道路特定財源でこれからも高速道路を作り続けるという基本政策は誤っていると思う。今までの30年でおびただしい道路が建設されたが、これが原因で地方が発展したかである。答えは否である。
これを裏付けるデーターは地価である。2008年の公示地価(1月1日現在)では地方圏の商業地は16年連続の下落となっている。なんと「1974年を100とすると72.8で、34年ぶりの低水準だ」なのだ。投資マネーは収益の見込めない地方から撤収をはじめるのは当然である。
背景にあるのは人口の減少だ。日本の人口自体が減り始めているのに加え、地方から東京など大都市への流出に歯止めがかからない。パイが縮小した地方経済に、高齢化が重くのしかかるのである。
このような背景のなかで、道路特定財源だけでも毎年5兆円を超える高速道路をつくる現在の政策は狂気に近いと思う。過去に建設国債発行して膨大な道路を作った。しかし、道路だけでは地方は活性かしないのである。国と地方に巨額の借金が残っているのに、地方の富を現す地価は34年前の水準に逆戻りしている。田中首相がめざした「国土の均衡ある発展」は人口減という流れの中でまぼろしになってしまったのである。
地方の「失われた30年」、生かされなかった道路・新幹線(2008/3/31 ) http://www.nikkei.co.jp/neteye5/ota/index.html
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 地方の「失われた30年」、生かされなかった道路・新幹線(2008/3/31 ) http://www.nikkei.co.jp/neteye5/ota/index.html
地方の地価が下げ止まらない。2008年の公示地価(1月1日現在)では地方圏の商業地は前年比1.4%下がり、16年連続の下落となった。1974年を100とすると72.8で、34年ぶりの低水準だ。投資マネーは収益の見込めない地方から撤収し始めた。
資産デフレ脱出ないまま地価下落圧力
住宅地の下落率は前年比1.8%下がり、下落は16年連続。74年対比の指数は140.6。商業地ほど悲惨ではないものの、バブル発生前の1980年代前半とほぼ同じ水準に過ぎない。
日本全体で見ると07年に資産デフレから脱出し、08年は2年連続の公示地価上昇。その後、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で雲行きが変わってきた。地方では資産デフレから出ないまま、再び地価下落圧力が強まろうとしている。
商業地の地価下落率上位地点の推移をみると地方の地価崩壊の惨状がわかる。1999年のトップは札幌市中央区の35.3%だった。その後、下落率トップ地点は北海道・旭川市、北海道・釧路市、兵庫県・姫路市、秋田市と移り下落率は20%を超えていた。
07年のトップ土佐清水市の下落率は17.9%で、08年の滝川市の14.6%はこの10年ではもっともましだ。財政破綻した夕張市の下落率最大地点は12.0%で、その下落率を上回る地点が滝川市のある北海道のみならず長崎、茨城、熊本、山口、香川、秋田の各県にある。
高すぎる下落リスク、投資マネーも東京回帰
背景にあるのは人口の減少だ。日本の人口自体が減り始めているのに加え、地方から東京など大都市への流出に歯止めがかからない。パイが縮小した経済に、高齢化が重くのしかかる。
08年の公示地価では金沢市、鹿児島市、松山市の商業地価が上昇している。しかし、生駒データ・サービス・システムによる空室率はそれぞれ15.7%、11.3%、12.8%。経済活動のふところは浅く、オフィスビルの収益が安定的には見込みにくい。
東京に投資先がなくなったと地方物件を物色していた不動産ファンドも様変わり。昨年、ある不動産投資信託(REIT)の運用会社が、テナントの有力スーパーから賃料下げ要求を受け入れた。地方では賃料の上昇は簡単には見込めない。
REITを使ってマネーを地方に呼び込もうとする動きはある。しかし、ある程度の賃料は確保できても、不動産価格自体が下落するリスクが高過ぎる。そうしたことから、投資マネーの東京回帰が鮮明になっている。
田中首相「列島改造」の夢、風前のともしび
商業地価が今と同水準だった1973年、地方はバラ色の夢を抱いていた。田中角栄首相が全国に高速道路、新幹線網を張り巡らせる日本列島改造論を掲げていた。商業地は73年に19.8%、74年に28.7%あがった。
高速道路と新幹線は地方に膨大な土木工事をもたらした。建設会社は潤い、雇用機会が創出された。地方の工場誘致型経済も後押しした。
しかし、中国というライバルの出現で、工場誘致型の自治体運営モデルは揺らいでいる。新幹線など高速交通手段の発達は全国の支店経済化を後押し、地方の地位を押し下げた。
国と地方に巨額の借金が残っているのに、地方の富を現す地価は34年前の水準に逆戻り。田中首相がめざした「国土の均衡ある発展」は風前のともしびだ。
欠けていたのは高速道路、新幹線を有効活用するソフト作りと地方分権への強い意欲だ。それがなかったので高速道路、新幹線は主にヒト、モノ、カネを東京に吸い上げる一方向のパイプとしてしか機能しなかった。
国会は道路特定財源や地方交付税をめぐって紛糾している。それは大切なことではあるが、30余年の反省を踏まえたより幅広い地方再生策の検討が欠かせない。
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