2009年02月26日(木) |
「おくりびと」アカデミー賞外国語映画賞を受賞 |
報道 1、「おくりびと」外国語映画賞を受賞 2009年2月23日産経 2、社説:アカデミー賞 日本の文化発信力を証明した 毎日新聞 2009年2月24日 3、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎さん 2009年2月24日07時10分 読売新聞 4、社説:アカデミー賞、ダブル受賞が示す日本の実力 2月24日付・読売社説
昨日アカデミーを受賞した「おくりびと」を妻と観賞してきた。 報道4の一部を引用したい。 「『おくりびと』は、死者を棺(ひつぎ)に入れて送り出す納棺師の男性が、仕事に戸惑いつつも生を見つめ直し、成長していく物語だ。十数年前から納棺師や死の問題に深い関心を抱いていた俳優の本木雅弘さんが映画化を提案して、主役も演じた。人間の「生と死」という普遍的なテーマに挑んだ作品が、国際舞台でも高く評価されたということだろう」
ぜひ、皆さんから見て欲しい映画である。映画館は満員であった。引用した報道で多くが記述されているのでここでは説明を省略とします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1、「おくりびと」外国語映画賞を受賞 2009年2月23日産経 「おくりびと」がオスカー獲得! 映画界最大の祭典、第81回米アカデミー賞の授賞式が22日(日本時間23日)、ロサンゼルスのコダック・シアターで行われ、「おくりびと」が外国語映画賞を受賞した。また「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)が短編アニメーション賞を受賞。日本勢がオスカー2冠を達成した。日本勢のオスカー獲得は2003年に長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」以来、6年ぶり。アカデミー賞で日本映画が2冠を達成したのは54年ぶり。 歴史的な瞬間だった。プレゼンターの英俳優、リーアム・ニーソン(56)から「外国語映画賞は…Departures」と紹介されると、滝田洋二郎監督(53)、主演の本木雅弘(43)や広末涼子(28)、余貴美子(52)の4人が立ち上がり、周囲から大きな拍手と歓声を浴びた。4人は壇上に上がり、オスカー像を受け取った滝田監督がマイクの前に。 滝田監督は「アカデミー賞のみなさま、ありがとう。助けていただいた人に感謝します。ここに来られたのも映画のおかげ。私にとって、また新たな旅立ちです。再びここに戻ってくることを期待しています」と、「おくりびと」の英語タイトル「Departures」にちなんだ受賞スピーチで会場を沸かせた。本木や広末も満面の笑みで喜びをあらわにしていた。 授賞式前、3人は会場前の500メートルのレッドカーペットを歩いた。大勢のスターたちに交じって滝田監督は「まだ夢の中にいるようです」。本木は「誰が来ているか見回してました。さっきアンソニー・ホプキンスさんがいた。すっかりミーハーです」と、周りを見回して興奮を抑えきれぬ様子。肩を大胆に露出したベージュ色のドレス姿の広末は「よく眠れていません。まだぼーっとしています」とこちらも大舞台に落ち着かない様子。ドレスを選んだ理由に「自然になれるかなと思って」と話し、「こちらの方がこの映画を受け入れてくれたことが満足で幸せ。現代劇で日本映画が認めてもらえるのはすごい進歩」と話していた。 米アカデミー賞外国語映画賞には日本映画として山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」以来、5年ぶりのノミネートだった。時代劇ではなく現代劇での受賞は外国語映画賞の前身、名誉賞時代を含めても初めて。また日本映画の米アカデミー賞2冠は、1955年の第27回で「地獄門」(衣笠貞之助監督)が、名誉賞(現・外国語映画賞)と衣装賞を受賞して以来の快挙となった。 【評論家・垣井氏「分かりやすい映画」】 「おくりびと」の受賞に映画評論家の垣井道弘氏は快挙について2つの理由があると分析した。 まず「分かりやすい映画だったことが大きい。洋の東西を問わず、葬儀というセレモニーを扱ったという点ですんなり受け入れられた」。 米国の映画界はこれまで、日本の実写映画について、時代劇は評価しても、ホラー以外の現代劇はさほど興味を持っていなかった。 「葬儀での様式美を極限まで高めた『おくりびと』は時代劇にも通じるものがある。西洋からみるとよほど魅力的だったに違いない」 今後、オスカーを狙う日本映画の選考基準が変化するとも。「今回は『つみきのいえ』の受賞で日本のアニメーション映画の水準の高さも改めて見せつけた。日本映画が再び世界で注目されるだろう」と期待を寄せていた。 ZAKZAK 2009/2/23
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2、社説:アカデミー賞 日本の文化発信力を証明した 毎日新聞 2009年2月24日 世界が注目するアメリカ映画界の第81回アカデミー賞で、日本作品が二つの部門で受賞した。外国語映画賞の「おくりびと」と短編アニメーション賞の「つみきのいえ」だ。先行き不安が募る今、明るいニュースには違いない。だが、それだけにとどめず、私たちが目指すべきもう一つの底力「文化発信大国」の希望と自信につなげたい。 「おくりびと」の主人公は失業で偶然、未知の納棺師の仕事に転じ、さまざまな死と向き合い、変わっていく。「つみきのいえ」は水面上昇に没していく街に積み木のように上へ建て増しして暮らす老人と失った家族への思いの物語だ。 死生観や地球温暖化問題もにじませ、内面的な深いテーマを追う作品が言語文化や国を超えて心をとらえた。言葉や風習、価値観は異なっても、優れた映画には普遍的な発信力、コミュニケーション力がある。 「おくりびと」は先に今年度の第63回毎日映画コンクールで日本映画大賞に選ばれ、「納棺師という職業に着目したアイデアが的確に生かされたうえに、監督、脚本、演技、撮影、音楽ほか、すべての部門で優れた成果をあげて、人生について深く考えさせる作品になった」と講評された。 着目、計画、製作、仕上げまでさまざまな分野の才が織りなす総合芸術としての映画。その醍醐味(だいごみ)が端的に言い表されている。 敗戦後間もなく、黒澤明監督の「羅生門」がベネチア国際映画祭でグランプリを取ったことは、湯川秀樹博士のノーベル物理学賞とともに日本人を励ました。今は時代状況は大きく異なるが、経済的豊かさとは別に、世界に認められ敬意を払われる文化的な力や豊かさは人々を元気づけ、創造的活動の動機付けになることに違いはない。 新しい流れもある。 かつて日本の文化は欧米に異国趣味でしか受け入れられないと考える人が少なくなかった。映画や文学はそんな古い意識の壁を努力して越えてきたが、近年あっさり越えているのは「クールジャパン」とも呼ばれる漫画、アニメ、音楽、ゲームソフト、ファッション、風俗など旧来の形にとらわれないアートだろう。 映画も昨年、邦画が洋画を興行成績で上回り、元気だ。今回受賞の背景には日本映画復調の流れもある。 今、危機的な経済行き詰まり状況の中で、従来の産業モデルの転換が説かれ、人生設計や生き方を見直す論議も高まっている。 受賞2作はその意味でも時宜にかなっていたといえるが、こうした映画の元気さや若々しい文化を新たな国の力としてとらえ発展させることはできないだろうか。政府が一番その辺の感度が鈍いのではないか。 今回の賞が発想を転換させるきっかけとなるよう期待したい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 3、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎さん(53)=24日付「顔」 2009年2月24日07時10分 読売新聞 「納棺師という題材だったので、映画の終わり方が最初は見えてこなかった。でも、今日、最高の終わり方ができました」 昨年9月のモントリオール世界映画祭グランプリ受賞に始まり、日本国内の映画賞を総なめにした監督も、渡米後、授賞式に臨む前は「スピーチは考えていない。真っ白」。強敵ぞろいだった外国語映画賞レースに競り勝った理由を、「日本映画のスタッフ、キャストの素晴らしさ」と、謙虚に締めくくった。 富山県高岡市出身。成人映画で監督デビューした後、1986年の「コミック雑誌なんかいらない!」で注目され、「病院へ行こう」「陰陽師」などの話題作を連発してきた。明るく快活な性格で、どの映画からもからっとした優しさがにじむ。 妻の元女優・千多枝(ちたえ)さん(44)との間に3女がいる。長女の明依(めい)さん(19)によると、家では良きパパ。「おくりびと」を家族で一緒に見たとき、「自分の映画の解説はしないよ。言いたいことは、すべて映画の中に詰まってるからね」と話したという。 世界的栄冠に輝いた後も、「これまで通り撮り続けたい」と誓った。(文化部 近藤孝) (2009年2月24日07時10分 読売新聞 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4、社説:アカデミー賞、ダブル受賞が示す日本の実力 2月24日付・読売社説 日本映画の実力が、また世界に示された。 米アカデミー賞外国語映画部門で滝田洋二郎監督の「おくりびと」が、また短編アニメ部門で加藤久仁生監督の「つみきのいえ」がそれぞれ受賞を果たした。 日本の映画作品では、2002年度に宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が長編アニメ映画賞を受賞して以来のことだ。 日本映画の外国語映画賞受賞は名誉賞と呼ばれていた時代の1955年度の「宮本武蔵」(稲垣浩監督)以来だ。短編アニメ映画賞は初の受賞である。 今回のダブル受賞は、日本映画のさらなる活性化への弾みになるのではないか。 「おくりびと」は、死者を棺(ひつぎ)に入れて送り出す納棺師の男性が、仕事に戸惑いつつも生を見つめ直し、成長していく物語だ。 十数年前から納棺師や死の問題に深い関心を抱いていた俳優の本木雅弘さんが映画化を提案して、主役も演じた。 人間の「生と死」という普遍的なテーマに挑んだ作品が、国際舞台でも高く評価されたということだろう。昨年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞したフランス映画「クラス」などの有力作品を制して栄冠に輝いた。 放送作家小山薫堂さんによる脚本も、今年度の読売文学賞で戯曲・シナリオ賞を受賞するほど秀逸な内容のものだった。 「つみきのいえ」は、海面が上昇して水没する街で、積み木のように家を上に建て増ししていく老人を主人公にした12分の短編だ。繊細な手描きのタッチで老人の追憶の世界を叙情豊かに描いた。 日本映画のこのところの健闘はめざましい。昨年1年間の邦画の興行収入は前年比22%増の1158億5900万円で、過去最高を記録した。宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」の大ヒットなどが後押ししたと見られる。 一方で、今回のアカデミー賞を受賞した「つみきのいえ」のような短編アニメは、水準の高い芸術作品であっても上映機会はほとんどなく、採算が取れない。 文化庁のメディア芸術祭などが発表の場となっているが、こうした上映の機会を広げていくことが望まれる。 東京芸大大学院映像研究科には昨年、アニメーション専攻が設けられた。02年度アカデミー賞短編アニメ部門に作品をノミネートされた山村浩二さんらが教鞭(きょうべん)をとるが、こうした分野の人材育成もさらに進めていきたい。
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