『日々の映像』

2008年09月17日(水)  FRBがAIGに850億ドルの融資枠

公的資金による救済が、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)には適用された。「資産総額が1兆ドル(約106兆円)を超え、各国に保険契約者取を持つAIGがもし破(は)綻(たん)すれば、世界的な金融恐慌につながる恐れがあったためだ。」(産経新聞から)資産106兆円のAIGに850億ドル(約9兆円)の資金不足が生まれる・・・このメカニズムが良く分からない。

具体的には米連邦準備制度理事会(FRB)は16日夜、資金繰りの悪化に直面している米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に対し、融資する権限をニューヨーク連銀に与えたと発表した。果たしてこれで破産の連鎖が収まるのだろうか。AIGの株価は1週間で約47%も下落し、リーマンの経営破綻がAIGを追い込む引き金になったようだが、市場の標的にされるとどんな巨大保険会社も持たない事例を示している。市場主義の恐怖の側面とはいえないだろうか。

FRBがAIGに850億ドルの融資枠、米政府が株式79.9%を取得
                        2008年9月17日  日経
米金融危機】リーマンばっさり、AIG救済 米政府・FRBの判断基準は
                        2008年9月17日 産経新聞
AIG救済:2日で方針転換 連鎖破綻の懸念強く
                       毎日新聞 2008年9月17日
米AIGへの融資決定、FRBの一貫性に疑問符も
                       2008年 9月 17日 16:28 JST
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FRBがAIGに850億ドルの融資枠、米政府が株式79.9%を取得
                    2008年9月17日  日経
 ワシントン(ダウ・ジョーンズ)米連邦準備制度理事会(FRB)は16日夜、資金繰りの悪化に直面している米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(NYSE:AIG)に対し、最大850億ドルを融資する権限をニューヨーク連銀に与えたと発表した。この有担保の融資は、米国政府および納税者の利益を保護する仕組みの条件が付いているとした。
 FRBは、AIGが現在の状況で「無秩序の破たん」に陥れば、金融市場をさらに脆弱(ぜいじゃく)にし、借り入れコストの大幅増加、家庭の財産の減少、経済活動の著しい弱化につながると判断した、としている。
 AIG向けの融資枠は期間が24カ月。AIGはこの枠から最大850億ドルを引き出すことが可能。融資はAIGの全資産を担保としている。融資は、AIGの資産売却によって返済される見込みとしている。
 米政府はAIGの株式79.9%を取得し、普通株および優先株の株主への配当支払いに拒否権を発動する権利を有するという。
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米金融危機】リーマンばっさり、AIG救済 米政府・FRBの判断基準は
2008.9.17 産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】米証券大手リーマン・ブラザーズに対しては「一切考えなかった」(ポールソン米財務長官)公的資金による救済が、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)には適用された。資産総額が1兆ドル(約106兆円)を超え、各国に保険契約者取を持つAIGがもし破(は)綻(たん)すれば、世界的な金融恐慌につながる恐れがあったためだ。
 破綻した際の影響を考え、公的資金必要なしと判断すれば、総資産6000億ドル(約64兆円)と日本の国家予算(約83兆円)並みの規模を持つリーマンさえもばっさりと切り捨てる。戦後最大の金融危機を荒療治する米国の冷徹な市場主義が、そこに見える。
 AIGとリーマンの明暗を分けたFRBと米政府の下した判断の違いは何だったのか。
 「緊急かつ切迫した状況に限り、ノンバンク(銀行ではない金融会社)への貸し出しを認める」。保険会社の監督権限は州政府にあり、本来管轄外のAIGへの異例の大型融資は連邦準備法第13条のこの条文を根拠に行われる。これは、3月に経営危機に陥った証券大手ベアー・スターンズに290億ドルの特別融資を実施した際の法的根拠でもある。なぜ、リーマンには適用されなかったのか。
リーマンの経営危機は数カ月かけてゆっくりと進行しており、市場もリーマンも「悪化していく経営に対して対処できる時間的余裕があったはず」と金融当局者は語る。しかし、世界130カ国で業務を展開する巨大保険会社AIGが突然消滅した場合、すでに脆弱(ぜいじやく)な世界中の金融システムに予測不可能なインパクトを与える可能性があった。
 AIGは低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)関連商品を大量保有するばかりか、社債や住宅ローン関連証券の焦げ付きリスクを保証するデリバティブ(金融派生商品)取引「クレジット・デフォルト・スワップ」の主要プレーヤーでもある。破綻の衝撃がこうした複雑な取引を通じて、欧米、アジア市場にドミノ式に波及する光景が金融当局者らの目に映ったとしてもおかしくない。
 「リーマンの次」と市場の標的となったAIGは、資金繰り悪化による破綻を回避するため、FRBにつなぎ融資を要請する。ポールソン米財務長官はこの要請を突き放すが、FRBが有力金融機関に要請した最大750億ドルの融資枠設定が不調に終わってしまう。AIGの破綻が現実味を増してきたため、米政府として否定的だった公的資金による救済に追い込まれた格好だ。ポールソン米財務長官はAIGのウィルムスタッド会長兼最高経営責任者(CEO)に引責辞任を迫ったという。
 AIG救済で米国発の金融恐慌はひとまず食い止められた。しかし、サブプライム問題の底は見えない。リーマンとAIGの“線引き”に破綻予備軍は脅えているだろう。FRBのバーナンキ議長とポールソン米財務長官には「公的資金による救済基準の明確な説明責任が求められてくる」(ラインハート元FRB金融政策局長)。

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AIG救済:2日で方針転換 連鎖破綻の懸念強く
毎日新聞 2008年9月17日
 【ワシントン斉藤信宏】米連邦準備制度理事会(FRB)が16日、米保険大手AIGへの融資を実施して救済に乗り出した背景には、証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)をきっかけに米金融業界で連鎖破綻への懸念が急速に強まっていたことがある。14日までのリーマン救済に向けた協議では、米財務省とFRBは強い姿勢で公的資金投入を拒んだが、予想をはるかに超える勢いで吹き荒れた市場による淘汰(とうた)の嵐を前に、世界的に見ても異例の「保険会社への特別融資」に踏み切らざるを得なくなった形だ。
 FRBは当初、AIGからのつなぎ融資の申請に対して、民間金融機関同士の融資で資金調達するよう促し、米証券大手ゴールドマン・サックスや金融大手JPモルガン・チェースにAIGへの融資を持ちかけた。ところが、市場環境の急激な悪化で金融機関の体力は急速に衰え、既に他の金融機関を支援するだけの余力はなくなっていた。逆に経営状態に自信のある金融機関でも「いつ市場の標的になってもおかしくない」(米エコノミスト)という状態に陥っていた。市場予想を大幅に上回る決算にもかかわらず、証券大手モルガン・スタンレーが決算発表を半日前倒しするなど、金融業界内には過剰とも言える危機感が広がっていた。
 米金融当局が公的資金の投入拒否を貫き、市場原理と民間支援に任せておくには、あまりにも環境が悪化し過ぎていた。しかもAIGは、企業の破産や債務不履行に伴う損失から投資家を守るための保険契約の一種であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証業務を手広く行っていた。このため万一、AIGが破綻すれば60兆ドル(約6300兆円)規模に膨らんだCDS市場が大混乱に陥る恐れもあった。
 ただ、一度は市場原理に金融機関の命運を委ねた米金融当局が、わずか2日で方針を転換させた責任は重い。AIGの株価は既に先週末までの1週間で約47%も下落し、リーマンの経営破綻がAIGを追い込む引き金になることは容易に想像できた。米財務省とFRBは金融業界と市場に対して、重い説明責任を負うことになった。
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米AIGへの融資決定、FRBの一貫性に疑問符も
2008年 09月 17日 16:28 JST
 [ワシントン 16日 ロイター] 米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス(LEH.N: 株価, 企業情報, レポート)の支援要請には応じなかった米連邦準備理事会(FRB)が、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N: 株価, 企業情報, レポート)に850億ドルの融資を行うと表明したことで、FRBの姿勢の一貫性に疑問を呈する声も出ている。
また融資を求める企業がこれから多数出てくる可能性が高まった、との指摘も聞かれる。
 経営難に陥った企業を破たんさせるのか、規模が大きく影響が甚大との理由で救うのか。その判断基準をめぐって、議論を呼びそうだ。
 FRBがこの春ごろから実施した金融セクターに対する支援額は、ベアー・スターンズ救済関連で290億ドル、米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)にそれぞれ1000億ドル、米連邦住宅局(FHA)に最大3000億ドル、そして今回のAIGへの850億ドル。その他の救済策や融資を含めると、納税者の負担総額は9000億ドルを上回るとみられる。
 ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのノウリエル・ロウビニ教授は「FRBはリーマンには断固とした対応をとるふりをしながら、2日後には別の企業を救済している。損失を社会全体で負担するシステムが続いている」と指摘。自動車メーカーや航空会社など、経営難の企業が今後支援を求めてくることは確実と述べた。
 AIGが破たんすれば世界中の多数の企業に損害が及ぶほか、62兆ドルのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場が混乱に陥る恐れがあるため、政府が「ノー」と言うのは確かに難しかった。
 市場ではAIG救済を求める声が強く、16日の米国株式市場では、政府による救済のうわさを材料に、AIGの株価は乱高下した。
 ただロウビニ教授は、政府が企業に簡単に融資すればリスクの高い行動を助長すると指摘。その代わりに政府は、住宅ローンを買い取って融資条件を改定し、債務者が返済できるようにするべきと述べた。 
 <株売り・債券買いの流れ加速も> 
 FRBは確かに、今回のAIGへの融資に際して、さまざまな厳しい条件をつけている。ローンの金利は高水準で、政府は配当に拒否権を発動でき、またAIGは向こう2年以内に資産を売却して、ローンを返済することが求められている。経営陣の入れ替えも発表された。
 ただ株式がほぼ無価値になる一方、債券は保護されるという点で、ベアー・スターンズやファニー、フレディ救済とパターンは同じだ。
 エコノミストは、投資家が将来の救済を見込んで、経営が困難になった企業の株を売り、債券を購入するという動きに出る、と警告する。そうなれば、株価はさらに下落し、状況はますます厳しくなる。
 JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は「株式は無価値になり、債券保有者は保護される、というメッセージならば、これは一種のモラルハザードだ」との見方を示した。 
 <FRBに説明責任> 
 FRB当局者は、AIGの金融市場への関与の大きさにより、行動の必要があった、と強調している。AIGは、保険・リスク・資産運用事業を通じて、世界中の数千の企業と取引をしており、仮に経営破たんとなれば、世界的な影響は甚大なものになる、とみられている。
 RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ハンク・カレンティ氏は、AIG破たんの際の影響は1800億ドル以上、つまり、金融機関がクレジット危機発生以来に調達した資本の半分、と試算する。
 ただJPモルガンのフェロリ氏は、破たんさせるという選択肢もあったと主張。FRBは企業を救う理由を明確に説明する必要があり、そうでなければ救済を要請する企業が多数出てくる、と述べた。
 バーナンキFRB議長はこれまでのところ、リーマンやAIGの問題では前面に出てきていないが、来週には公聴会で証言する予定だ。
 フェロリ氏は「何がシステミックリスクなのか、議長ははっきりと説明する必要がある」と指摘。「FRBは現在の危機において多数の異例の措置をとってきたが、これ(AIG救済)が最も議論を呼ぶものになろう。議長の証言は、非常に興味深いイベントだ」と述べた。 


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石田ふたみ