『日々の映像』

2008年07月19日(土)  竹島の歴史

 日本人で竹島の歴史を語れる人は少ないと思う。そう日本人にとって竹島に思いを強く持っている人は少ないのだ。

韓国にとって、「竹島は単なる小さな島の問題ではない。日本が竹島を島根県に編入した1905年は、日本が韓国から外交権を奪い、併合への道筋を開いた年だ。竹島は、日本による植民地支配の象徴とされている。」この理解が正しいように思う。

文部科学省は14日、中学の新学習指導要領の社会科解説書に日本の領土として取り上げることを決めた。韓国は駐日大使の一時帰国を決めるなど強く反発している。この問題が日韓関係に大きく影響を与えることになった。

竹島問題―日韓は負の連鎖を防げ
                            2008年7月15日  朝日新聞
社説:竹島記述 領土問題は冷静さが必要だ
                  2008年7月15日 毎日新聞
社説  先行き見えぬ朝鮮半島情勢
                   2008年7月15日 日経
禍根残す外交配慮 竹島記述
2008.7.14 23:06  産経新聞
学習指導解説書 「竹島」明記は遅いぐらいだ(社説)  
2008年7月15日  読売新聞
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竹島問題―日韓は負の連鎖を防げ
                 2008年7月15日  朝日新聞
 竹島が日本の領土であることについて理解を深めさせる。中学校の新しい学習指導要領の解説書にそうした趣旨が初めて書きこまれたことで、韓国側が激しく反発している。
 日本海にあるこの孤島をめぐっては、日韓双方が領有権を主張し、たびたび外交摩擦の火種となってきた。
 韓国政府はさっそく日本大使を呼び出して抗議した。国会議員の代表団がヘリコプターでわざわざ島に乗り込んで示威行動にも及んだ。
 韓国にとって、竹島は単なる小さな島の問題ではない。日本が竹島を島根県に編入した1905年は、日本が韓国から外交権を奪い、併合への道筋を開いた年だ。竹島は、日本による植民地支配の象徴とされている。
 韓国の人たちは「独島」と呼び、「独島、われらが土地」という唱歌で子どもの頃から愛国心を培ってきた。島の領有は韓国ナショナリズムのゆるがせにできない柱なのだ。
 3年前、島根県が編入100周年で「竹島の日」条例を制定し、韓国側が猛反発したことも記憶に新しい。
 日本政府はそうした韓国側の事情もくんで、竹島問題には抑制的だった。だが今回、様々な事情が重なって問題が先鋭化している。
 学習指導要領はほぼ10年ごとに改訂され、それに伴って解説書も見直される。それが今年に当たった。
 そこに向けて、自民党の一部などに、北方領土とともに竹島の領有権問題をもっと学校で教えるべきだ、とする声が強まっていた。
 一方で韓国では李明博政権が出発したばかりだ。北朝鮮の核や拉致問題で韓国との協力も欠かせないなか、福田首相としては、そうした外交への配慮から韓国を刺激するのは避けたい。
 それもあって3月告示の指導要領の改訂で竹島への言及を見送ったが、代わりに解説書では何らかの形で触れざるを得なかった。政権基盤の弱い首相の苦しい党内配慮も見える。
 韓国の事情も苦しい。米牛肉の輸入再開を機に、国民の不満が爆発している。李政権としても、ここで国民に弱腰を見せるわけにはいかないのだ。
 だが、ここは冷静になりたい。
 今回の解説書はあくまで日本政府の従来の見解に沿ったものに過ぎない。4社の教科書はすでに竹島を取り上げている。大多数の日本国民は良好な日韓関係を維持したいと望んでいる。日本政府はあらゆる機会にそのことを韓国に丁寧に説明すべきだ。
 韓国側の怒りも分からぬではないが、解説書では竹島の領有権をめぐって日韓の間の主張に相違があることを客観的に明記している。
 互いに主張し、違いがあればあることを認め合ったうえで、冷静に打開を図る。それ以外にない。
社説:竹島記述 領土問題は冷静さが必要だ
                    毎日新聞 2008年7月15日 
 日韓両国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)について文部科学省は14日、中学の新学習指導要領の社会科解説書に日本の領土として取り上げることを決めた。
 韓国は駐日大使の一時帰国を決めるなど強く反発している。しかし、ここは韓国側の冷静な対応を求めたい。
 日韓間では、4月に来日した李明博(イミョンバク)大統領と福田康夫首相が「新時代の日韓関係」構築を誓ったばかりだ。しかも、北朝鮮の核問題を協議している6カ国協議は、同国の核計画申告の検証方法をめぐって重要な局面を迎えている。
 日韓両政府は連携を強化して北朝鮮に対応すべき立場にあることを忘れてはならない。一朝一夕には解決が難しい問題で大切な日韓関係を逆戻りさせては何の得にもならない。
 解説書は、新たな学習指導要領について教員、教科書執筆者の理解を深めるため文科省が発行するものだ。指導要領のような順守の法的拘束力はないとされているが、教科書記述は事実上これに沿い、授業内容にも反映される。
 領土に関する記述の拡充は、改正教育基本法に規定された伝統・文化の尊重、国・郷土を愛する心の養成という目標をよりどころとしている。
 現行指導要領の解説書では、北方領土問題だけを「我が国固有の領土」と明記して取り上げている。今回の解説書は北方領土問題の記述のあとに、「また、我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要である」との記述を加えた。
 竹島の記述部分に「固有の領土」との表現を結びつけず、日韓両国に主張の相違があることを指摘したことは韓国側への配慮といえる。一方で「北方領土と同様に」という記述で、竹島の固有領土明記を求める勢力にも気を配っている。
 竹島の領有権問題は1965年の日韓基本条約締結時にも結論を出せなかった未解決の案件である。しかし、韓国の教科書は「独島は我が国の領土」と記述している。そうしたことを考えれば、「歴史的事実に照らしても、国際法上も明らかに我が国固有の領土」との立場の日本が教科書で竹島を取り上げても不自然ではないだろう。
 しかし、こどもたちを教育するための指針をめぐって日韓が対立するのは不幸なことだ。さまざまな配慮をめぐらした揚げ句、日本語としてすっきりしない表現になったことも現場の教師を惑わすだろう。
 国民感情を刺激しやすい領土問題は、両国政府が外交の場で理性的に、粘り強く話し合っていくべき問題である。感情的な対立を繰り返しているだけでは何の解決にもつながらない。
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社説  先行き見えぬ朝鮮半島情勢
                    2008年7月15日 日経
 朝鮮半島は果たして安定化に向かっているのだろうか。疑いと不安を感じざるを得ないのが現実だ。

 北朝鮮が提出した核計画の申告書をどう検証していくか。先週開いた6カ国協議の首席代表会合では、検証体制の大枠を決めた。核施設の無能力化と、見返りのエネルギー支援を10月末までに終えることも合意した。検証の手順など具体論は非核化作業部会で詳細を詰めるという。

 技術的な検証方法や手順は専門家に委ねざるを得ないが、せめて検証日程は決めてほしかった。米政府が議会通告したテロ支援国家指定の解除が発効する見通しの8月11日以前に検証作業を始め、矛盾があれば直ちに指定解除を撤回する構えがなければ、厳しい検証は期待薄だ。

 要は肝心の検証問題で多くのあいまいさを残し、対北朝鮮支援の日程だけを明確にしたのではないか。

 折から北朝鮮の景勝地・金剛山では、軍の立ち入り禁止区域に入ったとされる韓国人観光客が北朝鮮兵士に射殺される事件が起きた。冷え込む南北関係の新たな難題である。

 韓国政府は観光事業を中止するとともに、現地調査を要求した。だが北朝鮮は要請を拒否、「責任は韓国側にある」と逆に謝罪を要求する始末だ。理由はともあれ、貴重な人命を奪った事件である。南北が共同で真相究明するのは当然だ。

 世の常識が通じない北朝鮮を相手にどう交渉を進めていくか。拉致問題を抱える日本の立場も厳しい。本来頼りにすべき米国は、ブッシュ政権下での「核」の成果を急ごうと北朝鮮に譲歩を重ねる。北京五輪を控えた中国も北朝鮮問題で波風を起こしたくないのが本音だろう。

 日韓の連携に期待したいが、両国間でも竹島(韓国名・独島)を巡る対立が浮上。文部科学省は14日、中学校の新学習指導要領の解説書で、「我が国の領土・領域」として竹島に言及すると発表した。

 竹島は日本の領土である。領有権を守る大原則は譲れないが、日本側は「韓国との主張に相違がある」との表現を盛り込み、韓国側に配慮した。竹島を巡る対立を大きな政治問題にしないよう、日韓政府の努力を望みたい。日韓対立の激化は北朝鮮を喜ばすだけである。

禍根残す外交配慮 竹島記述
2008.7.14 23:06  産経新聞
 せっかくの北海道でのサミットで北方領土問題を取り上げないとか、東シナ海のガス田を中国に掘られたままなすすべがないとか、この国の政府にはとかく驚かされることが多いが、今回も思いっきり驚かされた。それは教科書の竹島をめぐる記述についてである。
 文部科学省は14日発表した中学校の学習指導要領の解説書の改定版で、「竹島が我が国固有の領土」であることを明記することを断念した。「日韓関係をぎくしゃくさせてはいけない意図のあらわれ」(町村官房長官)だという。
 改定版では初めて竹島について触れられることになった。その際に問題になったのが「固有の領土」という文言をいれるかどうかであった。
 この話が韓国に伝わると、韓国政府も、議会もマスコミも「独島(竹島の韓国名)は韓国の固有の領土、日本が固有の領土というのは許せない」と声を張り上げた。その結果、政府部内では閣僚間の話し合いが行われ、解説書の内容は高度な政治判断の場と化し、結局、「固有の領土」の記述を見送ることになったのである。
 韓国は竹島に警備部隊を駐留させ、電話線を引き、住所を確定し、ご丁寧に郵便番号まで作って、自国化を図っている。であればなおのこと、日本は固有の領土であることを主張して、争うべきなのである。現に日本は国際司法裁判所に提訴をすることを韓国に提案している。しかし、韓国は応じていない。その理由は「独島が韓国の領土であることは争うことのないほど自明」というのがその理由だ。しかし、日本にとっても「自国領であることは自明」であり、であればこそ、国際司法裁判所で争おうといっているのだ。同裁判所は当事国双方の提訴の同意がなければ、裁判を受け付けないので、裁判所の判断を得られないままである。提訴の同意をしないというのは、自国の主張に自信がないからだと思わざるを得ない。
改定版では北方領土に関して「北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること」と書きながら、竹島に関しては「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ」とまるでよそごとである。
 領土、領空、領海、そして国民の生命、身体、財産を守れない政府は、もはや政府ではない。相手が主張したら、こっちも主張してこそ政府なのである。
 ある韓国人外交官が私にささやいた言葉を思い出す。「領土問題は一歩でも譲ったら、取り返しのないことになりますよ。日本は経験がないでしょうが」。かつて国を奪われた民族の声は、いまわれわれの胸に響く。
(産経新聞東京本社編集長 大野敏明)
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学習指導解説書 「竹島」明記は遅いぐらいだ(7月15日付・読売社説)  
2008年7月15日  読売新聞

 国の将来を担う子どもたちに、自国の領土や歴史についてきちんと教えていくことは、学校教育の重要な責務だろう。
 中学校社会科の新学習指導要領の解説書に、韓国が領有権を主張している竹島について、日本の領土であると教えるよう初めて盛り込まれた。
 竹島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土である。それが日本政府の立場だ。
 日本の領土として、北方4島は、指導要領や解説書に加え、地理と公民の中学教科書全14冊に書かれている。竹島も4冊に記述があり、今回、解説書に記載されたのは遅すぎたぐらいだ。
 解説書に入れる方針が報じられた後、韓国の李明博大統領は懸念を伝え、韓国国会も日本固有の領土と明記しないよう決議した。
 解説書では、「竹島は我が国固有の領土」という直接的な表現を避けている。
 「北方領土は我が国固有の領土」として的確に扱うよう求めたうえで、竹島も「北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせる」とした。その際、竹島は日韓間に主張の相違があることに触れるよう求めている。
 韓国への配慮だろう。韓国政府は駐日大使を一時帰国させる方針を示すなど反発を強めているが、冷静な対応を求めたい。
 竹島は、遅くとも江戸時代初期の17世紀半ば以降、日本が領有権を確立し、1905年、閣議決定を経て島根県に編入された。
 ところが、サンフランシスコ講和条約が発効する直前の52年、当時の李承晩大統領が突然、日本海に「李承晩ライン」を設け、竹島を韓国領域内に入れて以降、不法占拠を続けている。
 韓国は、北朝鮮の核廃棄や拉致問題解決のため、密接に連携していかねばならない隣国である。
 だが、領土問題はもちろん、国民にどういう教育をするかは、国の主権にかかわる問題だ。外交上の配慮と、主権国家として歴史や領土を次世代に正しく伝えていくこととは、次元が異なる。
 解説書は指導要領と異なり、法的拘束力がないが、出版社の教科書編集や授業の指針となるだけに、意義は小さくない。解説書の趣旨を踏まえ、出版社はわかりやすい記述を心掛け、教師もしっかり指導していかねばならない。
 竹島の領有権をめぐる問題の解決は難しい。だからこそ、国民が正しく理解し、国際社会に日本の立場を明確に主張していけるようにすることが大切だ。


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石田ふたみ