められてきたのである。 そもそも土地や農業機械などの資本も含めた農場の所有者とその経営者は同じである必要はない。素人が農業をやるよりもプロが経営すべきであり、所有者はそこに投下した資本で配当を得ればいい。これは、ブラジルなどで普及している農業経営である。 では、「自作農主義」に関わる文言の削除で、日本も「経営または耕作と所有の分離」を認めることになったのか。答えはノーだ。 「農業生産法人制度」については、前ページに示したように、要件は緩和するが、改正後も相変わらず農家が法人成りしたものしか農業生産法人としては認めないのである。 法律の文言からは消えても、「自作農主義」は依然として残るということだ。しかも、衆議院・農林水産委員会での審議の過程で民主党からの修正要求によって、これが第一条の目的規定の中にも事実上復活してしまった。 農地改革は社会主義的な改革だった。国会での後退は、農地改革の理念に社会主義的な勢力が依然固執していることを示している。 は今回の法改正の目玉は別にある。「特定法人貸付事業」という制度の拡充だ。これは、2003年に構造改革特別区域制度のなかで認められたもので、原則として耕作放棄地が相当程度存在する区域においてのみ、企業が市町村と農業を適正に行う旨協定を交わした上で、リース(賃借権)方式によって農業に参入できるというものである。 今回の法改正で、この制度に対する地域の限定が外され、原則として全国で賃借権方式による企業参入が可能になる。これが、「所有から利用へ」という農政当局の掲げるキャッチフレーズの中身である。しかし、これについても、民主党の要求で要件が加重されてしまった。 リース方式を全国展開しても 貸す人が増えなければ無意味 結論を言えば、筆者は農地法の改正という彌縫策は止め、ゾーニング(都市的利用と農業的利用を明確に区分するという土地利用規制。詳しくは後述)を強化する一方で、農地法を思い切って廃止する必要があると考えている。同法はその存在自体が零細農業構造の改善には役立っていないという現実を、農政当局は直視すべきだ。 歴史を振り返れば、半世紀以上前に制定された農地法は小作人の開放という農地改革の成果を固定するだけの立法だった。自作農創設と小作権の保護・強化を目指してきた戦前の農政を受けて、農地法は、農地についての権利の設定・移転の統制、小作地の保有制限等によって不耕作地主の発生を防止するとともに、賃借権の解約等の制限、小作料の統制等によって小作権の保護を図った。 しかし、前者は農地の貸し手である所有者に対し農地の流動化を直接的に制限するとともに、後者による賃借権の強化により(よほどのことがないかぎり貸し手は農地を返してもらえなくなることから)農地は貸し出されにくくなるため、農地の流動化そして規模拡大は間接的にも抑制された。すなわち、小作権(賃借権)を強固なものにするという耕作権の保護により、意欲のある農家が賃借で農地の流動性を図り、零細な農業規模を拡大することは困難になったのである。
不在地主は小作地を所有できないとされている。しかし、相続により都市に居住する農地の所有者権が農地を貸せば不在地主による小作地所有となってしまい、農地法に違反してしまう。逆に農地を貸さずに耕作を放棄すれば農地法違反にならないという矛盾が生じている(法改正で、この小作地の所有制限は廃止される)。 また、欧州のようにゾーニングがしっかりしておらず、転用規制が十分に運用されてこなかったため、特に、平坦で区画が整理されている平場の優良農地が宅地等に転用されるという問題が深刻化した。 都市の拡大により農村地域の地価も上昇し、農地転用を期待した農家の資産的な土地保有も高まったため、意欲ある農業の担い手に対する土地の集積は進まなかった。10アールあたりの農地価格を比べると、米国6万3000円、フランス5万5000円、イギリス15万4000円に対して、日本は147万7000円であり、欧米の価格の実に8〜23倍となっている。 日本では宅地用等の地価の上昇が農業としての収益還元価格を上回る農地価格の上昇をもたらしたため、農地を買って農業を営むことは困難となった。高い価格が農地の売買による移転を阻み、規模拡大は進まなかった。それだけではない。農地の転用期待があると、転用機会が実際に生じた場合に農地を返してもらえないと考えるので、所有者は農地を貸そうとしなくなる。こうして、賃貸借による規模拡大も一層困難となった。 戦前、農地価格の上昇を求める地主勢力に対して、小作人などの耕作者の立場に立つ農水省は抵抗した。だが、農地改革後に成立した農地法は、小作料(地代)は統制したが、「農地価格」(地価)は規制しなかった。小地主となった小作人が地価上昇を望んだからだ。 むろん、農政も手を拱いていたわけでなない。農地法の例外法(農業経営基盤強化促進法)を作って、賃借権による規模拡大を目指した。しかし、前述の通り、ゾーニングがしっかりしていないため、農地の価格は宅地価格並みに引き上げられ、その結果、農地所有者は転用期待を抱き続け、農地の貸し出しには消極的なままだ。 また、そもそも農地法は当初、法人が農地を所有したり耕作したりすることを想像すらしていなかった。節税目的で農家が法人化した例が増えたため、農政は大きく揺れ、1962年に「農業生産法人制度」が農地法に導入されたが、これはあくまで農家が法人化するものを念頭に置いたものであり、株式会社形態のものは認められなかった。 株式会社が認められたのは2000年になってからであり、これについても、農業関係者以外のものに経営が支配されないよう農業者や農業関係者の議決権が4分の3以上であること、役員の過半は農業に常時従事する構成員であることなどの要件があり、また、農地が投機目的で取得されないよう、株式譲渡を制限した会社に限定されている。 現在では、農業に新しく参入しようとすると、農作物販売が軌道に乗るまでに機械の借入れなどで最低500万円は必要であるといわれている。しかし、友人や親戚から出資してもらい、株式会社を作って農業に参入することは、これらの出資者の大半が農業関係者で、かつその会社の農作業に従事しない限り、認められない。 ここに通常の経済活動で行われている「所有と経営の分離」はない。このため、新規参入者は銀行等から借り入れるしかないので、失敗すれば、借金が残る。農業は参入リスクが高い産業となっているのである。株式会社ならば失敗しても友人や親戚などからの出資金がなくなるだけだ。「所有と経営の分離」により、事業リスクを株式の発行によって分散できるのが株式会社のメリットだが、現在の農政はこの方法によって意欲のある農業者、企業的農業者の参入を可能とする道を自ら絶っているのである。 むろん、特定法人貸付事業による企業参入を全国的に展開することは「所有と経営の分離」の観点から一定の評価は出来る。ただ、繰り返すが、この制度では企業による農地の所有権は認められない。株式会社の農地所得を認めないのは、農地の所有者が耕作者であるべきという、かつての農地改革の理念だった「自作農主義」に農地法が依然として囚われているからである。 所有権がなければ、誰も土地には投資しようとはしない。「所有から利用へ」という標語を掲げたところで、利用者が主業農家でも、所有者が農業に関心を持たない脱農・旧兼業農家であれば土地には投資されない。 むろん、一足飛びに、農地法を廃止するだけでは、これまで見てきた問題は解決されない。ゾーニングの強化とセットで行うことが肝要だ。ゾーニングをしっかり行えば、農地価格が宅地用価格と連動して高い水準に止まるという事態も防止でき、新規参入者も規模拡大の意欲を持つ農業者も農地を取得しやすくなる。そうすれば、転用期待が実現したときに農地を返してもらえなくなることを怖れて、農地の所有権だけでなく、利用権も渡さないという農家の行動パターンを押さえることができ、賃借権による規模拡大も容易になる。 さらに、企業体が農地の所有権を取得できれば、農地改良など長期的な農地への投資も可能になる。大規模な農家が集まって株式会社を作り、一般投資家やファンドがその会社に投資すれば、大規模面積で強い資本構造を確立でき、国際競争力も向上できる。それこそが「平成の農業改革」と呼ぶにふさわしいものではないだろうか。
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