少し遅れたがマクドナルドの残業代不払い問題を記述したい。 私は長らくサラリーマン生活をしたが、残業手当を貰った記憶がほとんどない。30歳ごろから管理職の仕事になったためである。日本はほとんどなんの権限もないのに管理職の部類に編成されると「ただ働きのシステム」の中に入る。マクドナルドは正社員約4500人中、実に4割近い約1700人が店長だ。ただ働きを強いて企業が利益を出す・・品格の低い企業といわねばならない。
日本マクドナルドの直営店の現職店長の事例は、労働者を管理職に仕立てることで残業代を支払わない企業の手口の典型であると思う。月に100時間超の「サービス残業」を強いるような企業は、人権無視もはなはだしい。そもそも人を安く使って、利益ねじり出そうという経営的な発想が貧弱でないか。
経済界は、管理監督者の一歩手前に位置する人たちを労働時間規制の対象外とするホワイトカラー・エグゼンプション制度を求めていた。この法案は成立しなかったが、これが導入されれば店長らは当然のようにその適用者と扱われ、ただ働きを強いられるのだ。なぜ、過労問題そのものである「サービス残業」が大きな政治問題にならないのか。国のシステム・政治家の感覚が、国民より企業保護に熟足を置いているからである。
日本の社会は、企業が空前の繁栄をしているが、預金ゼロの貧しい国民が30%もいるのである。このアンバランスをどうするかが大きな社会問題である。少子化の原因は、預金ゼロの貧しい国民が30%もいることが大きく影響しているのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 社説:不払い残業 「店長だから」は通用しない 実態に見合わない肩書を社員に与えて、会社が残業代を払わなくてもすむような不正がまかり通っているのではないか。 日本マクドナルドに対し店長の残業代不払い分の支払いを命じた東京地裁の判決に、そんな疑心を抱いた会社員も少なくないだろう。社員の肩書を偽装して、ただ働きを強いているような企業は、判決を警告と重く受け止め、職場から不払い残業を一掃しなければならない。 この店長はアルバイトのカバーなどに追われ、月40〜50時間の残業が恒常的だった。最長で残業時間は月137時間にも達し、医師から脳梗塞(こうそく)の可能性を指摘されたこともあるのに、残業代は払われなかった。 労働基準法は労働時間を「1日8時間、週40時間以内」と規制し、それを超える場合は経営者が残業代を支払うと定めるが、「管理監督者」は適用を除外されるとの条文があり、同社は就業規則で店長を管理監督者と規定してきたからだ。 管理監督者とは、経営者と一体的な立場にあり、勤務態様や賃金待遇などが一般の労働者よりも優遇される幹部のことだ。判決は、勤務実態などから店長は管理監督者には当たらないと判断した。同社では正社員約4500人中、実に4割近い約1700人が店長だ(07年9月現在)。これでは残業代を払わなくてもいいように、店長を管理監督者に据えていると疑われてもやむを得まい。 管理監督者は管理職の中のごく一部であるはずなのに、イコールとみなしている企業が少なくないといわれる。厚生労働省が社団法人に委託して05年にまとまった企業調査では、課長クラスの7割以上、課長補佐クラスでも4割以上が管理監督者とされていた。法の趣旨と実態があまりにもかけ離れている。その分、管理職クラスでただ働きがはびこっているわけだ。 1月には紳士服大手のコナカが、管理監督者であるとして残業代を払ってこなかった元店長の訴えを認め、解決金を支払うことを決めたばかりだ。管理監督者の肩書をただ働きの隠れみのにしている企業は直ちに見直すべきだ。厚労省も各企業への徹底した実態調査や指導強化が必要だ。 そもそも労働時間が厳しく規制されるのは、労働者の命にかかわる問題だからだ。非正規雇用が労働者の3人に1人を占めるようになった分、正社員の残業時間が増え、過労死や過労自殺は一向になくならない。
それなのに経済界は、管理監督者の一歩手前に位置する人たちを労働時間規制の対象外とするホワイトカラー・エグゼンプション制度を求めている。これが導入されれば店長らは当然のようにその適用者と扱われ、ただ働きを強いられる労働者はとてつもなく広がるはずだ。判決を機に、経営者らは制度の危険性を認識すべきだ。 毎日新聞 2008年2月3日 東京朝刊
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ホワイトカラーエグゼンプション または、ホワイトカラーイグゼンプション(ホワイトカラー労働時間規制適用免除制度)とはいわゆるホワイトカラー労働者(主に事務に従事する人々を指す職種・労働層)に対する労働時間規制を適用免除すること、またはその制度。
概要 「一律に時間で成果を評価することが適当でない労働者の勤務時間を自由にし、有能な人材の能力や時間を有効活用する」ことを趣旨とする、未導入の制度。 本制度の適用を選んだ労働者はその使用者との間で合意した一定の成果を達成する前提で、勤務時間を自己の責任において自由に決められるようになる。通常の定時勤務にとらわれない反面、勤務時間に基づかないため休日出勤等の時間外労働を行った場合の補償はされない(ただし休日については週休2日相当の日数が確保される)。 なお類似制度に裁量労働制があるが、裁量労働制はあくまでも「みなし労働時間」制であり、労働時間規制を除外するものではない。 2007年9月11日の記者会見で、舛添要一厚生労働大臣がホワイトカラーエグゼンプションの呼称を「家庭だんらん法」という呼称に言い換えるよう指示した。
経 緯 日本においては2005年6月に経団連が提言を行い、以降厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会において「労働時間法制のあり方」の課題のひとつとして導入が検討された。
2006年12月27日、本制度を盛り込んだ法案要綱が初めて審議会に諮問された時点でマスコミ(特に放送メディア)はこれを一般労働者に対して残業代カットを認める法律として「残業代ゼロ法案」と揶揄し報道した。これは当時の厚生労働省発表では適用対象者の範囲が具体的に示されず、基準年収額も「相当程度高い」とするのみで明確でなかったためである。ただし、法案要綱では労使委員会において合意がなければ導入できない旨などが明記され報道にあるような内容ではなかったが、その時点では法案要綱の内容は公表されていなかった。労働者層を支持基盤にする民主党、日本共産党、社会民主党も批判し、実質残業代が減少、皆無になると恐れた全労連、連合、全労協などの労働団体も反対運動をおこした。無報酬の長時間労働を合法化する制度だとして、「過労死促進法案」だとする批判も巻き起こった。
こうした動きを受けて、与党内では2007年4月の統一地方選挙や同年7月の参議院議員通常選挙への影響を懸念し、2007年の国会への提出を先送りするべきとの意見が出るようになった。
2007年1月11日に厚生労働省は対象者の範囲を「年収900万円以上」「企画・立案・研究・調査・分析の5業務に限る」として基準を明確にしたが、与党は結局、同国会での法案可決を断念した。2007年1月に審議会に提出された「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」の中に「自己管理型労働制」という名称で盛り込まれたが、国会には提出されておらず、制度として導入されていない。7月29日に行われた参議院選挙の結果、導入に反対の姿勢を明確にしている野党側が過半数を占めることとなり、与党側も実現のための意欲は見せておらず、近い将来の導入の見込みはない。
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