『日々の映像』

2008年12月20日(土)  労働環境を直視しなければならない


報 道
1、住宅の悩み、4日間で5000件=非正規労働者の特別相談−厚労省
                   2008年12月19日 時事通信 
2、派遣切り後も住宅提供→1人月4万〜6万円、企業助成へ
                   2008年12月19日読売新聞
3、社説:雇用崩壊 一体政治は何をしているんだ
                    毎日新聞 2008年12月19日 
4、社説1 政策総動員し雇用対策さらに充実を
                   2008年12月19日  日経

 年の瀬に押し寄せる未曾有の雇用悪化が進んでいるのに、この問題で与野党が激しく対立している。全国で上がる悲鳴をよそに与野党で批判合戦をしている時ではないとおもう。こんな時こそ与野党が歩み寄り、雇用の具体策を実施するのが政治の責務のはずだ。
 
 民主、社民、国民新の野党三党提出の雇用対策四法案が18日の参院委員会で可決された。19日の本会議で可決後、衆院に送付される。野党が「政府は無策だ」と批判すれば、与党は「国会閉会間近に出したのはパフォーマンスにすぎない」と強く反発。成立の見込みはない。誰のために政治をやっているのかを考えて欲しいものだ。

 昨日鉄鋼加工会社の幹部社員と懇談したが、仕事の減り方が恐怖に近いという。
今まで経験したことのない労働環境になるのは必至であり、今後の動向を直視しなければならない。

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1、住宅の悩み、4日間で5000件=非正規労働者の特別相談−厚労省
                   2008年12月19日  時事通信 
 厚生労働省は19日、非正規労働者を対象に全国の主要ハローワークなどで今週開始した特別相談の実績を発表した。15−18日の4日間に寄せられた相談は延べ7500件を突破。このうち、「失業によって寮から退去を迫られた」など住宅の確保に関するものは4939件に上った。職業相談は2566件あった。
 住宅関係の相談件数を都道府県別に見ると、上位は(1)愛知(1107件)(2)東京(410件)(3)岡山(394件)(4)広島(341件)(5)岐阜(243件)−の順。自動車メーカーが拠点を置く地域が目立ち、自動車産業を取り巻く環境の厳しさを示した。(2008/12/19-16:46)
ハローワーク:30日まで仕事納め延期 全国53カ所、解雇者の住居問題に対応  毎日新聞 2008年12月19日 東京夕刊
 厚生労働省は19日、契約途中で解雇された派遣労働者などの住居問題の相談に応じているハローワークを29、30日も開庁することを決めた。26日が官庁の仕事納めだが、仕事を失った労働者の住居問題が深刻化する中、「担当官庁が御用納めとはいかない」と急きょ対応を決めた。
 ハローワークでは、住居を失った労働者に雇用促進住宅のあっせんや生活資金の貸し付けなど、政府の支援策に沿った相談業務を行っている。15〜18日に約5000件の住宅相談があり、雇用促進住宅への入居が167件決まっている。
 29、30日は全国の主だった53カ所のハローワークを午前10時から午後5時まで開庁。土曜日の27日も148カ所が業務を行う。年明けは1月5日から業務を再開する。ハローワークの開庁に伴い、資金貸し付けの引き受けを表明している全国の労働金庫も27〜30日は支店で貸し付け対応を行う。
 ハローワークはこれまで、27日〜1月4日の9日間は閉庁することになっていた。
 これに対し非正規労働者を組織する労働組合から「年末に寮を追い出される労働者が多い。その時に役所が開いていないのでは命にかかわる事態になる」と相談業務を行うよう求める声が強く出ていた。ハローワーク職員からも「今、やらなければ存在意義を問われる」との意見も出ていた。
 ハローワークと共に賃金不払いや解雇問題に対応する労働基準監督署も、全国47カ所で対応する。問い合わせは各ハローワークへ。【東海林智】
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2、派遣切り後も住宅提供→1人月4万〜6万円、企業助成へ
                    2008年12月19日14時47分 読売新聞
 厚生労働省は19日、契約を打ち切られる派遣労働者や期間従業員らが急増していることに対応するため、契約打ち切り後も寮などの住宅を無償提供する企業に対し、労働者1人当たり月4万〜6万円を助成する制度を創設すると発表した。
 2次補正予算で対応する方針で、実施されれば12月9日にさかのぼって適用するという。助成期間は最長6か月。
 また、舛添厚労相は19日の閣議後記者会見で、閉庁日の今月29、30日も全国の主要なハローワークで非正規労働者からの職業相談や住宅相談に応じることも明らかにした。対象は、全国53か所のハローワークと、東京都新宿区、名古屋市、大阪市に開設した非正規労働者専用の窓口「キャリアアップハローワーク」。解雇などに絡み、法令違反の問題に対応するため、全国47か所の労働基準監督署でも相談を受け付ける。
          ◇
 厚生労働省は19日、全国187か所のハローワークに今月15日に設置した住宅相談窓口と、18日に東京都新宿区に開設した非正規労働者専用窓口「キャリアアップハローワーク」に、派遣労働者らから合わせて計4939件の住宅相談が寄せられたと発表した。仕事を失い、住む場所をなくすなどの相談が目立つ。都道府県別では、愛知県が1107件で最も多かった。
 相談件数のうち548件で雇用促進住宅への入居が決まったという。
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3、社説:雇用崩壊 一体政治は何をしているんだ
                    毎日新聞 2008年12月19日 0時06分
 師走の日本列島に雇用破壊の嵐が吹き荒れている。多くの派遣社員や期間従業員が契約を突然打ち切られ、仕事を失っている。職場ばかりか、住む所までも奪われ、寒空に放り出されていく。自動車メーカーをはじめ、日本経済をけん引してきた大企業が一斉に人員削減に走る姿はかつてなかった異様な光景だ。
 日産自動車がすべての派遣社員の契約を来年3月末までに打ち切ると発表した。トヨタ自動車やホンダをはじめ多くの自動車メーカーなども大幅な人員削減を打ち出し、社会不安が広がっている。非正規社員から始まったリストラの波は正社員にまで及び始めた。すでに系列や下請けに波及しており、どこまで拡大するかは予断を許さない。
 「暮らしていけない」「次の仕事がない」。こうした失業者の悲痛な声が聞こえない政治家はいないはずだ。暮らしの糧としてきた仕事を会社の都合で打ち切られた人たちを救済するのは政治の仕事であるのに、動きは鈍い。「こんな時に政治は何をやっているのか」。多くの人が怒り、そして悲嘆にくれている。
 参院厚生労働委員会では18日、民主、社民、国民新の野党3党が共同提出した雇用対策関連法案が可決された。雇用対策を盛り込んだ2次補正予算案を来年の通常国会に出すことを決めている自民、公明党は「(法案の中身は)すべて政府がやろうとしている。民主党のアリバイ作りだ」などとして採決に反対した。相も変わらぬ光景だが、これを見せられる国民はたまったものではない。
 野党3党案は与党案と重複した内容もある。国会の会期は残り少ないが、必要なのは早急に雇用対策で合意を形成して実行に移すことだ。与野党の肩には失業者の暮らしがかかっている。直ちに議論を始め、法案の成立を図ってもらいたい。生活ができないという失業者への生活支援金貸与や住宅対策はすぐにでも行うべきだ。雇用対策を来年の通常国会に先送りにしてはならない。
 当面の雇用対策に加え、労働者派遣法を抜本的に見直すことも緊急の課題だ。今回、人員削減が激しく行われているのは主に製造業だ。派遣法改正によって、04年に製造業派遣が解禁されて以降、もの作りの現場で正社員から派遣への切り替えが進んだ。しかし、不況となれば非正規社員は真っ先に解約され、ポイと捨てられた。非正規社員は「使い捨て」労働者だったことが、だれの目にも明らかになった。
 製造業派遣を再び禁止すべきだという意見も強くなっている。現在、国会には日雇い派遣を原則禁止とする派遣法改正案が提出されているが、これでは不十分だ。製造業派遣の禁止や登録型派遣の是非をも含めて、派遣法を全面的に見直す時がきている。
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4、社説1 政策総動員し雇用対策さらに充実を(12/19)
                        2008年12月19日  日経
 雇用情勢の悪化は急速に深刻の度を深めている。自動車、電機などの大手メーカーが次々と人員削減を発表し、非正規労働者だけでなく正社員にも影響が及び始めた。大手製造会社の下には膨大な中小の関連企業が存在する。雇用不安がさらに加速することも考えられる。政府、与野党は政策を総動員し、雇用対策の充実を図ることが重要だ。

 政府・与党は先ごろ3年間で2兆円にのぼる新雇用対策をまとめた。雇用保険制度を見直し、非正規労働者への適用基準の緩和や地域で安定雇用をつくるための特別交付金の増額などを打ち出した。だが雇用情勢が予想以上に悪化する中で果たしてこれで十分なのか。状況を冷静に判断し、必要な対策があれば追加をためらうべきではない。

 対策の多くは予算措置や法律改正が必要だ。政府・与党は来年1月からの通常国会に雇用保険法改正案や今年度第2次補正予算案を提出し、その成立を待って対策を実施する方針だが、まず法改正なしにできるものは早く実行すべきである。

 厚生労働省は通達をだして、相談業務の充実や雇用促進住宅への入居あっせんなどを始めているが行政の判断・権限で実施できる対策はほかにもあるのではないか。一般会計や労働保険特別会計の予備費を活用するなど知恵をだして機動的に対応する必要がある。

 雇用対策をめぐっては野党3党が提出した4法案に与党が猛反発している。4法案の中には期間社員などの契約期間中の解雇を基本的に無効とするものなど企業の手足を縛りすぎないかと懸念される法案も含まれている。しかし政府・与党の対策案と共通する措置もある。

 例えば非正規労働者の失業保険の受給要件緩和や、再就職が困難な人への給付日数の延長など、与野党ともに必要と認め、かつ急がれる政策については今国会の会期内に審議を進められないものだろうか。国民の目線に立ちあらゆる可能性を探る必要がある。

 雇用削減の痛みは、大手企業の工場が立地する特定の地域により大きくでている。キヤノン子会社の工場がある大分県杵築市などは失職した従業員を市の臨時職員として雇う試みを始めた。国の支援を待っていては住民の生活を守れないとのせっぱ詰まった判断だろう。

 麻生太郎首相は2009年度予算で積み増す地方交付税の1兆円を雇用対策に使うよう指示したが、自治体とすれば今使えるお金がほしいはずだ。雇用対策は待ったなしである。


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石田ふたみ