『日々の映像』

2008年07月23日(水)  生活保護の視点

 生活保護の問題はさまざまな視点がある。7月22日の朝日新聞の記事をエンピツに収録した。ここでの視点は、国の抑制策背景に自治体窓口で、申請45%しか受付されていないことである。06年度は34万8276世帯が相談に訪れ、うち15万5766世帯が申請している。申請したというデータで、生活保護を受けたというデータでない。

 生活保護世帯が100万世帯を超えたのは2005年であった。100万世帯の生活保護費は約2兆円である。あるコンサルタントは、現在の引きこもり・フリーターの層が高齢者になる時代は、「生活保護を受けなければ生活できない人口が軽く500万人を超えるだろう」との指摘がある。こうなると生活保護費に10兆円が必要になる。
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20071125

 ともかく、日本はこの10年余りで極貧困層(相対的貧困率)が増えている。世帯に対して極貧困層が15%に達しているのである。極貧困層とは「所得の分布における中央値の50%に満たない人々の割合」でとなっている。
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20071222

 日本は「年収200万円以下が1000万人を超えた。働き手の3人に1人、約1700万人は正社員以外だ」(朝日社説から)という凄まじさなのである。 社会を支えるはずの若い世代が、自分の暮らしも維持できない事態が広がっているのだ。よく言われる生活保護世帯以下の収入しかないワーキング プアである。年収200万円以下の労働者は2006年には1985年以来、21年ぶりに1000万人を突破している。
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20080227

 前記した「生活保護を受けなければ生活できない人口が軽く500万人を超えるだろう」の最大の根拠は国民年金を納めていない人が、868万人〔障害者の約100万人を含む〕もいるのである。
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20080110

 現実に目をそらすことは逃避であり、私たち一人一人に何が出来るかを考えなければならないと思う。

生活保護、自治体窓口で申請45% 国の抑制策背景に
                    2008年7月22日 朝日新聞
2008-07-10 札幌市の生活保護受給者数が過去最高に
              http://d.hatena.ne.jp/sogyo1000/20080710
生活保護
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7

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生活保護、自治体窓口で申請45% 国の抑制策背景に
2008年7月22日 朝日新聞
 全国各市と東京23区の生活保護窓口へ相談に訪れた人のうち、生活保護の申請をした割合(申請率)は06年度、45%程度にとどまっていた。朝日新聞社が情報公開法に基づき厚生労働省から資料を入手した。バブル崩壊以降、生活保護を受ける人は増え続ける一方、国は社会保障費の抑制策を進めており、窓口で申請をさせない違法な「水際作戦」の広がりをうかがわせる。
 生活保護制度では、福祉事務所の相談窓口は、住民から申請を受け付けた後、収入や資産などを調査して保護を開始するかどうか決める。本人の意思に反して申請を受け付けない行為は生活保護法違反となる。
 申請率は05年度まで、基となる相談数の集計方法が市区の福祉事務所によってまちまちだった。06年度からは、相談に来た世帯の数を基に統一され、申請率が正確に出るようになった。集計方法を誤り、再集計不能の京都市を除く全市区分を朝日新聞社が分析した。
 06年度は34万8276世帯が相談に訪れ、うち15万5766世帯が申請。申請率は全国平均で44.7%だった。政令指定市は41.2%、それ以外は46.7%で、都市部の方が低い傾向にあった。
 指定市で最も低かったのは、北九州市の30.6%。06年当時、申請率の上限など数値目標を設ける保護抑制策が批判されていた。市は「親族による扶養など生活保護以外の指導に重点を置いた結果の(低い)数値。『不適切』との指摘を受け止め、改善を始めている」という。
 指定市での最高は千葉市の70.5%だった。市によると、福祉全般に通じたOB職員を窓口に配置し、必要な場合は保護につなげているという。
 同じ市のなかでも格差は大きい。保護世帯が全国一多い大阪市では、24区のうち北区の72.4%から浪速区の21.8%まで50ポイント以上の差があった。東京23区でも、足立、板橋、世田谷区は区内の福祉事務所間でも30ポイント以上の開きがあった。(永田豊隆、清川卓史)
■保護費削減へ自治体に圧力
 バブル崩壊以降、生活保護を受ける人は増え続け、06年度の保護費は2兆6千億円を突破した。政府は社会保障費の抑制策をとっており、03年以降、高齢者やひとり親への保護費加算を廃止した。
 保護費の4分の1をまかなう自治体にも、削減の圧力が及んでいる。05、06年に北九州市で保護申請を断られた男性が相次いで孤独死するなど、窓口で申請書を渡さず相談扱いにとどめる「水際作戦」が法律家や福祉団体から批判されるようになった。厚労省も一部自治体への監査で06年度当時の相談記録に、「申請意思を確認していないなど申請権の侵害が疑われるケースもあった」という。
 政府は現在、生活保護基準以下の低所得層のうち実際に保護を受けている割合(捕捉率)を調べていない。だが、複数の研究者らが15〜20%程度と推計しており、欧州諸国と比べて低いとされている。
 厚労省は今年4月、保護申請の意思を確認し、意思があれば速やかに申請書を交付するよう通知。自治体への監査でも、窓口対応の記録の点検を強化した。
 厚労省保護課は「相談したうえで生活保護以外の方法で解決するケースもあるし、対応が丁寧な福祉事務所に多くの相談が集まることもあり得るので、今回の申請率が妥当かどうかは一概に評価できない。ただ、06年度当時、申請意思の確認が不十分な例があった可能性もあり、今は徹底を図っている」としている。
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 〈生活保護制度〉 国が決めた「最低生活費」を世帯収入が下回る時、その差額が支給される。自治体の福祉事務所は保護申請を受けると、預貯金などの資産、働く能力、親族の援助などを調査し、保護の要否を判定する。申請を受ければ、必ず調査と要否判定をしなければならない。最低生活費は居住地や世帯構成で異なるが、大阪市や東京23区に住む3人世帯(33歳、29歳、4歳)の場合、家賃や医療費分を除いて約16万7千円。

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2008-07-10 札幌市の生活保護受給者数が過去最高に
http://d.hatena.ne.jp/sogyo1000/20080710

 札幌市内の生活保護受給者数が2007年度に5万2,702人となり過去最高に上ったと、本日の北海道新聞で報道された。受給者割合2.78%は全国平均(1.21%)の2.3倍で、道平均(2.46%)よりも高い。内訳は、高齢者世帯38%、傷病・障害者世帯34%、母子家庭14%。北星学園大学の木下武徳准教授によれば「病院の閉鎖などで、道内地方都市から札幌に移住した高齢者が、物価高騰のあおりを受け、生活苦に陥るケースも多い」という。
 1990年代前半は3万人前後で推移していた生活保護受給者数が、94年度から増加し続け、今や2万人も増えている。札幌市の人口はこの10年で12万人増えているが、その影で生活保護が急増していることを見れば、楽観できる人口増加ではないことがわかる。「日本一住みたい街」と呼ばれることもある札幌だが、内情は厳しいものがある。
   

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石田ふたみ