『日々の映像』

2009年07月08日(水) 中国新疆ウイグル暴動

報 道

1、新疆暴動、中国メディアが異例の報道ぶり
                      2009年7月7日  日経
2、中国・新疆暴動、死者156人に 1434人を拘束
                      2009年7月7日 日経
3、中国・新疆暴動、ウイグル族に根強い不満
                      2009年7月7日  日経
4、「ウイグル族に殺された」漢族が抗議デモ 新疆の騒乱  
2009年7月7日  朝日
5、中国:建国60年 当局衝撃…新疆・ウイグル族暴動
                       2009年7月7日 毎日

新疆ウイグル暴動に関して、7日23時現在日本の大新聞の論説(社説)はなく
少し反応が遅いように思う。

マクロの視点で1点だけ記述したい。中国の200年余り続いた封建社会を打倒し、新中国が誕生したのは60年前の1949年10月(昭和24年)である。新中国は旧指導体制を打倒(殺害)した革命政権なのである。革命という腕力で成立した国家で、国内のさまざまな不満が渦巻く事は当然の成り行きである。

中国の軍事費の拡大を脅威と捉える論説があるが、私はそうは思わない。中国指導部は今後50年間、革命政権が抱える諸問題に対応するのが精一杯ではないだろうか。新疆ウイグル暴動はその1例で、このような問題が連鎖的に発生する危険があると思う。

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1、新疆暴動、中国メディアが異例の報道ぶり
                      2009年7月7日  日経
 【北京=高橋哲史】中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで発生した暴動について、中国メディアは異例の大きな扱いで報道を続けている。7日付の中国各紙は1面トップで「暴力事件」の見出しを掲げ、今回の暴動が分離独立勢力による組織的な「犯罪」であると印象づける報道ぶりになっている。10月に建国60周年を控え、社会安定を最優先に掲げる中国指導部の意向がうかがえる。
 北京の大衆紙「新京報」は7日、1面トップに焼けこげた乗用車やバスが放置されたウルムチ市内の写真を掲載し「捜査当局が暴力犯罪分子の拘束に全力を挙げている」と報じた。国営の中央テレビも、暴徒に襲われ病院で治療を受ける被害者の映像を繰り返し流している。(12:07)
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2、中国・新疆暴動、死者156人に 1434人を拘束
                2009年7月7日 日経
 【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)=尾崎実】中国新疆ウイグル自治区の治安当局は7日までに、区都ウルムチで5日夜発生した暴動の死者が156人に増えたと明らかにした。国営の新華社が伝えた。拘束者は1434人に達したが、抗議活動はウルムチで散発的に続いているほか、カシュガルなどにも拡大。治安当局は自治区全域で厳戒状態を敷いている。
 ウルムチ中心部の繁華街では商店の割れた窓ガラスが暴動の激しさを物語り、通行人はまばら。国際電話やインターネットは通じない。漢民族の男性(35)らによると、6日午後、中心部から北へ約20キロ離れた幹線道路沿いで数十人のデモが発生。市内10カ所前後で同規模の抗議行動が起きたという。
 暴動が発生した付近では夜通しでヘルメットに盾、警棒などを携えた50人以上の警察官が警戒、朝には300人以上に増えた。そばには「人民のために暴乱を制圧する」と幌(ほろ)に大きく書かれたトラック数台が停車している。(11:48)

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3、中国・新疆暴動、ウイグル族に根強い不満
                      2009年7月7日  日経
 【北京=尾崎実】中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで5日に起きた暴動の死傷者は6日までに900人を超えた。住民と制圧部隊の衝突の激しさは、地域間、民族間の経済格差など、ウイグル族が抱えた不満の根深さを物語る。10月に建国60周年を控え、社会安定を最優先に掲げる中国指導部は武装警察を大量投入。しかし、力ずくでの封じ込めは、少数民族の反発を一層増幅させる危うさもはらんでいる。
 「警官隊が群衆に向かって突然発砲し、人びとがバタバタと倒れた。道ばたには漢民族もウイグル族も関係なく、血だらけの男女が横たわっていた」。ウイグル族の男性住民(32)が発生当時の様子を振り返る。6日までに日本経済新聞記者が現地に電話取材したところ、衝突の実態や背景が明らかになってきた。5日午後7時半(日本時間同8時半)ごろ、ウルムチ市中心部に住民らが続々と集まり出し、デモ隊は数千人規模にまで膨らんだ。「ウイグルに自由を」などと叫んだ民衆は、制圧に向かった警官らにレンガや石を投げつけ始めた。街中に発砲音が響いたのは、その直後だった。 (08:21)

4、「ウイグル族に殺された」漢族が抗議デモ 新疆の騒乱  
 2009年7月7日  朝日
 【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)=奥寺淳】1千人以上が騒乱で死傷した中国新疆ウイグル自治区ウルムチで7日、ウイグル族に反発した数千人規模の漢族住民によるデモが起き、ウイグル族居住地区に迫った。ウイグル族側の抗議も続いている。漢族とウイグル族の対立感情は悪化しており、自治区当局は同日、夜間に車でウルムチ市内に外出することを禁止した。
 漢族のデモは午後1時ごろ始まった。会社員や大学生ら数千人が参加し、「ウイグル族に多くの漢族が殺された」と抗議。市南部のウイグル族居住地区入り口付近で、数百人の警官隊に道をふさがれるまで続いた。参加者はこん棒や鉄パイプを持ち、「自衛のため」と職場で配った例もあるという。先のとがった鉄の棒を持つ人もいた。
 この日午前には、5日夜に騒乱があった大通りで、ウイグル族住民約200人がデモを開始。女性が中心で、夫や息子たちが拘束されたことに抗議し、数百人の武装警官ともみ合いになった。
 新華社通信によると、ウルムチでの5日の騒乱の死者は156人に達し、負傷者は1080人に上った。民族の内訳は明らかになっていない。また、地元警察当局が1434人を騒乱に関与した疑いで拘束した。
 自治区西部のカシュガル、アクス、北西部のイリカザフ自治州でも組織的な騒乱の兆候があった模様だ。

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5、中国:建国60年 当局衝撃…新疆・ウイグル族暴動
                    2009年7月7日 毎日
 中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチで5日夜に発生した大規模暴動は、建国60周年を迎える10月を前に引き締めを強化してきた中国当局に衝撃を与えた。暴動に至る経緯を巡り、在外ウイグル人組織との見解も対立。経済支援を中心とする「アメ」と独立運動の取り締まりという「ムチ」を使い分けてきた中国政府の少数民族政策は、チベット自治区に続いて大きなほころびを見せている。【ウルムチ浦松丈二、ベルリン小谷守彦、服部正法】
 ◇テロ対策くぐり組織化
 今年1月、新疆ウイグル自治区イリで警察や武装警察など治安当局が連携しての反テロ演習が行われた。テロ犯による奇襲、爆破、放火などに対応する総合的な訓練の風景が大きく報じられた。自治区では定期的にテロ対策演習を実施したり、「テロの拠点」を検挙するなど、厳格な監視を実施していることをアピールしてきた。
 同自治区では新疆の独立を綱領に掲げる「東トルキスタン・イスラム運動」などの組織が活動している。中国政府はこれらの組織がアフガニスタンで軍事訓練を受け、国際テロ組織から資金も提供されていると指摘。国際社会ではウイグル人の民族運動との見方も根強かったが、中国公安省は03年12月にはこれらを「テロ組織」に指定した。少数民族の研究者によると、中国当局は90年代後半から同自治区内にいる独立支持者の組織化を徹底的に阻止してきた。
 一方で、中国政府は00年に同自治区を含む西部大開発戦略をスタートさせた。経済発展の立ち遅れた西部地区の開発を重点的に行い、東部沿海地域との格差を是正するほか、経済発展で少数民族の分離・独立活動を抑え込む狙いがあった。
 中国政府は2011〜2020年の新たな西部大開発計画を早ければ年末までに発表する予定だ。しかし、経済発展は少数民族の生活に携帯電話やインターネットの普及をもたらした。08年3月に中国チベット自治区などで発生した大規模な暴動も、携帯電話やネットを通じて世界に情報が流れた。今回の暴動でもネットが大きな役割を果たしている。
 中国当局はテレビやネット、電話を遮断するなどして情報統制に躍起になっているが、効果は限定的だ。情報統制の網の目を抜けた少数民族の組織化は、中国当局にとって大きな脅威となっている。
 今回の暴動を受け、中国当局は新華社通信の英語版で暴動を詳しく報じるとともに外国メディアの取材も受け入れる姿勢を見せている。ウイグル族のデモ参加者による襲撃で漢族住民が被害を受けたとの構図を強調する狙いがあるとみられる。
 ◇漢族と格差に不満
 亡命ウイグル人で組織する世界ウイグル会議(本部ドイツ・ミュンヘン)によると、ウルムチでのウイグル族住民の死者数は500〜600人、負傷者は1000人以上に上るという。
 本部事務局の通訳メメトさん(35)によると、5日午後、ウルムチの人民広場で学生約100人が平和的なデモを始めた。警官隊が現れ、デモ参加者に発砲、学生3人が死亡した。住民や通行人がデモ隊に加勢し、参加者は2万人近くに。一部の参加者は商店に放火。警察車両が女性や子供をひいたことに抗議して警察車両を次々にひっくり返した。
 デモの引き金は、中国広東省の玩具工場で6月26日に発生したウイグル族に対する襲撃事件だったという。世界ウイグル会議は、事件捜査と事態解明を中国政府に求めるとともに、各国の在外中国大使館や総領事館前で7月3日に一斉デモを行うようにウェブサイトで呼び掛けた。亡命ウイグル人が呼び掛け対象だったが、米独、カナダ、日本などでのデモに続き、ウルムチでも学生らが応じた。
 世界ウイグル会議の日本での全権代表で、日本ウイグル協会会長のイリハム・マハムティさん(39)は「中国共産党の圧政がもたらした」と述べた。イリハムさんは「(自治区の)ウイグル人は仕事がなく生活できない。働ける人の80%程度が失業状態ではないか。一方で、天然資源が豊富なウイグル(自治区)に、中国政府の呼び掛けで入ってくる中国人(漢族)は仕事を得ている。このような面への不平、怒りが頂点に達した」と分析した。
 新華社通信が、世界ウイグル会議が暴動を主導したと伝えた点について「真っ赤なうそだ。昨年、(チベット自治区での暴動を)ダライ・ラマが計画したなどと中国側は言った。常に我々のせいにしてきた」と強調した。
 ◇「アメ」経済政策 富の分配届かず
 少数民族問題に詳しい星野昌裕・南山大准教授(現代中国政治)は「中国政府は、ウイグル人の独立運動発生の背景として宗教と経済発展の遅れがあると認識している。イスラムに対する規制を行い、自治区を豊かにしようとしてきた。しかし、富の分配はウイグル人に行き渡っていない」と指摘。「今回は早い段階で現地の映像が出たが、漢族の被害が強調される内容にも見える。『悪質な刑事事件』というイメージを強調し、国際社会に正当性を訴えようとしているのではないか」と分析。「中国は世界ウイグル会議を名指しで非難しているが、交渉相手がなくなり、引き締め政策を続けざるを得ない可能性もある」と話した。
◆新疆ウイグル自治区を巡る最近の動き◆
1992年2月 ウルムチでバスの無差別爆弾テロが起き、乗客6人が死亡
97年2月 伊寧でウイグル族が漢民族支配に対する抗議デモを行い警官隊と衝突、10人以上が死亡。亡命ウイグル人組織「東トルキスタン協会」は「150人以上が死亡」と発表
2003年10月 独立運動組織「東トルキスタン・イスラム運動」の指導者ハッサン・マフスム氏をパキスタン軍が射殺
04年4月 世界ウイグル会議がドイツで発足
08年3月 著名な慈善事業家が拘束されて死亡したことに対する抗議デモがホータンで発生
8月4日 カシュガルの国境警備隊施設が2人組に手投げ弾で襲われ、警官17人が死亡。ウイグル族2人が翌年、死刑に
  10日 クチャ県で武装集団が県公安局を手製爆弾で襲撃。容疑者10人と警備員1人が死亡
  12日 カシュガル郊外の検問所で治安要員3人が刺殺される
09年7月5日 ウルムチで大規模暴動が発生
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中国:ウイグル族3千人暴動 100人死亡情報も
毎日新聞 2009年7月7日 0時23分

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石田ふたみ